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プロローグ

 俺は尾棘(おとげ) 弥瑠夫(やるお)、何処にでも居る普通の高校2年生だ。

「やる夫、おはよう」

 ぶっきらぼうに背後から声をかけてきたのは、家族ぐるみの付き合いで、俺の中学からの親友の弐寺(にでら) 達人(たつひと)だ。

「相変わらず朝はテンション低いな、達人(たつじん)

「お互い様だろ? それよりお前もう復刻回した?昨日引いたら単発で推し出たんだけどw」

 前言撤回だ。このサイコパスソシャゲ民め、俺は80連爆死したんだぞ、と言いたいところだったが、虚しさが募るだけなので黙ったままでいた。だが、達人は話すのをやめない。

 「ところでお前、最近あいつとはどうなのかよ」

牽制の意味を込めて、俺は達人の彼女の話をふった。こいつは俺と同類の陰キャラのくせに、めちゃくちゃかわいい彼女がいる。というのも、達人は顔がいいのだ。

「あいつって…彼女のことか?」

不意に背後から高音域の声が聞こえた。

「なになに? またソシャゲの話?」

長い髪をポニーテールにした、いかにもウェイ側の人間の彼女の名前は舞浜(まいはま) (まい)、どういう訳かこのオタクとは縁遠そうな彼女と俺は、一緒に風呂に入ったことのあるくらい昔からの幼馴染なのだ。

 最近は達人と話していると専らマイが近寄って来ては二人で恋バナ()をし始めるので、俺はやれやれ、とソシャゲのイベントを走るのだった。

 とりあえず体力が尽きるまでイベントを走るか、と自分の席についてスマートフォンと向き合う。俺は達人と違って人差し指勢だから、スマートフォンを据え置く形でないとプレイできない。

専用のイヤフォンを差し込み、画面に指を滑らせる。おっ、とりあえず上位報酬圏内は維持できてるみたいだ。無課金勢の俺は、アイテムを推しイベまで溜め込む形でなんとかイベントを走っている。無課金でどれだけ楽しめるかがスマホアプリの楽しみ方だと思っているが、アイテムが枯渇すれば課金も止むを得ないかもしれない、と最近は考えたりもする。

「今朝のノルマはクリア、と」

「うわスコアきっも…。よく人差し指でできるよな」

「お前はよく親指でできるよな」

プレイスタイルでは相容れることはないだろうな、となんとなく考えた。

そうして今日も、いつも通りイベントを走り、いつも通り授業を受け、友人と他愛のない話をして、いつも通りの日常を過ごすはずだった。


『皆さんおはようございます。音デスの時間です』


───あの悪魔の放送が流れるまでは。

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