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ポピュラリティゲーム  ~神々と人~  作者: 薔薇ハウス
九章 破滅の王の遠い影
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不吉な予言

 あの後もう一度戦ったが、それの結果は引き分けに終わった。

 理由は俺がアレを使ったからだ。アレ――即ち行動の高速化。

 習得したばかりのそれを使い、数秒後に脱力して倒れたのである。

 体感的には四倍から五倍。それ位の速さで動けたのだが、失う体力が全く比例せず、立って居られずに倒れてしまった。

 繰り返し使って無理矢理慣れるか、もしくはそれ相応の体力をつける。

 そのどちらかが必要だと思い、俺は翌日にはダナヒの島を離れて、自分の島へとやって来ていた。


 言うまでも無く修行が目的で、建設の進捗を見る為では無い。

 故に、浜辺からそちらには向かわず、ユートと共に森へと侵入。

 小川を左手にしばらく歩いて、拓けた場所を見つけて止まる。

 そして、そこで準備を整えて、ユートに「頼む」とナイフを渡す。


 目の前にあるのは五本の丸太。

 一列に並べて吊るした上で、勢いがつくようにして括り付けている。

 ユートにはそれの繋ぎ目を切って貰い、ギリギリでかわして上に乗る事が今回の修行の内容だった。


 ヒントになったのはレナスとの戦いで、丸太は言うなら俺の槍だ。

 そこに飛び乗って「どうする?」とか言えば、あの日の俺の完成である。

 ……考えるとなんだか自虐的で、少し涙が出そうになって来る。

 だが、ユートが「行くよー!」と声をかけてきたので、気を取り直して「ああ!」と答えた。


「一発目ハッシャー!」


 ユートがナイフで縄を切り、直後に大きな丸太が迫る。直撃を受ければ吹っ飛ぶ威力だが、軌道が分かれば当たりはしない。

 当然のようにそれを避けたが、避けるのが早すぎるとすぐに気付いた。

 戻る時間。通り過ぎる丸太。普段の動きなら当たっていたが、高速化した故にかなり前に避けられた。

 だが、ギリギリじゃないと意味が無いので、俺は直後に顔を顰める。


「くっ……」


 そう思っていると脱力感に襲われた。ダナヒとの戦いでも感じたそれだ。

 立って居られずに右足を曲げ、すぐにも地面に左手を着く。

 使用したのは一秒にも満たないが、たったそれだけでこのザマである。

 例えるなら水泳で百m程を泳いだ後のような感覚だろうか。

 流石に鼻は痛くないが、なんだか少し吐きそうな気分だ。


 高速化は確かに大きな力だが、コストパフォーマンスが悪すぎる気がする。

 だが、レナスはそんな力をこともなげに使用していた。という事はやはり慣れや経験が結果としては物を言うのだろう。


「大丈夫……! 次を頼む!」


 そう思う事で自分を励まし、力を入れて立ち上がる。

 そして、揺れ動く先の丸太に気を付けて、少し隣の直線に位置取った。


「二発目ハッシャー!」


 二本目が切られて丸太が迫る。今後は先よりもギリギリを狙う。


「いって……えええっ!!」


 だが、今度は少し遅く、左の肩に丸太をぶつけた。

 すぐにも避けたのだが酷い痛みだ。転げるようにして前のめりに倒れる。


「やっぱ無茶だよー。

 スカートめくりとかの方にしようよー。

 そっちの方が安全だし、ヒジリもやる気が出るんじゃないの?」

「いや、出るけどやっちゃ駄目だろ……

 それにどうなんだ? スカートめくりに成功して、してやったり感で息切れする男って」


 ハッキリ言って格好が悪すぎる。

 例えばアングルで魅せたとしても、やっている事自体はカスだと言える。

 疾風のように通り過ぎ、数人の女性のスカートを翻す。

 そして、彼女達の背後に現れ、片膝を着いて「フッ」と笑うのだ。

 その際に両手をクロスさせて居れば、格好良さは増すかもしれないが……


「――うん。クズだね」


 やはりはユートでもそう思うのだろう、当然の答えが返されて来る。


「だろ? って訳で三本目……! ほら、早く、戻った戻った」

「へいへーい……」


 肩を押さえて立ち上がり、顎を動かして戻るように指示する。

 それを見たユートは面倒臭そうに言って、フラフラと丸太に飛んで行った。

 物音がしたのはその直後の事。場所は左手の林の中だ。

 小川と獣道がある方向なので、俺は最初は獣かと思う。


「あ、あなたは……」


 だが、現れたのは一人の老人。いつか、ナエミと共に見た小川の向こうに居た老人だ。

 あちらの方でも驚いているらしく、すぐには言葉を発さなかったが、修行の道具――

 丸太を目にして、老人は「ふむ……」と小さく言ったのだ。

 一応修行で、遊んで居る訳では無いのだが、考えさせられる光景ではある。

 見ようによっては林の中のちょっとしたアトラクションに見えなくもない。

「良い歳して一人ではしゃいじゃって……」なんて、思われたとしたらかなり恥ずかしい。

 故に、説明をしようとすると、老人はその前に言葉を発した。


「何事かと思って来て見たのだが、さしたる事では無かったようだ。

 ……邪魔をしてしまったな」


 それから言って、戻ろうとしたので、引き止める為に「あっ」と言う。

 引き止める理由は……特に無いが、考えたら存在が気になって来た。

 小川の向こうには来るなと言っていたが、あちらに家があるのだろうか。

 そして、そこに住んで居るとして、一体何をしている人なのか。

 引き止めて置いてから急速にそう思い、とりあえずの形で「あの」と言って見る。

 すると、老人は空を見上げて、


「災いが近付いておる。この島も危ういやもしれん。

 ここで会ったのも何かの縁。南西の島を調べて見ると良い」


 と言い残し、林の中へと消えてしまうのだ。

 俺はと言うと右手を伸ばし、「あの」の、「の」の口で固まったまま。


「徘徊系のボケ老人ですか?」


 ユート言って、飛んで来たので、「違うだろ……」とようやく言えるのである。

 結局の所、意味は不明だが、何だか気になる言葉だった為に、俺はその事を覚えて置いて、丸太での修業を続行させる。

 三本目でかなりの感覚を掴み、四本目でギリギリの間合いを見切る。

 それから少し休憩した後に、最後の丸太で勝負をかけた。

 確証は無いが「行ける!」と言う謎の自信に溢れていたのだが。


「五発目ハッシャー!!」


 ユートが縄を切った直後に、背後に誰かが現れたのだ。

 

