表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポピュラリティゲーム  ~神々と人~  作者: 薔薇ハウス
五章 世界一下品な祭り
48/108

悪夢のダ・チン祭 一

 ダナヒの街を出てから十日後。

 ようやくデーゼルに辿り着いた俺は、船から降りて街へと向かった。

 船の中で聞いた話では、街の名前はイオンクと言い、人口はおよそ三千人程の、デーゼルの東の窓口らしかった。

 住居の作りは高床式で、素材に丸太を活用しており、住民達の殆どは、白メインの貫頭衣を身に着けていた。


「ロップ? ああ、ロップテールビーの事ね。

 それならお店に行きなさいな。えっ? どこでも食べさせてくれるわよ」

「そ、そうですか。ありがとうございました」


 どこで米――ここではロップと言うらしいが、それを食べられるのかをおばさんに聞くと、当たり前のようにそう言われ、街中に着いて店を探した。


「ここかな?」

「っぽいね」


 店の名前は「アンバルマン亭」。腕まくりをしたコックが描かれている。 笑顔が素敵で歯が輝いており、「うまいよ!」と言う吹き出しが記されていた。

 こう書かれると逆に怪しいが、飲食店である事は間違いないはず。

 そう思った俺はユートに聞いてから、店へと続く縄梯子を上った。


「らっしゃい! おや? 見ない顔だね……?」


 入口に立つなり亭主に言われ、「あの…」と言ってカウンターに近付く。

 位置としては入口から見て左の、赤色の棚がそれであり、どうやらそこで調理もするらしく、竈や鍋等も置かれてあった。

 床にはあしを編んだものと思われる、緑色の絨毯が広がっており、土足で入って良いものだったのかと、他の客達の様子を伺う。


「……」


 が、生憎な事に客はゼロ。うまいよ! と主張した結果がこの有様だ。

 だが、亭主に「どうしたい?」と話しかけられたので、それは後で聞く事にして、訪ねた理由をまずは言った。


「ロップ? ああ、ロップテールビーの事ね。

 普通に出せるけどそれだけで良いのかい? 魚とか肉とか色々あるけど?」

「ああ、じゃあ肉を。出来れば牛か豚か鳥で」


 ここまで来たなら突っ込むしか無い。

 客が一人も居ないのは不安だが、おそらくそれは時間帯のせいだろう。

 そう考えて注文をして、俺は体を席へと向けた。


「ええと……土足でも良いんですか?」


 見る限りでは座敷しか無いようなので、顔だけを戻して亭主に聞いてみる。


「出来れば脱いでくれると助かるねぇ」


 脱げ、とは強要しなかったものの、亭主の返事はそれだった。

 その為、靴を脱いでから、一番手前の座敷に向かう。


「(ちょっと違うけど他よりは近いな……個人経営のラーメン屋みたいな)」


 雰囲気としてはそれであり、店内を見回して少々笑う。

 外に出ると勿論違うが、店内は殆ど元の世界のそれだ。


「これこれヒジリ! 今日の占いだって!

 百ギーツだってさ、やってみようよ!」


 気付くとユートはテーブルに居て、木の箱を抱えて目の前に居た。

 箱の右には投入口が、中央にはねじれた紙が見える。

 どうやら自己申告制のセルフおみくじのようなものらしい。


「(ここまで似るか……)」


 と、苦笑して、硬貨を入れて紙を取る。


「見せて見せてー!」


 すぐにもユートが飛んで来たので、確認もせずにユートに渡した。


「えーと……ゴラ吉……? どーゆー意味だろ……?」

「さぁとしか言えない……」


 そこは文化の違いであるのか、名前からは何も察する事が出来ず、その後の文章で察して見ようと、ユートが続けるだろう言葉を待った。


「オームネヘーアン。

 しかしながら、近々ニョナンのソーもあり。

 ライバルの出現に頭を悩ますも、トリコシグローの可能性も……?

