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ポピュラリティゲーム  ~神々と人~  作者: 薔薇ハウス
十一章 明かされて行く謎
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生まれる疑惑

 こんな事をして何になるのか。最近、僕はとみにそう思う。

 最近――そう、ヒジリ君に、真実を告げて謝った時から、なぜ、僕はこんな事をしているのかと、不意に考えるようになった。

 答えは出ないが理由は分かる。もっと力が欲しいからだ。

 でも、力を得て一体何をしたいのか。

 昔はそれが分かって居たのに、今の僕には分からなくなっていた。


「こんな事をして何になるのか。か」


 二度目のそれは口に出し、彼が居る星を意識する。気晴らし? いや、多分違う。

 彼――ヒジリ君の現状が、僕は単純に気になったのだ。他にもマジェスティを抱えているが、彼を見ているのが一番楽しい。

 触れ合った時間も期間の割には、相当に長い方だと思う。

 別段、飛びぬけている訳では無いし、奇抜な行動も滅多に取らない。

 強さや突飛な行動を見たいなら、他にいくらでもマジェスティは居るのだが。

 ……何て言うのかな。

 性格が真っ直ぐだからだろうか、見て居てとても分かり易いし、僕にはそれが気持ち良い。

 失くした何かを思い出せそうな、思い出させてくれそうな気がしているのも、彼に拘泥こうでいする理由の一つだ。


 今回もまた、何かを期待して、目の前の空間に映像を呼び出す。

 それから一体何をしているのかと、興味本位で様子を伺った。

 周囲は闇。宇宙では無いが、視覚で例えるなら一番近い。そんな中で浮かび上がった映像に、食い入るように僕は見入る。

 何かの話し合い? いや、報告を聞いているのかな? 金髪の男に顔を向けて、黙って話を聞いているみたいだ。

 聞いてみようかな。と、意識をすると、映像に声が加わって来た。話しているのは金髪の男で、先日の海戦に関わる事らしい。

 ヒジリ君達の国、ヘール諸島は、先日の海戦に大勝利した。

 鮮烈の青と呼ばれているレナスの不在も大きかったけど、嵐を利用して艦隊を再編した海王ダナヒも素晴らしかった。

 ヨゼル王国の旗艦は反撃で沈み、それをきっかけに彼らは撤退。

 その様子を目にしたヘール諸島軍は、戦場から素早く撤収したのだ。

 だから多分、ヘール諸島側に大した損害は無いと思う。妖精が興味を持たなかったから、正確な所は分からないけどね。


「被害は十隻。死亡者は約千五百人です。行方不明も含まれていますので、これ以上増えると言う事はありませんが、せめて嵐で無かったならば、と、あの時の天候が悔やまれる所です」


