↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
子爵令嬢は30歳まで独身宣言しました~呪いが解けたら同い年でした~  作者: 川浪 オクタ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/6

第6話「アレクシスよりも?」

「ルイティル嬢、それでは後ほど」


「ありがとうございます、アレクシス様。伯爵家でお待ちしておりますね」


 アレクシスの頬が少し赤くなり、顔を背けた。


「はい……引き継ぎが終わり次第、帰りますので」


 兄ジュリアンと、ウィンターボーン伯爵は二人のやりとりを微笑ましく見ていた。


「私たちは、急いで迎えの準備をするから、ゆっくり向かってきてくれ」


 伯爵が言った。


「そんな、お待たせするわけには参りません」


 伯爵はジュリアンのタイが乱れているのに気づき、直そうと近づいた。


「まだ私たちの関係は、『隣の領主同士』にみられた方が良い」


 厳しい目つきと口調に気づき、ジュリアンは背を正した。


「あっ……ありがとうございます」


「そうだ、君たちは平民のお祭りには興味があるかな?」


「お祭り……ですか?」


「そう。川沿いを進んでおいで。まだ準備中だが彼女なら喜ぶと思う」


 ジュリアンは伯爵の提案に少し勘繰ったが、「分かりました。そのようにさせていただきます」と伝えた。


 ◇ ◇ ◇


「アレクシス様、大丈夫でしょうか……」


 ルイティルは落ち着かない様子で、馬車に揺られていた。


「何が?」


「登城なさった時とは、お姿が変わっていらっしゃいましたでしょう?」


「……ああ、上司が事情を知っているみたいだから、そこは大丈夫だと思うよ」


「そうですか……」

 少しほっとしたのか、外の景色を見ると、川のそばで人が集まっていた。


「あれは何をしているのでしょうか」


 目をキラキラさせて、外の景色を食い入るように見ている。

 ジュリアンは、伯爵から聞いたお祭りの事を話した。



「もしかして『星跡祭』でしょうか」


「『星跡祭』?」


「ええ、『翠玉(ズメルード)の詩集』に『星降る夜の調べ』という詩があるのですが、おそらくその詩を元にしたお祭りだと聞いています」


「確か、ルイティルの好きな本の……」


「はい。川の流れに沿って、星の飾りが施されているんですが、詩の中でも同じお祭りが描かれていて」


「なるほど」


「月の光と、その光を映した川の水面――両方を浴びた飾りを一年間大事に持ち歩くと、願いが叶うというものです」


 年相応のうっとりと話す妹の表情を見て、ジュリアンは確認したいことがあった。


「ルイティル。一度冷静になった方がいい。

 王宮の図書室や、アレクシス様のご様子を見て興奮状態になっているんだよ」


「お兄様。わたくしは冷静ですわ。

 わたくしは何もかも受け入れる覚悟でいますもの。

 お兄様は何を心配されていらっしゃるの?」


「……呪いの事だよ。

 確か呪いは遥か昔、『魔法』というものが存在していた時代に最後まで残っていたもの。

 それが『呪い』だったはずだ」


「まぁ、お兄様。ご存知でしたか」


 "知と情報のベルモント"と呼ばれるこの家では、代々の当主が蔵書や社交界を通じて、こうした古い知識にも触れてきていた。今更驚くことではなかった。


「……だから、わざわざ昔のものに頼ってまで、彼をどうにかしたい人がいるって事だろう?

 何かあるんじゃないか?後ろめたい事とか」


「分かっております。ですが、アレクシス様がそれで苦しんでいるのなら助けたいと思うのです……」


 兄のジュリアンは大きくため息をついた。

 そして、馬車の外を眺めながら、静かに口を開いた。


「私も、見てしまったからな。アレクシス様の姿を。

 彼も悪い方じゃない。ルイティルの話によくついてきてくれるって思っているよ」


 さらに息を大きく吐き、ルイティルを真っ直ぐに見た。


「だから、お前が後悔しなきゃ、それで良い」


「お兄様……」


 (本当に心配してくださっているのですね……)


 いつもの領主としての口調ではない、久しぶりの素の言葉に、ルイティルは思わず目を細めた。


 ◇ ◇ ◇


 ウィンターボーン家に着くと、使用人の出迎えがあったが、なぜかその表情はどこか強張っており、ルイティルは小さく眉をひそめた。


「早く着きすぎたでしょうか?」

「ルイティル。こちらも急な事だったから、日を改めた方が良いのではないかな?」


 ジュリアンの言葉に、使用人は軽く咳をし、「いいえ、お待ちしておりました」と答えた。


「ベルモント家の方がお見えになったら、必ず、お通しするようにと言われております」


 玄関が開き、ジュリアンとルイティルが足を踏み入れると、目の前に、ここにいるはずのない人物が立っていた。


 二人は、息が止まり、思わず互いの顔を見合わせた。

 すぐさま、頭を下げ、ジュリアンは声を絞り出すように言った。


「ジュリアン・ベルモント、ルイティル・ベルモントが国王陛下にご挨拶申し上げます」


 なんで……国王陛下が伯爵家にいらっしゃるの?


 デビュタントの時に一度だけお会いしたことがあるが、深い赤紫色の瞳は王家だけの色だから間違えるはずがない。


 でも、一瞬見えた服装は、冒険者のような姿だったような……。


「ジュリアン君。ルイティル嬢。紹介しよう。

 彼はオーディス。私の親友で、旅から帰ってきたところなんだ」


「は……?」


 ウィンターボーン伯爵はそう言って、にやっとした笑みを浮かべた。


 ◇ ◇ ◇


 二人は応接間に通され、国王に似た冒険者と向かい合って座った。


「俺も同席しても良いと言われているんだが、よかったかな」


「いえ、こちらこそ……」

 ジュリアンはまだ混乱しているようで、ソワソワしてしまっていた。


「旅に行っていたんだけど、手紙でアレクシスの話があると知って、急いで帰ってきたんだよ。

 書き方が脅迫めいていてね。見るかい?」


「脅迫めいただなんて、心外ですな」


 冒険者とウィンターボーン伯爵は、仲が良いのだろうか。

 とても楽しそうで、ルイティルもつられて微笑んでしまった。


「君がルイティル嬢だね。 噂は聞いているよ」


「あ、失礼致しました。えっと……」


 国王の名はアルディス・テア・アルテミス。でも、今は名を偽っているのだと悟った。


「オーディス様。お会いできてとても嬉しく思います」


 ジュリアンが驚いた表情でルイティルを見た。

 『え……。これ、私も合わせないといけないの……?』みたいな表情をしているのが面白い。


「それで、旅とはどちらに行かれたのですか?」


「ヴィルティア国の方だね。あそこは、大きいギルドもあるし自然も豊かだし、料理も美味しいし。とても良かったよ」


「ヴィルティア国ですか!?なんと羨ましい!!」

 淑女の顔も忘れ、思わず声を上げてしまった。


 オーディスは、くくくと笑い、満足げな顔でルイティルを見た。

「興味あるかい?」


「もちろん!」


「アレクシスよりも?」


 オーディスの瞳から光が消え、威圧を放つような雰囲気を纏ったように感じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。