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ポピュラリティゲーム  ~神々と人~  作者: 薔薇ハウス
八章 古き国 新しい国
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第三回 新しい国を作ろう会議

車に跳ねられて病院行きですわ!

投稿が遅れて申し訳ないです!

とりあえず相手には「首が痛いって言っておきなさい」と言う、担当医師に笑いました(笑)


「唐突にですが開始しますよ。第三回、新しい国を作ろう会議~」


 言葉の通り、朝食の後に、それは唐突に開始された。

 以前と同様場所は食堂で、進行役も同じくデオス。

 見守るのが俺とユートとカレルと、ダナヒと言ういつもの面々である。


「イエー……」


 一応ながらに拍手をするが、ダナヒのテンションは相当低い。

 以前はもう少し高かった気がするが、おそらく飽きてきたのであろう。

 だが、一応はボスではあるので、俺とカレルも無言で拍手する。

 それを見たデオスが小さく頷き、三回目の会議は開始された。


「えー、ではまず、前回から今回までに発生した事件等の報告を致します」


 その内容は殺人や泥棒。果ては詐欺等を含めたニュースのようなもので、基本的には皆は黙ってデオスが発する報告を聞いて居た。


「次は下着泥棒ですね……

 どうやら最近増えているようで、苦情の声がよく届きます。

 人口が急速に増えて来た事による、治安の悪化だと思いますので、自警団の増員もしくは、罰則の強化が求められると思います」


 これにはユートが「下着泥棒!」と言い、「ヒジリのドールイだ」と更に続ける。

 だいーーーーぶ前の話であるが、「パンツが好き」と言った事を曲解して覚えて引き出して来たのだ。


「同類……?」


 怪訝な顔をしたのはカレル。それはそうだ。俺でもそうする。

 これにはまずは「いや!」と言ってから。


「違いますよ!! 誤解です誤解!」


 と、カレルの誤解を解いておいた。

 一応それで納得してくれたのか、カレルが「フーン……」と顔を戻す。

 それには一先ず安心をして、ユートに「おい……」と不満を示した。


「あれ? ドールイでは無いのでした? パンツが好物って言ってたからさー」


 頬を掻いてユートが言った。

 全く以てその通りだが、カレルの手前では言って欲しく無かった。


「好物……?」


 先程よりも険しい顔で、俺の方を見て来たからだ。

 本当に言った事ではあるので、言い訳できずに顔を覆う。

 カレルは「何なの? 真面目系変態なの……?」と、俺には分からない結論を展開していた。


「ちなみに今の罰則は?」

「二万ギーツから五万ギーツの罰金か、或いは二週間の無料奉仕ですね」


 聞いたのはダナヒで、答えたのはデオス。

 下着泥棒への罰則の事らしい。


「それじゃ軽すぎるわ!」


 と、怒ったように言ったのが、被害者達と同性のカレルであった。

 個人的には普通だと思うが、カレルはそうは思わないらしい。まぁ、そこは被害者である訳なのだから、男以上に敏感でも仕方がないだろう。


「ま、確かにちっとばかり軽ぃな。いっそもう死刑で良いんじゃね?」


 それを聞いたダナヒが言った。それはそれで重すぎで、「ちょ、ちょっと!?」とカレルも少々慌てる。

 人を殺してもパンツを盗っても同じ罰則と言うのは確かにヤバく、それには俺も「行き過ぎですよ……」と、一応の進言を送って置いた。


「あー……んじゃあ指でもし折っとくか?

 そんな手があるから盗む訳だしな。罰金に加えて指折りで決定だ。

 下着に限らず窃盗関連全てにこれを適応しとけ。重さによっては両指全部。足りねぇ分は足の指もイクってな」


 これにはユートが「ヒィィィ……」と怯え、カレルも密かに生唾を飲む。

 自分の言葉がダナヒを焚き付けたのだと、自覚している部分もあるのだろう。

 ちなみに俺はアリだと思うので、その結論には異を挟まない。

 色々と事情はあると思うが、その時はその時。聞いて判断すれば良い。


「少し過激な罰則と言えますが、海王陛下の国らしいですね。分かりました。では、それはそのように」


 デオスもそれには異論は無いようで、下着泥棒の件はここで終了。


「(大丈夫この国……?)」


 と、椅子を動かして聞いて来たカレルには、苦笑いで「多分……」と答えておいた。


 そこからの流れは以前と変わらず、人口推移の話に移り、その後には建設途中の施設、ナエミーランド(仮)の話も出て来た。

 しかし、これは完成がまだまだ先と言う事もあり、発案者であるナエミが戻って来てから詳細を決めるという流れとなった。


「最後はヨゼル王国との局地戦の結果です」


 デオスの最後の話はそれで、海の上ではこちらの方が若干有利になったらしく、ヨゼル王国もそれを察して深追いはしてこなくなったという事だった。

 原因としてはやはりあの、大型戦艦を奪った事が大きく、運用の為の資源は莫大だが、それに見合う活躍を十分に果たしていると言う事らしい。


「尤も、あちらが本気になって、消耗戦に出てくれば間違いなく負けますが、あの戦艦がそうならない為の抑止力になって居る事も間違いないでしょう。質問が無いのであれば、私の話は以上で終わりです」


