深まる友情と始まる異変
今日の投稿は終わっているのですが、お礼を言い忘れたので投稿します。
まとめサイトで紹介して下さった方、及び、擁護?して下さった方のお蔭でアクセス数が急に増えました。
若干、この作品を捨てて居た所がありましたが、お蔭で再びやる気を得られました。
本当にありがとうございます! 心から感謝致します!
出来る限りの力で頑張りますので、これからもよろしくお願いいたします!
三か月ぶりにPさんと会った。
場所は教会の裏手の花棚。時刻は以前とまるで変わらない。
だが、そこに座っていたPさんが、妙に疲れているように見えたので、俺は久しぶりの挨拶よりも先に、体を気遣う言葉を発した。
「ああ……なんとかね。
それより久しぶり。どうやら元気にやってたみたいだね」
心配に応えてPさんは言い、ぎこちない笑顔を俺に向ける。
それには「はい……」と短く返し、Pさんの正面に腰を下ろした。
何やら本当に疲れているようだ。と言うか、元気が無いように見える。
顔色は……元よりよろしく無いが、以前と比べてひとしおである。
「何かあったんですか……?」
悩み事があるなら相談相手にはなれる。
そう思って聞くとPさんは、まずは「アハハ……」と苦笑いをして見せた。
「やんちゃな神様と遊んで来たせいで、ちょっと酷い目に遭わされたってだけさ。
少し休めば……回復するよ」
それから言って、表情を歪める。
直後には左腕にノイズのようなものが走り、一瞬以上透明になる。
消えかけている、と言うのが正しい状態で、俺は動揺してそれを見ていたが、しばらくすると元に戻り、そこでPさんは再び苦笑した。
「本当に大丈夫なんですか……?
何かあったらと思うと心配なんですが……」
何かが無くともすでに心配だ。
無茶をやらかして体を痛め、表面上では「大丈夫」と言う。
しかし、実際は相当の怪我をしていて、一人で耐えている友人を見る感覚だ。
簡潔に言うなら信じて居ない。信じられないと言う状況なのだ。
「だーいじょうぶ。本当の事だよ。
多分、二千年も大人しくしてたら、この左腕も元に戻るさ」
「二千年!?」
二年じゃなくて二千年。俺は骨すら残って居ない。
あったとしても「治ったよ!」と言われても俺は返事は出来ないのだが、兎にも角にもその長さには、正直リアリティを感じなかった。
だが、Pさんが神だとすれば――
いや、きっと神なのだろう。神からすればそんな期間は、それこそ一週間や二週間くらいなのかもしれず、違う世界に住んで居る事を俺は改めて実感するのだ。
「はいこれ。片手ですまないね」
そんな事を思っていると、Pさんが右手でメニューを出した来た。
慌てた動作でそれを受け取り、とりあえずの形でPさんを見た。
「今回のポイントは三十三Pだね。
こちらに来てからどれ位が経ったのかな? この基礎数値はなかなかのものだよ」
「結構ありますね……期間は多分、大体、十か月位ですかね……?」
聞かれた為に適当に答える。
大体それ位だったとは思うが、正直な所は良く覚えて居ない。
早い物でもう十か月。こちらの暮らしにも随分慣れた。
帰りたい気持ちはまだまだあるが、それは若干薄れたかもしれない。
第一の理由は良い人達に遭えた事。第二の理由は学校だろうか。
ギースやニースを呼んだ手前、せめて学校が出来るまでは、こちらに居るのは責任だと思う。
勿論、俺自身もその学校に通いたいとは思っているが。
「(親父と母さんは立ち直ってくれたかな……)」
そんな事をふと思う。一人っ子と言うのがこの際は痛い。
だが、立ち直ってくれている事を信じる事にして、渡されたメニューを無言で開いた。
変わって居た物は以下の二つ。
魔法六 魔法効果++ 三十P
特能六 行動高速化 二十四P
前回からの引継ぎが真実の六である。
「言語は前回でクリアしたって事さ」
言語が無いな、と思っていると、質問する前にPさんが言って来る。
……動物とかとは話せないらしい。
実は少しだけ期待をしていたので、それには若干の肩透かしを食う。
だが、選択の幅が一つ狭まったので、直後には「よし」と気持ちを切り替えた。
「魔法効果プラスプラスですけど、これって炎魔法の上級って事で良いんですか?」
「そうだね。一応の最上位だと思って良い。
だけど魔法は精神力に依る所があるから、ヒジリ君次第でもっともっと強くなれるよ」
質問するとPさんはそう言った。
魔法は苦手だ。調節が難しい。
いきなりMAXを持って行かれる時もある。
