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ポピュラリティゲーム  ~神々と人~  作者: 薔薇ハウス
七章 必殺技を手に入れろ! ヒジリとダナヒの修行編
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密林の王者

 その翌日の朝早く。奇妙な物音で俺は目覚めた。

 方向はおそらく森の奥。

 浜辺の場所を南とするなら、ダナヒが向かった北の方で、伐採した木が倒れるような音が、連続して何度も聞こえて来ていた。


「もしかしたらダナヒさんか……? ってユート? また居ない……」


 或いはそうかもしれないと思って、それ以上は深く考えなかったが、周囲にユートが居ない事に気付いて、昨夜を思い出して慌てるのである。


「おー、オハヨーオハヨー。見てコレ可愛い?」


 が、すぐにも声が聞こえて、岩場の影からユートが現れた。


「な、なんだそれ……」


 呆れる理由はユートの格好。その体に纏っていたモノが葉っぱを加工――

 と言うよりは、上下前後に一枚ずつを括りつけただけのものだったので、可愛い? と聞くセンスに閉口したのだ。


「一旦消えれば直るんだけどさー。どうせならサバイバル感を出したくって。これがアレでしょ? 森ガールって奴でしょ?」


 多分違う。惜しい気はするが。

 思った事を実際に言い、兎に角居た事に一安心をする。

 その頃には森の奥からの音も消え、島内に静寂が訪れていた。


「……ま、何にしても朝飯だな。もう魚はゴメンだから、何か果物でも探して来るか?」

「そうしよーそうしよー」


 服の事は置いておき、朝食の事を提案して見る。するとユートはそう言って、いつものように肩に乗って来た。


「そんじゃいこー!」

「もしかして……あ、いや、何でも無い……」


 何かを言いかけた理由はなぜか、いつもより座った際に「ぷにゃり」としたから。

 もしかして葉っぱの下は裸なのか……!? と、聞こうと思ってやめたからである。

「それが何か?」と、言われても何だし、「そんな所ばっかり見てるんだね♪」と、笑顔で呆れられても何か嫌だ。

 触らぬ神に何とやら、知らない方が良い事もある。

 それ故に俺は疑問を飲んで、食糧探しに出発するのだ。


 幸いにも食べ物はすぐに見つかり、いくつかの果物の確保が出来た。

 その上で更に美味しそうなモノが無いかと、欲を出して彷徨っていると、


「アーアアーーーー!!!!」


 と言う雄叫びを上げ、俺達の頭上を通り過ぎて行った野生のダナヒを見かけたのである、

 移動手段は植物の蔦。

 格好としては殆ど裸で、葉っぱで作ったパンツを履いて、斧を背中に担いでいた。

 そして、顔やら腹やらには謎のボディペイントを施しており、宛ら密林の王者のようなノリで、俺達に気付かず通り過ぎて行ったのだ。


「すっごい楽しそうな顔してましたね」

「誰もあんな人が海王だとは思わないよ……」


 思うとしたら密林の王。

 しかしながらその国民には、誰もなりたいとは思わないだろう。


「……ま、とりあえず戻るか」

「だねー」


 結局の所はそれだけを言い、俺とユートは小川に戻り、取って来た果物を適当に食べながら今後の事を話し合う事にした。


「必殺技って簡単に言うけど、実際問題どんなのがそうなんだ?」


 リンゴのようなものを食べつつ、何気なしにユートに聞いてみる。

 前にも言ったが俺はゲームとか、漫画とかにはあまり触れ合って居ないので、言わば、そういうものに対しての原動力が欠けていたのだ。


「うーん……例えば左手からタツマキみたいなのを出して、相手の動きを封じ込めるでしょ? そこに右手の槍から発した貫くような一撃を叩きこむとかさー」

「う、うんうん」

「それか相手の眉間に正拳を繰り出して、幻を見せて精神破壊とか」

「お、おお……」

「或いは美少年的な何かを使って、相手のコアだけを貫くとかね?」

「美少年的な何かって何だ!?」


 最後のそれは流石に謎で、相槌を打つのは不可能だった。


「ていうかそれの元ネタって漫画だよな? こっちの漫画ってそんな進んでるのか?」


 これにはユートは「うんにゃ」と言って、「あくまでボクのオリジナルです」と、盗作容疑を認めない。

 まぁ、はっきりとした元ネタは不明なので、俺もそこには追及しなかったが、必殺技の何たるかは分かった気がして、そこからは「うーん……」と考え込むのだ。


「ヒジリの場合は槍な訳だから、素早く突く為の練習でもしてみたら?

