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広報大臣はじめました

章のタイトルやらサブタイトルを多少ながら変更しました。

「国を作る為に必要な物は、何を置いてもまず人ですが、人と言う物は理念や利益が一致しなければ集まって来ません。

 ここ、ヘール諸島はお世辞にも人が住みやすいとは言えない地域です。

 よって、ここに国を作るなら、相当の理念か利益が無ければ、人は集まって来ないかと考えます。

 今日、この時に開催される「第一回、新しい国を作ろう会議」では、この辺りの事をお考えくださいますよう、参加者の皆様にはお願い申し上げます」


 第一回、新しい国を作ろう会議は、いつもの食堂で唐突に行われた。

 朝食が終わって一息をついた頃、デオスが急に立ち上がり、突然に会議を開始したのだ。


「良いねぇ! それらしくなってきやがった!」


 事前に知っていたのだろうダナヒが喜び、驚きもせずに拍手を送る。

 それを見た俺とナエミも一応、心の篭らない拍手を送った。


「それでは早速ヒジリ君。キミの意見を聞かせてください」

「は!? いきなり俺ですか!?」


 デオスが言って席につき、指された俺が目を大きくする。

 実際問題話の半分は「大丈夫か……?」と思っていた為に頭に入って無い。

 それなのに果たして何を言うのか。

 

「キョーレツな意見を期待してますっ!!」


 困っていると、正座をしたユートが輝く瞳で俺を見て来た。


「いや、そんな、いきなり言われても……」


 言いながらに立ち、時間を稼ぐと、メイドが現れて後片付けを始める。

 それには「すみません……」と、礼を言って、「うーん……」と唸って更に考えた。

 勿論、それは意見では無く、どう言って聞くかの切り出し方で、「何を言えば良いんですかね?」と、素直に聞くのが一番かと思う。


「ブー! 時間切れー!」

「そんなのあるのか……」


 ユートが言って俺が言う。まるでクイズだ。しかもシビア。

 沈黙を考えていると取ったのだろうか、ダナヒが「次だ」と言った事で、俺の順番は後回しとなる。


「まぁ、いきなりじゃキチィわな」


 一応のフォローを入れてくれたので「すみません……」と謝って席につく。


「ではナエミさん」

「え!? わたしもですか!?」


 次に立たされたのは俺の右正面。居候の立場のナエミであった。

 困惑しながら立ち上がり、「えーと……」と言いつつ時間を稼ぐ。

 ナエミも聞いて居なかったんだな……と、同類にしたがナエミは違った。


「……あの、やっぱりお店とか、娯楽がもっとあれば良いかなと思います。

 その、大人の娯楽じゃなくて、子供とか、女の子とかが喜ぶもので」


 聞いていたのだ。しっかりと。俺とはそこら辺がやはり違う。

 高校もツーランクは上の学校だし、小さい頃には俺と一緒にうん〇を突いていたとは思えない。


「おぉぉーー……」


 感心した様で俺が言う。ユートも隣で同様の声を出している。


「なるほどな……」

「面白い意見ですね」


 ダナヒとデオスにも好感触で、意見は実際に紙にも書かれ、それを見たナエミは「アハハ……」と笑って、頭に手を当てて腰を下ろした。


「名前はやっぱナエミーランドか?」

「語呂的には良いですね」


 しかし、二人のその意見には「ヤメテクダサイ!」とすぐに突っ込む。

 俺だって「ヒジリーランド」なんて嫌だし、突っ込みたい気持ちは良く分かる。


「えー、では私の意見ですね」


 次に立ったのはデオスであった。ナエミーランドはフルシカトである。

 そこにはナエミは不満気だったが、言っても無駄だと分かったようだ。

 そんな俺達に一切構わず、デオスが自分の意見を話し出す。


「現在、大陸の北部では、ヨゼル王国が侵略戦争を起こし、諸国の反感を買っています。

 実際に滅ぼされた国もあり、支配下にある旧国民には思う所もある事でしょう。

 そこで、私は反ヨゼル王国を、新国家の掲げる最大目標とする事を提案したいと思います。

 当然、これにはヨゼル王国から目をつけられると言うリスクがありますが、反面で、王国に敵対する者を味方に取り込めるというメリットもあります。

 人が集まり戦力も高まる。挙句に軍需による活性化で、新国家の財政も潤う……かもしれません」

「かもかよ!」


 最後の部分が曖昧なので、そこにはダナヒがソッコーで突っ込んだ。

 突っ込まれたデオスは「私は神様ではありませんから」と、一応の言い訳を展開している。


「(まぁでも、割と分かる話だな……俺だって国が滅びた直後にそんな話を聞いて居たら、間違いなくそこを目指したと思うし……)」


 俺個人としてはそう思ったが、心の中だけで支持しておいた。

 お金が関わる事柄なので、子供が口出しをするべきでは無い。

 一応、自分の立場を理解して、遠慮をした上での行動だった。


「ま、それもアリかもしれねぇな……分かりやすいっちゃ分かりやすいしな」


 ダナヒも近い事を思ったのだろう。

 突っ込みこそしたがそう言って、デオスと入れ替わるようにして立ち上がる。

 そして、国王たる自分の意見を俺達に向かって言い放つのだ。


「俺様の意見はたったのひとつ!「楽しい事をする!」これだけだ!

 何をするにもつまんねぇんじゃ、一度の人生勿体ねえ!