 ラッキーカラーはドドメ色。ラッキーアイテムは女性の干し首」

「最後こわっ!!?」


 それには思わず驚くと、ユートが「やめてよね!?」と頭を守る。


「するかよ!」


 と、答えた直後には、皿を両手に亭主がやって来た。


「はいお待たせ! ロップと焼き豚! 水もすぐに持ってくるからねー」


 そして、座敷の横に立ち、両方の皿をテーブルに置く。

 ロップの見た目は冷や飯で、丼では無く取り皿に乗っており、一方の焼き豚は六枚ほどが、同様の取り皿に乗せられていた。

 暖かいご飯を期待していたので、そこには少しがっかりしたが、それを隠して「すみません」と言い、添えられていたスプーンを右手に持った。


「へー……これがロップかぁ……」


 物珍しさにロップに近付き、ユートが鼻を「ふんふん」鳴らす。


「食べてみるか?」


 と、スプーンに乗せると、「いただきまぁーす!」と言ってそれに食いついた。


「ン……?……ンー……」


 二回ばかりを噛んだ後、微妙な顔でユートは沈黙。


「ま、まぁ、御飯だけだとな……」


 おそらくそこが理由だと思い、俺も一口を口に入れる。

 直後の感触は「ぷちり」と言うもの。

 味は甘いが、何かが沢山潰れたような感触である。


「ン……? ンー……」


 気付けばユートと同じような状態で、口を動かさずに固まっていた。

 米とは違う。何かと言うと、カズノコを食べたような食感に近い。


「これは……なんか違うなぁ……」


 確信した後にそう言った頃、水を持って亭主が現れる。


「あの……これって何なんですか……?」


 何とか飲み込んで質問すると、亭主は「ロップだけど?」と目を丸くした。


「正しく言うならロップテールビーで、虫が産んだ卵だね」

「い”!?」


 続く言葉に驚愕し、ユートと共に青ざめる。

 置かれたコップにユートが飛びつくが、それごと持ち上げて俺がまず飲んだ。

 ユートは俺が置いた後に、顔を突っ込んで水を飲み、飲み終えた後に「ウゲェェ……」と言って、舌を伸ばして嗚咽した。


「何だい……知らずに注文したのか……

 主食と言っても年寄りしか食わないから、おかしいなとは思ったんだけどさ」


 それを見守る亭主が言って、空のコップを持って行く。

 それからすぐにお代わりを持って来て、「食べないなら下げるけど?」と、コップを置いた。


「ああ、すみません。お願いします……」


 残すのは悪いと思いはするが、流石に虫は食べたくは無く、非礼を承知でお願いすると、亭主は笑ってロップを持った。


「ていうか何だと思ったんだい?」


 続く質問には名を出さずに説明し、「はぁ、そりゃムメの事だな」と、またまた聞き慣れない言葉を耳にする。

 どうせ虫だろ……と、思った為に、「そうですか」と返して話を切り上げたが、亭主の説明を聞いて居ると、どうやら本当の米のように思えた。

 場所としてはここから北東の、フルンと言う村で育てているようで、収穫量が少ない為に、市場にはあまり出回らないものらしい。


「どうしてもと言うなら村に行くしかないけど、今は正直アレなんだよね。

 世界一下品な祭りとして有名な、ダ・チン祭が近いからさ。

 あまりあの村に近付く事は、オススメ出来ない状態なんだよ。

 ま、逆に見たいって言うなら、無理に引き止めはしないけどさ」


 亭主は最後にそう言って、ロップを持って戻って行った。


「世界一下品な祭りって……」

「見たい見たい! 折角だし行こうよー!」


 それを見送った俺が呟き、興味を持ったユートが騒ぐ。


「確かにここまで来て帰るのも何だな……もののついでに行って見るか?」

「うん! 行って見よー!」


 聞くと、ユートがそう答えたので、その村を訪ねる事に決め、米への期待を新たにした上で、食事を終えて店を後にした。




 フルンの村の付近に着いたのは、それから一日と半後の事だった。

 時刻としては夕方頃で、一キロ程先に村が見える。

 右手には森が。

 左手には川があり、整備されているとは言い難い街道を、話をしながら進んでいた。


 そんな時に、どこからか、女性の悲鳴のようなものが聞こえ、直後に右手の森の中から数人の男女が飛び出して来たのだ。

 女性は一人で、男が三人。

 どうやら女性は逃げて来たようで、街道を通り過ぎて川へと走る。

 一方の男達は不敵に笑いつつ、逃げた女性を歩いて追った。

 三人の内の一人はデカく、おそらく二三〇㎝はあり、それを見た俺はまずは「デカっ!?」と、心の中だけで驚いたものだった。

 続けて見たのは彼らの服装で、長袖と長ズボンを履いているのだが、その上に半袖と短パンを着ると言う、少々妙な格好をしていた。


 しかし、そこは文化の違いで、あちらから見れば妙なのはこちら。

 そこの部分には何も言わず、近付きながらに様子を伺った。


「良いじゃねぇかよ~。結果は分かり切ってるんだ。

 早くなるか遅くなるかの違いなだけだろ~」