 金髪の男――デオスと言ったかな? 彼の言う所ではそういう事らしい。

 十隻、約千五百人。数値以上の何物も伝わって来ない。

 だけどヒジリ君達はそれに驚き、それなりに悲しんでいるようだった。

 星は消える。割と頻繁に。そして、星が消えてしまえば、それとは比べものにならない数の命が、当たり前のように消えてしまう。

 僕はそんな事に慣れてしまって、感覚がマヒしているのかもしれない。

 それが正しいのか、間違っているのかは兎も角、そんな事を考えさせてくれるからこそ、僕はヒジリ君が気になっているのだろう。


「それと、例の男ですが、ようやく意識が戻りました。話をする事も可能になったので、許可を頂けるなら呼びたいのですが」

「例の男? あー、海で拾った半魔だっけか。ってかまだ生きてたんだな。

 構わねーぜ。聞きてー事もあるしな」


 デオスと言う男が言って、海王ダナヒがそれに答える。

 おそらく、ヒジリ君は知らないだろうけど、僕は見て居てその事を知っていた。

 確か、嵐が収まった頃に、海を漂っていた所を拾われた男だったか。

 思い出していると、デオスと言う男が似たような事をヒジリ君に話し、その事によって確信を得た僕は誰にともなく「だよね」と呟いた。


「お楽しみの所申し訳ありませんが」


 直後の声は背後からで、僕はとりあえず映像を消す。

 見られてもまぁ、構わないんだが、僕以外の者にヒジリ君のプライベートを見せるのは少し嫌だった。


「なんだい?」


 そう言って振り向き、イサーベールを見る。彼女以外はまず来ないので、声が聞こえた時点で知っていた。

 彼女とも長い付き合いになるけど、世間話をしに来た事は無い。

 それはつまり、今回も、用事があるから来たと言う事を意味するが、それが何なのかを考える事も無く、僕は彼女の答えを待った。

 有るべき事が有りすぎて、考える事が面倒だったから。


「皆様が緊急の総会を希望です。既に御三方が到着済みですので、お早いお越しをお待ちしています」


 それだけ言って彼女は消えた。僕と、既に到着済みと言う、三神以外に伝える為だろう。

 いや、もしかしたらすでに報告済みで、あちらで僕を待っているのかもしれない。


「緊急の総会か。今度は何かな。第四フェーズには少し早いけど」


 日数的には千日はある。そして、その後の最終フェーズまでは、三千と三百と三十三日と最初から決定しているはずだ。

 もう一つのルールを適用するにも、大陸の現状ではそれも無理だし、一体何の理由で呼ばれたか、僕にはさっぱり予測が出来ない。

 だが、また最後になれば、色々と皮肉を言われてしまう。

 たまには待たせず、待つ方になり、遅れた奴に皮肉の一つも言って見るのも良いかもしれない。

 そう思った僕は空間を閉鎖して、彼らが待つ場に意識を向ける。そして、次の瞬間には、僕はその場に移動をしていた。


 青い空間に仕切りがある部屋。総会を行ういつもの場所だ。

 腰を下ろして正面を見る。と言っても、長い仕切りがあるので、左右の隙間からしか外は見えず、若干、暇を持て余した僕は、深く座って両目を瞑った。

 気配を探って人数を知る。察するに、四人が来ているらしい。

 つまり、僕は五番目に来た訳で、最後から言うなら二番目と言う事。

 いつもより早目に出た結果が、まさかのギリギリだったと言う訳だ。

 もしももう少しヒジリ君を見て居たら。僕はきっと最後になって、先に来ていた五人から「またお前か……」と思われていたのだろう。

 だからと言って何も無いが、そろそろ印象も決まって来る頃で、一度決まった印象はそう簡単には変わらない。

 おそらくそうだね。僕は多分、「ルーズマン」等と言うあだ名を付けられ、その呼び名が風化して忘れ去られる時まで、陰ではその名で呼ばれ続けるんだ。

 そんな大げさな、と思うかもしれないが、僕の知り合いにこんな奴が居る。

 より優れた人間……と言うか、生物を創ろうとして躍起になった余り、「自分の遺伝子を入れれば良いんじゃね!?」と、自らの創作物と交わった奴が。

 相手は確かヤギのような生き物だったんだけど、それを知った皆はこう呼ぶようになった。


 ヤギとした者。「ゴートファッカー」と。


 以降の呼び名は数千年は固定。本人が今度は鮫みたいな物とした事で、「シャークファッカー」と呼び名を変えたが、兎に角、娯楽が少ないせいか、僕達の世界ではそういう呼び名が、本当にすぐに流行ってしまうのだ。