 皆を見回し、質問が無い事を見て、デオスは眼鏡を押し上げてから座った。


「あいつにも名前が必要だな。キングダナヒ一世とかで良いか?」

「キングカーメン的なアヤウサを感じる……」


 直後に独り言を言うのはダナヒで、呆れた顔をしたのはユート。


「名前には魂が宿る物よ。適当にはつけない方が良いと思うけど……」


 と、おそらくユートとは同意見なのだろう、カレルが続けて言葉を発した。

 おそらくキングうんちゃら系にはカレルもカレルなりに思う所があるのだ。


「そんなもんか……」


 聞いたダナヒはそう言って、「じゃあ何が良い?」と逆に聞いて来た。


「ゴーゴークジラ号一択っしょ!」


 すぐにも言うのはユートであったが、当然、それはダナヒに聞こえず、カレルが「可愛いわね」と笑っただけで、ユートの意見は闇へと消える。


「(名前には魂が宿る……か……

 そう言えば俺達の世界にも、山とか、川の名前がついた船が沢山あったって言ってたな……)」


 それは確か今は亡き、俺の爺ちゃんが言っていたもので、その中でも特に幸運と言うか、戦後まで生き抜いた船があって、名前も確かに聞かされていたはずだった。


「(何だったかな? ナガト……じゃなくて……何かもっと柔らかかったような……)」


 生憎、俺はミリオタでは無く、そちらの方面には詳しくは無い。

 だが、思い出したが為に気になって、顔を顰めて必死で考えた。


「オイ、どうした?」


 それを目にしたダナヒに聞かれ、「いえ、ちょっと」と答えて更に考える。


「なんとか、カゼ? ……カゼがついた?」


 記憶の糸を辿って行くと、それだけが出て来て疑問口調で呟いた。

 確信は無い。曖昧である。もう十年位前に聞いた話だから。


「カゼ? 風邪ひいたの?」

「いやいや、戦艦だか空母だかの名前なんだけど……」


 ユートに聞かれて一応そう言う。だが、それすらもあやふやであり、結局俺は「駄目だ……」と諦めた。


「(ナエミの爺ちゃんがそれに乗って帰って来たって言ってたんだよな。確か……)」


 唯一確かな情報はそれ。だが、生憎名前は出てこない。


「何か思いついたの?」

「いや、思い出そうとしてたんですけど、どうしても名前が出て来なくって。ナエミが居れば分かるんですけど」


 カレルに聞かれてそう言うと、ダナヒが「んじゃあ保留だな」と言った。


「別に他のものでも……」


 拘る理由は何も無い。戦争で沈まなかったと言うだけの話だ。

 故にダナヒに言いかけたのだが。


「名前には魂が宿るんだろ。だったら出来るだけ良い名前の方が良いだろ」


 と言われ、「あ、はぁ……」と、納得をするのであった。

 その後の会議は蜘蛛型の兵器や、カレル曰くの「アレ」の話になり、アレが何かは分からない俺は、虚ろな表情で話を聞いていた。


「では今回はそう言う事で。ヒジリ君には何かありますか? 無ければこれで終わりですが」


 そして、会議はいつの間にか終了。


「あっ? えっ? 俺、ですか!?」


 デオスに話を振られていた事に気付き、慌てた表情で自分を指さした。


「えーと……別に何も……」


 と言いかけて、とある事を思い出す。

 それは、会議とは関係が無いが、ピシェトに頼まれていた例の書類で、その事を手短に皆に言うと、嫌な顔を露骨にされるのだ。


「(いや、まぁ、分かってたけどね……)」


 それはそうだ。

 これは勧誘で、言い換えるなら「怪しい宗教に何も言わずに入って下さい」と、お願いしているようなものだ。


「うん良いよ!」


 なんて言う人は、良い人なのだろうが先は危うい。


「オメェ、もしかして騙されてねぇか? 毎月金とか送ってねぇよな?」

「いやいや!!」


 挙句にそこまで疑われてしまい、否定の為に首を振った。


「ホント、凄い良い人なんです。その人が居なかったら生きてないし、一緒に過ごした期間が無ければ、今でもきっとくすぶってたと思います。

 何も恩返しが出来なかったんですが、唯一喜んでくれた事がそれで、だから、迷惑なのは分かりますけど、皆にも名前だけ書いて欲しいって言うか……本当に、何もしなくて良いので……」


 ピシェトは命の恩人である。今でも俺は感謝している。

 あそこでの生活が無かったならば――

 もしかしたら生きて無かったかもしれない。

 必死に言うと、皆は黙り、やがてはダナヒが「貸せよ」と言った。


「い、良いんですか!?」

「オメェの恩人なら俺様の恩人だ。名前書くだけだろ? やってヤンよ」


 聞くと、ダナヒはそう言って、自分の方から近寄って来た。


「ペン貸してくれ」


 その途中でデオスに言って、投げ渡されたペンを受け取り、テーブルに広げた羊皮紙の上に「ダナヒ・ドレル・ハールゲン」と言う、本名を書いてくれたのである。


「貸して」


 そう言ったのは横に来たカレルで、顔を向けるなり「フッ」と笑われる。


「そういう意味ならあたしもそうよ。知らん顔は出来ないわ」


 そして、ダナヒからペンを受け取り、「カレル・ドゥーコフ」と言う名前を書いた。


「私はどうします? マジェスティでは無いですが?」


 これはデオスで、書いてと頼めばおそらく書いてくれるのだろうが、ピシェトの要望外の事なので、


「多分、三人で大丈夫だと思います。ありがとうございます」


 と、気持ちに対する礼を伝えた。


「ピシェトさんの筋トレもこれで捗るねー」

「そ、そういうもんか? でもきっと、喜んではくれるだろうな」


 ユートの言葉にそう答え、羊皮紙を前にして俺が言う。


「あ、二人ともありがとうございました!」


 遅れて二人に礼を言うと、二人は揃って苦笑いを見せた。

 良い人達だな。本当に。俺はそう思って満面の笑みで応えた。


数年後。

「カレルとダナヒ! ヒジリって奴もいんだろぉ!? 借金の保証人になりましたよねぇえぇぇぇ!?」

と、押しかけてくるヤクザ達に体育座りでガクブルする三人が…

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