こればっかりは経験だとか、或いは感覚を鍛えるしか無いのだろうが、その機会と方法が得られず、俺は未だに苦手意識を持ったままだった。
「行動高速化は殆どそのままだね。意識している間は早く動ける。
だけどその分体力を使うから、使い所は誤らないように」
「あ、はい……」
返事をした後に俺は思う。
レナスが最初に使ったアレだな、と。
槍を振った直後に消えられ、剣を突き付けられたあの時の事だ。
おそらくあの時にそれを使い、高速移動して槍に乗ったのだろう。
「(どんだけ先に行ってたんだ……)」
そう考えると恐ろしくもあり、反面で少々の敬意も覚える。
団長とセフィアの恨みが無ければ、もっと普通に尊敬したはずだ。
尤もそれは俺の個人的な、逆恨みのようなものでもあるのだが。
「じゃあゆっくりと考えて。
僕はちょっと、花に水をやってくるよ」
言って、Pさんが立ち上がる。
直後には右手にじょうろが現れた。
Pさんはそのまま裏庭に行き、広がる花々に水をやり出した。
実の所は大体決めている。
「(行動高速化一択だろ)」
と言う物だ。
年齢的には俺も少年で、そういう物には憧れがある。
それこそ「残像だ……」とか言って見たい、漫画に影響された時期もあった。
それが今叶うのだから、来月に見送る必要は無い。
「行動高速化で良いですかー!」
すぐにもそう言い、振り向いたPさんに「早いね」と言って笑われるのである。
残ったPは九P。これでは他には何も取れない。
故に、そこは来月への貯金として、その事もPさんに伝えて置いた。
「分かった。じゃあ僕は水やりがあるから、ヒジリ君は先に帰っててよ。
メニューはそこの机に置いといて」
Pさんはそう言って、再び水やりの作業に戻る。
言われた通りにメニューを置いたが、なんだかもう少しここに居たかった。
と言うか、Pさんと話がしたいのだ。BLとかそんなんじゃなく、単純にほら、三か月ぶりだから。
「あの……Pさん。良かったら手伝いますか?
もう少しここに居たいって言うか……」
顔を向けて聞いてみると、Pさんは笑って「じゃあ頼もうかな」と言って来た。
直後に目の前にじょうろが現れ、掴むと同時に重みが生まれる。
それからPさんの近くに向かい、二人で花の水やりをして回った。
「そう言えば、僕の名前はPさんって事になってるんだね?」
一時間程を過ごした時に、俺の隣でPさんが言った。
そう言えばその名で呼んでしまったな……と、その時に気付くがもう遅い。
「すみません……本当の名前を知らないんで、勝手に名前を付けちゃいました」
「いやいや、Pさんで良いんじゃないかな? 本当の名前なんて曖昧なものだしね。
ヒジリ君が考えてつけてくれた名前なら、僕はその名前を喜んで受けるよ」
謝罪をするとPさんはそう言って、「Pさん。Pさんね」と楽しそうに繰り返す。
「由来はなんだろう……ピエールの頭文字?
いやいや、それともパーフェクトのPかな……?」
そんな事を呟きながら、花への水やりを再開させるのだ。
ポイントをくれるからPさんなんです。
なんて、なんだか言えない雰囲気である。
俺は小さく咳をついてから、水やり作業を再開させた。
「えらいこっちゃえらいこっちゃ!」
審判の日を終えて戻ってくると、ユートが一人で大騒ぎをしていた。
時刻は未明。外は暗く、部屋の中も当然暗い。
一体何事かと聞こうとしたが、その前に自分で異常に気付く。
揺れている。割と激しく。つまり地震の最中だったのだ。
体感震度で四か五か。経験が少ないので何とも言えないが、おそらくそれ位の震度の揺れが、十秒間程続いたのである。
「ふぅー……やれやれ。アブなかったー……」
やがては収まり、ユートが言うが、被っているのは俺のパンツ。
「ちょっときみぃ?!」
故に叫び、「返せよ!」と要求し、飛んで来たユートからそれを剥ぎ取るのだ。
とりあえず、それは洗い済みの物だったので、一先ず俺は安心したが、今後はするなよと言う意味を含めてユートを「ぎろり」と睨んで置いた。
「ヒィィ……自分の安全をカクホしただけなのにぃ~……」
「確保するにもモノがあるだろ? 例えば雑巾とか……」
「ヘールくん人形とか?」
「いや、それは自殺行為だね……」
地震の最中に着替える意味。自分の首を絞めるだけだ。
そう思うが為の発言だったが、ユートはちょっと不満気だった。
「にしてもヒジリはヨユーだったね。ジシン怖くない? マジヤバくない?」
「何でギャル風?