 まぁ、正直、ルーズマン程度なら、そんなに気にする事では無いけど、呼び名の候補は千差万別で、何と呼ばれるか分かったモノじゃない。

 今後は少し態度を改めて、出来るだけ早く来る事にしよう。

 そう思って黙って待っていると、最後の一人がようやく現れ、それから数秒遅れた後に、イサーベールの気配を感じた。


「それでは緊急の総会を開始します」


 そして声がする。いつものように、空間の中心に立っているらしい。

 緊急の総会なんて初めての事だが、一体何があったのだろうか。

 膝の上で手を組んだまま、体を起こして続きを待った。


「一言で申しますと、調査申請を頂きました。

 マジェスティの数が合って居ないと言う事でです。

 その為、大変申し訳が無いのですが、それぞれのマジェスティのお名前と、現在の居場所を公表して頂きたく、皆様に集まって頂いた次第です」


 単刀直入。まさにそれだ。余計な事を言わない点は、流石はイサーベールだと評価ができる。

 聞いた者達の反応は様々で、不平を声に出している者も居たが、過半数は静かに驚き、声には何も出しては居なかった。

 僕? は、別に何も思わない。ルール違反はしていないのだから。

 だけどもし誰かがしていたら。そう思うと困るだろう自分に気付く。

 ヒジリ君をどうする。そう思うが故に。


「一つ良いかな」


 誰かが言った。男の声だが、正確な正体を僕は知らない。

 でも、過去の発言を顧みるなら、ヒジリ君の同僚、カレルと言うマジェスティの神である確率が高いと思う。


「どうぞ」

「うむ」


 イサーベールに許可を貰い、男が手短に発言をする。


「私はマジェスティを隠して来た口だ。それは他のマジェスティや、それに関わる者達からの襲撃を恐れたからに他ならない。

 生憎、私は他の神程に余分なマジェスティを抱えて居ない。故に、安全面から考えて、名前や居場所を出す事には、断固、反対をさせて貰う。

 ……どうしてもと言うなら私は下りる。マジェスティは勿論回収するがな。以上だ」


 立っていたのか、座っていたのか、それすら分からず男は黙る。

 場は沈黙。誰も喋らない。男が口にした「下りる」と言う言葉に、必要以上に動揺しているんだろう。

 黙認されると少々困る。ここは一つ水を差して見るか。


「良いかな?」


 そんな気持ちで許可を貰い、貰った後に言って見た。

 それはつまり、もう少し、調査をしてからでも良いんじゃないかと言うもの。

 それこそ管理者であるイサーベールの特権で、誰のマジェスティが誰かと言う事を調査して貰っても構わない。

 それでも計算が合わないようなら、その時に初めて公表しよう。

 公表しても尚疑問が残れば、その時に皆で決断すれば良い。

 兎に角早まらず、管理者としてのイサーベールに調べて貰おう。

 そんな事をゆっくり言うと。


「賛成ね。この星には切り札を投入してるの。そう簡単に下りて貰っては困るわ」


 どこからか女の声が聞こえる。この声はポリュネー、鮮烈の青と呼ばれる、レナスの担当の神の声だ。

 思っても居ない援護だったけど、助かりはするので「って事だけど」と続ける。


「わたしも賛成です」


 するとまた女の声が。これは確かメルシエルと言ったか。「少女神」と言う二つ名の方が有名な、今回、初めて接する神だった。

 声を聴くのも初めての事だけど……向こうにもきっと色々あるのだろう。


「ならば私も賛同して置く。これで過半数だ。文句は無かろう。

 イサーベール。しっかり頼むぞ」


 以前の総会で僕に絡んだミセアと言う女がそう言って消える。

 この事により、僕の提案が過半数の支持を得た事になり、とりあえずの判断はイサーベールが調査を進めた後となった。

 でも、もし、誰かが違反していて、結果としてこの星を消す事になったら。

 ヒジリ君には何と話せば、「わかりました」と納得して貰えるのだろう。

 その時にはそうだ。他の星じゃ無くて、元の世界に帰して上げても良いかもしれない。

 それならルールから外れて居ないし、ヒジリ君もきっと喜んでくれるはずだ。


「じゃあイサーベール。よろしく頼んだよ」


 そう思った僕は椅子から立ち上がり、イサーベールに頼んでから姿を消した。

 ――きっとヒジリ君は喜んでくれる。迷いもせずにそう考えて。


もう一人、老人の神が居ましたが、彼は今回は喋りませんでした。

最初はゼーヤで、次はケント、今は……の担当の神ですね。

それではまた月曜に。皆様、良い週末を。

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