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準優勝の名残

前話を投稿した日の内に、凄まじい数でブクマが減りました(苦笑)

何か悪い事したのでしょうか…と、不安になる位の勢いでしたが、この話に到達してくれている方々は、それを乗り越えてくれたという事なのでしょう。

正直、かなり凹みましたが、今更内容を変える訳にもいきません。

出来れば最後までついて来て下さると、張り合いもあり、嬉しい限りです。

何はともあれ、残って居て下さる方々には、ありがとうございます。

と言いたい気持ちです。

 正直な所は良く分からない。Pさんに対する自分の感情だ。

 酷いとは思うが憎めはしないのは、基本的に俺がお人好しだからか。

 しかし、以前ほど盲目的に信じられなくなったのは確かな事だった。


「ふぅ……」


 ベッドの上で両目を開き、額に腕を当てて息を吐き出す。

 そうする理由は悩んでいるから。Pさんとのこの後の付き合い方に。

 いっそ対等な友人ならば、俺はパンチの一発も入れていた。

 或いはダナヒのように垣根が無ければ、ぶん殴って終わりにしていただろう。

 それで解決。恨みっこ無し。その後は以前と同様に付き合うのだが……

 やはりはPさんの立ち位置が難しく、だからと言って嫌いにもなれず、付き合い方に悩んで憂鬱になるのだ。


「おっ? 起きたね? コレコレコレー。

 なんかヒジリに伝えろって言うが来たから、起きる前に書いておいた!」


 ため息に気付いたユートが言って、何かを下げてこちらに飛んで来る。

 未明の為に部屋は薄暗く、考えている為に構いたくは無い。

 朝になってからでも良いじゃないかと思ったが。


「コレコレコレー! ヒージーリー! オーキーテー!」


 と、ユートは耳元で「コレコレコレー」とうるさい。

 やむを得ないので体を起こし、「何だよ……」とボヤきつつそれを受け取る。

 書かれていた物はPさんが言っていた、俺に対するお願いのようなもの。


「ええ……と……アンティミノスのしもべは一体じゃない!?」


 出だしからして俺は驚き、時間に構わず大声で叫んだ。


「ちょっとヒジリ! キンジョメーワクでしょ!」


 口調としては母親である。実際、飲んで帰って来た親父が過去に言われていた事がある。

 それには「ああ……」と、短く答え、視線を再び紙へと戻す。

 それからは小声で口に出しつつ、続きの文字を読んで行った。


「アンティミノスのしもべは一体じゃない。あの時点で三体が確認されている。

 おそらく割と近い所に居るから、ヒジリ君にはこれを倒して欲しい。

 勿論、これは強制では無いし、やる、やらないは君の自由だ。

 でも、放置しておくと大変な事になると言うのは、コルトラスを倒した君には分かるだろう。

 この星の為。それもそうだけど、何より得られる評価ポイントが、倒さずに居るより段違いだからね。

 基本的には弱点は水だ。だけど、姿形はそれぞれ違うから、固定概念に囚われずにおかしいと思う奴を当たると良いよ。その内必ず、行動を起こすだろうから」


 そこまではおそらくPさんのお願いで。


「あと相棒妖精のユートちゃんには、一日一食はハルルを食べさせて。

 欲しいと言った漫画はすぐに、その度に必ず買ってあげて下さい」


 ここの部分はユートの書き足し。

「いい加減にしろよ……」と俺が言うと、顔を逸らして口笛を吹くのだ。

 否定はしないが肯定もしない、実にずる賢い逃げ方である。

 昔はこうじゃなかったのだが、段々と知恵を付けて来ているようだ。


「にしても三体……じゃない、後二体か……あんなのがまだ二体も居るなんてな」


 しもべ、と言うからにはまだ居るのかもしれない。

 Pさんも「あの時点」と伝えて来ているし、予測が当たっている可能性は高い。

 だが、現時点では二体のはずなので、朝になったらダナヒに伝えて協力を仰いでみる事にした。

 勿論、Pさんに頼まれたなんて事は言わず、「まだ居るらしい」と言う事にして。

 いよいよになったら理由は言うが、まぁ、一応の念の為である。


 そして朝になり、朝食が終わり、その席で俺は協力を仰ぐ。


「マジかよ……まーた潰されるのはゴメンだぜ……せめて今度はキンタ〇にしてもらいてー所だが……」


 それなら良いのか。と、まずは思う。一応それも二つあるが、それだって潰れたら困るだろうに。