 これは大きな男の言葉で、取り巻き達は「うへへ」と笑う。

 言われた女性は「そんなのまだ分からないでしょ!」と、何かを否定しているらしい。


「しゃーねーなぁ……ま、こっちとしても、祭りを前に無駄撃ちも何だ……

 今日はその……き、キスだけで勘弁してやるよ……!」


 直後に大きな男が動き、女性の両肩をがっちり掴む。

 そして、口を尖らせて、嫌がる女性の唇に近付けた。

 正直、成り行きはさっぱりだったが、女性が嫌がっているという事は分かり、それだけ分かれば十分なので、「嫌がってるんじゃないですか?」と、立ち止まって言った。


 返って来た言葉は「あんだおめぇは!」と言うもの。

 取り巻き達が寄って来て、肩を突こうと右手を伸ばす。

 が、それをかわした事で、取り巻きの一人はそのまま転び、もう一人が「テメェ!」と殴り掛かって来たので、左手で掴んで攻撃を受け止めた。


「ヒイッ……何だコイツ……!?」


 攻撃して来た男が下がり、代わりに大きな男が出て来る。

 見た目の年齢は二十くらいで、髪の毛は赤でテンパが酷い。

 体はかなり鍛えているようで、服の上からでも筋肉が見て取れる。


「どうやらヨソモンみてぇだが……今ならまだ許してやるぜ?」

「嫌なんですよね? そうじゃないなら消えますけど」


 指を鳴らして男が言ったが、それを無視して女性に聞いてみる。


「はい! 嫌です!」


 と、女性がはっきりと言った為に、目の前の男が「ナニイ?!」と驚いた。

 気の毒ではあるがそれが事実。嫌がって居るなら助けるしか無い。


「と、とにかくそう言う事らしいですよ。成り行きは良く分かりませんが、ああいう事は合意の上じゃないと……」

「うるせぇ!! ヨソモンが口を出すんじゃねぇよ!」


 諭そうとしたが途中でキレられ、右手を振りかぶって殴り掛かってきた。


「はい死亡フラグキター!」


 と、ユートが飛び立ち、直後に俺が右手を掴む。


「フンっ!!」


 そして、背負い投げの要領で男の体を地面に打ち付けた。


「ガハアッ!?」


 地面の上で男が悶え、それを見た俺が両手を離す。


「ら、ラッドが負けた!?」

「ヒ、ヒィィー!」


 取り巻き達はそれで逃げ、男――

 おそらくラッドと言う人も「お、覚えてろよ!?」と言ってから逃げて行った。


「すごい……あのラッドを簡単に……」


 それは背後に立っていた女性が発した言葉であった。

 改めてみると髪は茶色で、髪型は所謂三つ編みおさげ。

 年齢は十六から十七位と、俺と同世代の女の子だと思われる。


「……何だか良く分かりませんが、今後は気を付けて下さいね」


 かと言っていきなりのタメ口も何なので、丁寧に言った上で体を動かす。


「ま、待って下さい!」


 すると、女性がそう言ったので、動きを止めて顔を向けた。


「助けて下さい! お願いします!」

「まだ何か居るの? それとも怪我した?」


 これはユートで、そう言いながら、俺の左肩に再び戻った。

 周囲には誰も居ない上に、怪我もしていないようなので、俺は僅かに顔を顰めた。


「助けるって……何をですか……?」

「えーと……あの……ここでは何なので、わたしについて来ていただけますか……?」


 それには「はぁ……」と言葉を返し、歩き出した女性の後ろに続く。


「あ、わたしユラと言います! 助けてくれてありがとうございました!」


 が、女性、ユラは立ち止まり、振り向いた直後に深くお辞儀し、俺が何かを返すよりも早く、正面に向き直って歩き出した。

 向かった場所は森の中で、「こっちです」と、笑ってユラが進む。


「なんか急速に怪しくなって来た……」


 と言う、ユートに心の中で同意し、警戒をしながら後ろに続いた。

 方向的には村は左手。向かうとしたらそちらだと思うからだ。


 時間にするなら三分程か、視界が拓けてテントが見える。

 そして、そこには村宛らの、沢山の女性達が住んで居たのである。


「ヤダー男じゃない!?!」

「何やってんのよユラ! そいつ男でしょ!?」


 女性達が騒ぎ出し、作業を止めて俺を見て来る。


「あ、ラッドから助けて貰って……それに多分、旅の人だから」


 と、ユラが事情を説明すると、女性達は徐々に静かになった。

 ハッキリ言って状況が分からない。

 なぜ、こんな所に女性達が居るのか。


「すみません、こっちです」


 困惑しているとユラは言って、一つのテントの中に消えた。


「分かった! これが噂のアマゾネスの村だ!

 ヒジリのコダネを狙ってるんだよ!」

「お前……それ分かって言ってるか……?」


 それにはユートが「いーえ?」と返し、むしろそこには安心をする。

 そして、女性達の視線に耐えながら、ユラが消えたテントに向かった。



薄い本が出来上がりますね!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