 凄い勢いで突いたりしたり、回すだけでもそれっぽくない?」

「あー……」


 言われた為に一言を言い、岩から下りて武器を召喚。

 その後に「こんな感じか?」と言って、素早く槍を突いてみた。


「おー! それっぽいそれっぽい!」


 聞かれたユートは拍手をしたが、「でも地味だね」とも付け加えて言い、途方に暮れた俺は座って、「さて、どうするかな……」と、呟くのである。




 その後も色々とやってみたが、結局は何も得る事が出来ず、気分転換の意味も含めて夕方頃に森へと踏み入った。

 そして、その際に見た目だけなら黒豚のような生き物を見つけ、今晩の食事にする為に、それを深追いしてしまったのである。

 気付けば方向が分からなくなっており、挙句に黒豚はどこかへ遁走。

 森の中では寝れない為に、ユートと脱出法を考えるのだ。


「んー……じゃあボクが上から指示するよ。それっぽい方向に誘導して上げる」


 しばらく二人で話した結果、それが最善という事になり、ユートが森の上へと飛んで、指示に従って俺が歩いた。

 おそらく一時間程が過ぎただろうか。

 夕焼け空に帳が下りた頃、何かの轟音が耳にと入る。

 それは、良く聞けば水が落ちる音で、昨日の探索で見つけた滝が付近にあるのだと予測をするのだ。


「だとしたら行き止まりだな……まぁ、でも、全くの迷子よりは良いか……」

「何か言ったー?」


 滝を見つければ方向が分かる。高さ次第では飛び降りても良いだろう。

 先の独り言が聞こえたのだろう、頭上のユートが聞いてくるので、それには「いや!」と返した上で「音が聞こえる方に頼む!」と、滝へと近付く道を頼んだ。


「(なんか……ヤケに倒れた木が多いな……)」


 直後の疑問は声には出さず、両目で「ちらり」と一瞥しただけ。

 しかし、それが連発して見られたので、流石にちょっと不安になってきた。


「な、なんか居ないよな!? デカイ恐竜みたいなのとか居ないよな!?」


 一応聞くと、「いなーい」と言われ、そこには「だよな……」と安心をする。

 少なくともデカイ恐竜が居て、進行方向にあった木を薙ぎ倒した訳では無さそうである。


「(じゃあ何なんだ? たまたま老朽化? いや、結構新しい木もあるよな……)」


 だが、どうにも気になったので、倒木の前で停止して、前屈みになって観察をした。


「おっそろすぃ魔物来ちゃう!?」

「うわ!?」


 気付けばユートが後ろに居た為、そこには驚きの声を出し、「いきなり声出すなよ……」と叱った上で、再び倒木に視線を戻す。

 そして、注意深く観察した結果、何かに歯形を根元に見つけ、それがかじった事によって木が倒されたのだと推測をした。


「ビーバーみたいな生き物が居るのか? でも結構デカイなコレ……」


 歯形を見る限りその生き物は、人間位の大きさはあり、気付いた俺は「いやいや」と言い、恐怖を圧して姿勢を戻すのだ。


「ビーバーって何? 魔物的な生き物?」

「あぁ、いや、ただの動物、かな? 考えたら川にしか居ないっぽいし、これは多分、別の奴の仕業だと……」


 ユートに答えてそこまでを言った時、どこかで「ガサリ」と物音が聞こえた。

 それはすぐに伝播して広がり、そこら中から「ガサガサ」と言う怪しい物音が聞こえ出した。


「ついにキター!?」

「何で喜ぶ!?」


 ユートが喜び、俺が言う。

 念の為に武器を呼ぶと、直後に「それ」は姿を現した。


「ギャアアア!?」


 ユートと俺が同時に叫び、顔が若干細長くなる。

 それ程に俺達が驚いた理由は「それ」が、明らかに「あれ」でだったからだ。


 大きさとしては俺と同じ程。

 色は茶色で手足は六本。

 頭の上には触覚があり、地面を「カサカサ」と這い寄ってくる。

 つまりそう、「それ」とは超デカイゴキブリの事を指しており、そんな奴らが群れて現れたので、俺達は恐怖で叫んだ訳だった。

 その数はおよそで二十匹以上。

 中にはすでに飛んでいる奴も居て、恐怖がMAXに到達した俺達はそこから思わず逃げ出していた。


「きてるぅぅぅ!!? 超追って来てるぅぅぅ!?」


 が、ユートが言うように、奴らはなぜか俺達を追跡。

 やがて発見した滝を前に、俺達は奴らに追い詰められるのだ。


「ギルギルギルギル……!!」


 これは奴らの鳴き声であり、直後にはなんとその場に直立。

 長い、リスのような歯を見せて、よだれを垂らして鳴きまくり、俺達を徐々に包囲し始めた。


「ゴキブリス!」

「うまくねーし!」


 それを見たユートが青ざめて言い、槍を構えて俺が言う。

 奴らがついに飛びかかって来たので、仕方が無しに槍を振った。


「ブリュッ!」


 と言う、鈍い感覚があり、奴らの腹が槍に裂かれる。


「ウワアアアア!!?」


 そこから出て来た体液が腕にかかってしまった為に、俺は気が狂いそうになる。


「撤退を! 戦略的撤退を!」


 ユートが飛んで滝へと向かい、奴らの届かない空中で止まる。

 これは飛べるから出来る事で、俺にはそうする事が出来ず、押し寄せて来る奴らを切り伏せる度に、大事な物を失って行った。


「ギルギルギルギル!!」


 果たして考える知能があるのか、状況を不利だと判断した奴らは、何と、一斉にこちらに飛びかかり最後の勝負を仕掛けて来たのだ。


「そういうのやめろやああああああ!?」


 俺の精神も最早限界。

 発狂寸前の声を上げ、何も考えずに槍を振る。

 そしてそれが、偶然に、回転する竜巻のようになり、それに触れた奴らは全て細切れのミンチになったのだった。


「ハァ……ハァ……ハァ……」


 おそらく瞳に生気は見られず、顔つきも相当にヤバかっただろう。

 地面に槍を突いた上で、それに寄りかかって息をしており、「や、やったねヒジリ……」と、ユートが来ても、すぐには言葉を返せなかった。


「最悪だよ……ここ最近で……ほんと、一番最悪の……??」


 言葉の途中で視線に入るのは、奴らのもげた脚の一部。

 どうやら頭に乗っているらしく、気付いた俺は顔色を変える。


「イヤアアアアアアア!!」


 直後には滝から飛び降りた俺に、ユートは「ヒジリー!!?」と叫ぶのである。


自ら死を選ぶ!

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