……っていうかまぁ、起きたばかりだから反応出来なかっただけだよ。
昼間とかだったらもうちょっと、リアクションが大きかったと思うけどね」
口調に対して一言を言い、聞かれた質問の答えを返す。
ユートはそれには「ふーん」と言って、「皆は大丈夫かなぁ?」と心配そうに続けた。
建物が壊れた訳では無いし、火事が起こった様子も無い。
大丈夫だろう、と、俺は思い、ベッドから抜け出さずにそれを口にする。
実際の所はこの地震がきっかけで、とある異変が起こっていたのだが、俺とユートがそれを知るのはもう少しだけ後の事になる。
翌日の朝は久しぶりにダナヒと真剣勝負を行った。
稽古という名の疑似戦は三日に一度程で行っているが、実践形式で戦ったのは大会以来の出来事だった。
場所は庭で、ギャラリーはカレル。横にはユートが飛んでいる。
「あれはローズ王が大きすぎたのよ」とか、「大きいと裂けるの?」とか話し合っており、ユートに偏った知識を与えて、悩みの種を増やしてくれていた。
「んじゃーはじめっぞ! 最初から飛ばすぞ!!」
「あ、はい!」
ダナヒはすでにやる気満々。言葉の直後に飛びかかって来る。
振られた斧を屈んでかわし、その体勢から槍を突き出す。
しかし、それは斧の腹で受けられて、強引に軌道を変えられてしまう。
「本気で狙って来い! 当たりゃしねえからよ!!」
遠慮をしたのが読まれたらしい。
そこで一旦距離を取って、そこからは本気でダナヒと打ち合った。
この人と闘うと本当に楽しい。お互いに高め合えるような気がするからだろう。
互角。いや、おそらくはだがダナヒの方がまだ強い。
一撃一撃の重さによって、少しずつだが押されているからだ。
武器をぶつけ合い、技を見せ合い、紙一重の戦いを俺達は続ける。
「くっ!」
「ちっ!」
そして、あの戦いの時のように、お互いの武器に亀裂が走った。
だが退かない。今回は退かない。
口の端を曲げて更に打ち合って、武器の亀裂を大きくして行く。
「おらあっ!!」
ダナヒのパンチが頬に入る。
「でやあっ!!」
カウンターで俺は蹴りを放つ。
二人が同時に一歩を下がり、呼吸を整えつつ睨み合う。
次が最後だ。口にはしないが、ダナヒは俺にそう言っているように見えた。
小さく頷いて力を込める。ダナヒも同様の動きを見せた。
「「うおぉぉぉぉぉっ!!」」
直後に俺達は同時に詰め寄り、最後の力でぶつかり合った。
砕ける斧、辛うじて残る槍。
俺は素早くその切っ先をダナヒの喉に突き付けた。
静かになる庭。聞こえてくるのは、お互いの吐いている荒い息だけだ。
「へっ……ついに負けちまったか……
やるようになったじゃねぇかオイ……」
そんな中でダナヒが言って、負けを認めて苦笑いをした。
「良くやるわ……」
とはカレルの言葉で、一応の決着を見たかったのだろう、その後に館に足を向ける。
「やったジャンヒジリー! スゴイスゴーイ!」
ユートが飛んで来て目の前を飛び回る。
ダナヒは「やれやれ」と一言言って、その場に「ぺたん」と尻をついた。
ダナヒに勝った。ついに勝った。
俺も地味に強くなっているのか。
息を整えながらにそう思い、「ははっ……」と笑って腰を落とした。
ダナヒ「じゃ、早速二ラウンド目な」
ヒジリ「は?!」