 その後に女性の前だと気付き、カレルのダナヒへの冷たい視線を目にする。

 それに気付いたダナヒは苦笑し、「わるぃ。睾丸って言うべきだったな」と、なぜかの言い直しをして更に軽蔑されていた。

 問題はそこじゃない。そこじゃないんだよダナヒさん……


「大体の位置は分からないんですか? 近く、と言っても殆どが無人島ですからね。

 探し出すのは少しばかり……」


 思っているとデオスに聞かれる。

 それが分からなければ進展は約束できない。そう言った口調のものであったが、これには「生憎……」と答えるしか無い。

 割と近い所に居る。と言うのが、Pさんからの伝言だったからだ。

 聞いたデオスは「そうですか……」と言って、口に手を当てて黙り込み、「何怒ってんだ?」と聞くダナヒとカレル間にも、気まずい空気が漂っていた。


「あの……スミマセン。ヒジリ様に配達物が」


 そんな時に、食堂のドアが開き、メイドの若い子が顔を出して来る。

 呼ばれたのは俺らしいが、心当たりは無い。

 もしかしてナエミか、とは、思う物の、何が送られて来たのかはサッパリだった。


「ダ・チン祭の賞品だとか……もの凄い量の配達物ですが……」

「ああ!」


 その言葉で分かる。ムメである。

 所謂、コメに近い準優勝の賞品が、村からようやく送られて来たのだ。

 確か一年分とか言っていたか。それはもの凄い量にもなるだろう。


「ちょっと外します」

「あ、ああ」


 気付いた俺は立ち上がり、ダナヒ言ってからメイドに続く。


「ダ・チン祭ってあの、世界一下品な祭りとして有名な?」


 と、その際にメイドに質問されたが、「え、ええ……」とだけ答えて苦笑しておいた。

 コレをね、こんな風に括り付けてね、反動でシキュウをばしっと殴るんだ。

 なんて、話したとしたらセクハラに近い。

 最悪は叫ばれる可能性もあるので、俺は遠慮をした訳なのである。


「そうですか……それで準優勝……」


 果たしてそれをどう受け取ったのか、メイドはそれきり黙ってしまう。

 そして、ユートを含めた三人で、玄関の外に並ぶ箱の山を見るのだ。


「ウワアアアアアア……」


 まさに絶句。言葉が出ない。ユートも隣で「アヘェェ……」と言っている。

 米俵的なものを想像していただけに、山積みの箱にはまず動揺がある。

 そしてその数、五十はあるだろうか。ひと箱に十キロ入っているとしても、五百キロ以上の計算だった。

 勿論、それは軽く見ての物で、実際にはそれ以上入っているかもしれず、運んで来て、道端に座り込んでいる運搬人達には、素直に頭が下がる思いだ。


「カタギリ・ヒジリさん? ダ・チン祭で準優勝した?」

「あ、ああ。はい。お疲れ様です」


 一人が言って立ち上がる。三十才位の小麦色の肌の人だ。 

 他と同じく半袖のつなぎのような服を着ている。


「チン〇を縄で括り付けて、シキュウをブッ叩いて準優勝したヒジリさん?」

「あ、ええ、まぁ……」


 やめて。それ以上突っ込んで聞かないで。

 メイドの子が青ざめてるでしょ。

 そうは言えず、ただただ頷き、「なるほど」と納得した男の手を見る。

 そこにはおそらく受領書と思われる長方形の紙があり、男の名前を記した上で、俺にそれを手渡してきた。

 それによると、ムメの量は、正味でやはり五百キロ。

 一年で俺どんだけ食うの? 横綱なの? と、疑問するのだ。


「じゃあそこにサインを。ああ、そうですそこ。はいどうも」


 それでも一応名前をサインし、それを渡すと男が振り返る。

 そして、仲間か部下達に「帰るぞ!」と言って去って行った。


「あれ???」


 直後の声はユートのものだが、心の中では俺も言って居た。

 このムメ。誰がどこに運ぶの???

 という、重大事が目の前に残っていたからだ。

 普通はほら、配達した人達が、指定した場所まで運んでくれないか?

 そう思っている俺達の前で、彼らの背中は遠ざかって行くのだ。


「いやぁ、参りましたね……」

「ひっ……?!」


 苦笑いで言うと、メイドの若い子は後ずさりをしてから奥へと逃亡。

「シキュウを叩かれるゥゥ!」と、喚き散らしつつ、下腹部を押さえて姿を消した。

 後に話して、誤解は解けたが、その為にダ・チン祭の詳細が知れ渡り、却って変態扱いされて肩身が狭くなる俺であった。


それはそれで興奮するヒジリ

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