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ポピュラリティゲーム  ~神々と人~  作者: 薔薇ハウス
六章 ランドデストロイ強奪作戦
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評価システムの犠牲者

文字数調整を間違えた為、今回は短めのお話になります(汗)


 その日の夜。

 二十三時三十分を知らせる鐘の音が屋敷に鳴り渡った頃、私の寝室の窓ガラスが破られ、一人の侵入者が姿を現した。

 その時の私は眠っていたが、物音によって即座に起床。

 布団を跳ねのけ、寝衣のままで窓際に立っている侵入者と向き合った。


 髪の毛は白で、目の色は琥珀色。

 まだ雨が降っている為に、その全身はずぶ濡れで、抜き放った剣を右手に持って私にじりじりと近付いて来る。


「見た顔だな」


 と、言葉に出るのは当然の事。

 その人物はティレロの側近で、噂の上ではマジェスティだと言う名前も知らない女であった。


「随分な手段で訪ねられたものだが、これは一体どういう事だ?」


 質問するも女は無言。

 ただ、ひたすらに息を荒くして、切羽詰まった顔で私を見ている。


「くっ!!!」


 そして、何やら覚悟を決めた様子で、直後に斬りかかって来たのである。


「問答無用か。そういう事ならば」


 それをかわして背後に回り、剣を召喚して鞘から抜き放つ。


「力づくで聞かせて貰おう!」


 それから剣を水平に振り、相手の武器で防御をさせた。

 金属音が鳴り響き、防御をしたままで相手が下がる。


「終わりだ」


 更に踏み込んで一撃を叩き入れ、相手の武器を破壊した。


「負けない……負けられないのよ! この戦いには……ッ!!」


 女はそれでも諦める事無く、新しい武器を右手に召喚。

 その上でこちらに飛びかかって来たので、戦意を削ぐ為の一撃を繰り出す。

 即ち、氷の属性を付与した剣による、相手の半身の凍りつけである。


「くっ……あああああっ!!?」


 吹雪のような猛風に襲われ、女は空中でしばしを停止。

 その後に剣を握ったままで壁を突き抜けて飛んで行った。

 そして、廊下のガラスを割って、屋敷の玄関前辺りに落下。

 剣を片手に下を見ると、女の両脚は凍り付いていた。


「あれでは最早逃げられまい」


 それを目にして剣を消し、上着を羽織って下へと向かう。

 早速にゼーヤが私を迎えたが、近寄らないように言って置いた。

 玄関を開けて外に出ると、女はまだそこに居た。


「生きているか」


 と、声をかけると、放心したような目で私を見上げ、「もうすぐ死ぬわ」と、意味深な事を言って、私の眉根を下げさせるのである。

 落とした剣は届く範囲にあるが、女はそれを取ろうとしない。

 凍り付いた両脚を溶かしてやるも、立ち上がる事すらしようとしなかった。


「もうすぐ死ぬとはどういう意味だ?」


 質問するが女は無言。

 胎児の如くにその場で丸くなる。


「実はその……」


 と、現れたのは、女の相棒妖精だった。

 今まで存在を見て居なかったので、女がマジェスティとは信じ切れなかったが、それを見た今は信じる他に無く、興味を深めて「何だ?」と聞いてみた。


「実はソフィーヤは今夜の0時で、この世界からサヨナラなんだよ……

 評価がほら、足りなくてさ……

 言われた通りにしてただけなんだ。ソフィーヤは絶対悪くないんだよ!

 だから最後にアンタと戦って、勝てたらきっと助かるんじゃないかって……そう思ってここに来た訳なんだけど……」


 結果は是。即ち敗北だ。

 聞いて居たとしても殺されてはやれないが、そうだと知って居れば対応は違った。

 だが、今それを言っても無意味なので、私は「すまないな……」と一言だけを言うのだ。


「正直怖いよ……物凄く怖い……

 元の世界に帰りたかっただけなのに、どうしてこんな事になっちゃったんだろう……

 あいつの言う事を聞けって言われて、それを守っていただけなのに……」


 これは女――

 ソフィーヤのもので、小刻みに体を震わせている。

 地面に触れている右半身が泥水によって汚れていたが、今の彼女にとってはそれは、最早どうでも良い事なのだろう。


「あいつ……とは?」


 駄目を承知で聞いて見る。私にとっては重要な事だからだ。

 今、何も出来ないにしても、今後は警戒する事が出来る。

 ソフィーヤは黙り、しばらくしてから、小さな声で「ティレロ」と言った。


「ティレロ・アルバードか? 奴に何をしろと言われた?」


 そうだろうな、と思っていたが、実際に原質げんちが取れたのは大きい。知らぬ存ぜぬで通されるだろうから、証拠が整うまでは口にしないが、ティレロに対して予防線が張れると言うのはありがたかった。

 続けた質問にもソフィーヤはゆっくりとだが答えてくれる。


「マジェスティを襲えとか、人を殺せとか……そんなので良いのって思うモノばかりだった……

 あなたの部下も私が殺した。王様も、鎧の騎士もみんな……」

「ゼーヤをやったのはお前だったのか……」


 そこには怒りと憎しみを感じる。知って居たなら殺していたかもしれない。

 だが、今のソフィーヤを殺しても仕方なく、そんな私をゼーヤが見たとして、喜んでくれるとも思えなかった。

 故に、拳を作って耐えて、その先をソフィーヤに聞いてみるのだ。


「ティレロは何を企んでいる? 知って居る事で良い、教えてくれないか?」

「分からない……何も知らないの……

 でも、私の担当の神様は、あいつの言う事を聞けって言ってた。

 そうしたら間違いないからって……でも、そんなのは全部嘘だった……

 嫌だよ……私、死にたくないよ……」


 ソフィーヤはそう答え、丸まったままで顔を押さえた。

 気の毒だとは思うが救う事は出来ず、私は無言で両目を瞑る。

 自業自得だ。とまでは言わないが、これが彼女の選んだ道であり、その結果としての死な訳なので、私に出来る事は何も無い。


「その、担当……神の名だが、お前はそれを知っているのか?」


 最後に聞くと、ソフィーヤは「助けてよ……」と呟いて姿を消した。

 それと同時に二十四時の鐘の音が、館の中から聞こえて来た。


「やっぱ駄目だった」


 その場に残っていた相棒妖精が言い、主人の後を追って消えて行く。

 見慣れはしたが、慣れてはいけない本当は寂しい光景なのだろう。


「全ての元凶はティレロにあり、か。だが、証拠が無いのではな……」


 間接的な立場であるが、ティレロはゼーヤの仇に当たる。

 今は兎も角、証拠が揃えばそれなりの報いを受けて貰おう。


 ソフィーヤが居た場所を少し見てから、視線を移して街を見る。

 それから雨が止んでいた事に気付いて、屋敷の玄関に足を向けた。


カレルとヒジリを襲ったのもこの子です。

純粋に人を信じ過ぎたんですな。

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