「あ、居た居た!」

「ヒジリさんこんにちは!」


 それはギースとニースの二人で、状況に気付かず近寄って来る。

 俺を挟んだ正面には丸太が迫って来ているのだが、俺の体で死角になったのか、二人は全く気付いていなかった。


「き、来ちゃだめだぁああ!!」


 結果として俺は高速化を使い、ギースとニースの二人を突き飛ばし……


「がああふうん!?」


 後頭部に丸太をモロに喰らって、顔面から地面にうつ伏すのである。

 地面に描かれる一本の赤線。色の元は勿論鼻血だ。


「ひ、ヒジリぃぃぃ!?」

「ヒジリさぁアアアン!?」


 三人が駆け寄り、俺を抱き起す。

 その時には俺は気を失っていたのだが、後で聞いた話では、イッちゃった顔をして笑っていたらしかった。

 ギースとニースが無事で良かった。

 多分、俺はそう思っていたのだろう……




 その日はギース達の家に泊まり、翌日の昼頃にダナヒの島に戻った。

 そして、老人に言われた事――災いが迫っているから南西の島を調べろ――と言う物だが、それをそのままダナヒに伝えた。


「何だソイツは? ボケ老人か?」


 直後の返答はユートと同じ。

 聞いたユートが「ほらね?」と言って来る。

 だが、俺としてはそうとは思えなかったので、更に押して調査を頼んだ。


「まぁ、調べて置いて損は無いでしょう。何かがあってからでは困りますから」


 流石の判断はデオスであった。彼が居る限りはこの国は安泰だ。

 心の中で拍手を送り、感謝の眼差しでデオスを見つめる。


「へいへい。なんもねーと思うけどなー」


 気持ち的には反対なのだが、デオスが言うなら仕方ない。

 そんな態度で椅子の背にもたれて、面倒臭そうにダナヒはそう言った。

 思えばダナヒがデオスの言葉に逆らった所を見た事が無い。

 弱みを握られている……なんて事は無いだろうから、或いは俺以上に信頼しているのだろう。

 そこはちょっと悔しいと言うか、妬ける部分が少しあるが、付き合いの長さを考えるなら、当然と考えてクールを装った。

 

 結果が出たのは翌日の夕方。

 南西の島の一つの中に、隕石らしき物があるという報告が届く。

 報告書には絵も付いていたのだが、一言で言うならまぁ、割と雑。

 海の男達が描いた物なので、そこは仕方が無いのであろうが、卵なんだか隕石なんだか、パッと見ではとても分からないものだった。


 ただ、その絵を見る限りでは、斜めでは無く垂直に立っており、比較の為に描かれた人間よりも、若干大きなように見えた。

 色は黒なのか、塗り潰されている。報告書によると場所は浜辺らしい。


「これが災い? 爆発でもすんのか?」


「ははん」と笑うのは絵を見たダナヒ。どうやら全く信じてないようだ。


「カレルさんはどう思います?」


 一方のデオスは迷っているのか、この場で一番博学な者を頼った。

 カレルは写真を渡されてから、「素材が気になるわね……」とまずは一言。

 ああ、理系だな……と俺が思う中で、自身が思う所を伝える。


「稀にだけど、隕石なんかには未知の病原体がついている事があるの。

 この世界には居ない昆虫だとか、生き物の卵がついているって言う説もある。

 でも、それは生憎、説の域を出た事が無いけど、もし、その隕石が災いだって言うなら、そういう可能性が完全にゼロと言う事は無いんじゃないかしら」


 つまり、可能性としては災い足り得ると言う事だ。

 聞いたデオスが「ふむ」と言い、ダナヒが「ふーん……」と言葉を返す。


「何だったらあたしが調べに行きましょうか?

 正直、素材が気になって仕方ないし」


 これはカレルの欲求のようなものらしく、珍しい事に本音を言っていた。

 しかし、ダナヒは「いや」と言い、その時点でカレルの立候補を拒否。


「オメェに何かがあったら困る。

 明日辺りにヒジリと行ってくる。調査だか観察だかはその後にしてくれ」

「えっ……」

「あ、女としてじゃねーよ。研究者としてな。

 優秀な奴が居なくなると困るだろーが」

「あ、そ……」


 その後に続け、勘違いをされ、いちいち説明して反感を買っていた。

 この時はこれで決定したのだが、その日の夕食で続報が入る。

 それによると、その島の周辺で漁師が何かを見たと言っているらしく、中には一体どこへ行ったのか、行方不明になったものが居ると言う。

 彼らが見た物。具体的には、島程に大きな黒い影の何か。


 ダナヒは、翌日のそれの調査にカレルを加える事を告げた。


今まで色々とここに書きましたが、どうなんでしょう?

ウザイでしょうか…? ちょっと疑問に感じたと言うか、「アクセスが減る理由の一因じゃね?」と友人に言われたものでして…

もし良かったら教えてください。

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