 人生を楽しむ! こいつが俺様が国に掲げるスローガンよ!」

「なんとも曖昧な意見ですが……」


 ダナヒが言ってデオスが笑う。

 正直、俺もそう思い、声を殺して苦笑いをしたが、物事の根本として大事な事なので、反対意見は出さなかった。


「てことでラスト、ヒジリの番だぜ?」


 そこで俺へと順番が戻る。

 もう大丈夫だろ? と、言わんばかりの顔だ。

 聞いているばかりで考えて無かったが、仕方が無しにまずは立った。


「アシガシビレタ……」


 これはユートで、正座が限界に来て、横倒れに転がって悶絶している。

 その様を若干、呆れて見ながら、出て来る言葉を適当に紡いだ。


「……俺はその、前に一度、自分の居場所を失いました。

 その時にもし……デオスさんの言ったように、反ヨゼル王国を掲げる国があれば、喜んでそこに向かったと思います。

 だから、何て言うんですかね……

 ここには島が沢山あるし……そういう人達の住む場所を無料で作ると言うのはどうでしょう?

 島ごとに人種や国を分ければ、変な諍いも無いでしょうし、うまく行けば島ごとに違った文化が出来るかもしれません。

 って、なんかバカな事言ってますね……」


 まさに適当。勢いすら無い。

 もう一度言え、と言われても俺はきっと違う事を言うだろう。

 それ程に自信の無い物だったが。


「いや、割と」

「ありじゃねーか?」


 デオスとダナヒはそう言って、興味がありそうな顔を見せたのだ。


「確かに島は腐る程ありますし、その内の九割は無人島です。

 ここを開拓できると言うなら、新国家にとってはプラスでしか無い。

 ……私は押しますよ。ヒジリ君の意見を」

「だが、その為には金が要るな……そこはまた別の解決法を見つけるしかねーって話だが」


 デオスが言ってダナヒが続ける。


「いや、人が集まれば、金と言うものもいずれ生まれます。

 ですからまずはそういう事をやっていると言う噂を世間に向けて発信する必要があると思います」

「集まらなかったらどうすんだ? 流石に無駄飯は食わせられねーぜ?」


 何だか勝手にヒートアップし始めた。

「ならどうすんだ!」とか言って机を叩くので、俺とナエミは肩をすくませる。

 自分の意見が引き金なので、俺は何だか肩身が狭く、一応「あの……」とか、「ちょっと……」とか言ったが、二人の論争は止まらなかった。


「……じゃあそれで行くか」

「ですね。まずはそこから行きましょう」


 二人はその後も何十分も話し、ようやく結論が出たのは二時間後。

 ナエミもユートもうつ伏して寝ており、俺も半分は寝ていた頃だった。


「そういう訳でよろしくなヒジリ!」

「え!? な、何をですか!?」


 ダナヒに言われ、戸惑う俺を見て、二人は「またまたー」等と言って、冗談と受け取って笑っていた。




 それから二日後。

 俺とユートとナエミは島から移動して、ヘール諸島の沿岸沿いの小さな村にやってきていた。


 その目的は所謂宣伝。

 海王ダナヒが国を作るので、興味がある人は来て下さいね!

 と言う、宣伝を各地に広げる為に、広報大臣とやらに任命されたのだ。

 現在、俺は着ぐるみを着て、言葉を発さずアピールしており、一方のナエミもミニスカートに、胸を押し上げる際どい服で、広報活動を頑張っている。


 カモメがベースの着ぐるみは、名前を「ヘールくん」というらしく、船長服に船長帽子、右目には剣の切り傷という風に、ゆるキャラにしては相当渋い。

 挙句に腰のサーベルは、なぜかどうして本物なので、近付いてくる子供達の行動に注意も欠かせなかった。

 これを考えたのはダナヒとデオスで、二人は揃って「ヘールくんマジ良いわ……」と、感動した様で俺達を見送った。


「ちなみに決め技はコレだからな?」


 と、中指を突き立てる行為を目にして、「この人達正気か……」と俺は思うのだ。

 所謂ファッ〇ユーを意味するそれを決め技にしているゆるキャラ等居るか。

 そう言おうとしたが、「良いから良いから」と押し切られ、結果として俺達はここに居る。

 流石に実行は出来ない為に、適当に演じて乗り切っているが、集まって来た子供がたまに、


「決め技は? 決め技は無いの?」


 と、まさかの決め技を要求してくるので、その度に曖昧な動きを披露し、「ビミョー……」と僅かな不満を買っていた。


「ヘールくんつまんねぇな……」

「ってか顔が悪人ヅラだよね?」


 不満が蓄積し、子供達が去って行く。有名なランドの鼠の動きを真似たが、どうやらお気に召さなかったようだ。

 見れば、周囲にはもう誰も居ない。

 野良猫が畑で気張っているだけだ。

 

「あ……じゃあ次の村、行く? 丁度、人も居なくなったし」


 それを機にしてナエミが言ってきたので、着ぐるみの中から「ああ」と答えた。

 この村はもう駄目。口にはしないが、ナエミが態度でそう言って居たからだ。


「ねーねー、どうして決め技しないの? ダナヒさんが教えてくれたじゃん?」


 これはユートで、前方を行くナエミに聞こえないように距離を取る。

 或いはもう気付いているかもしれないが、独り言と取られるのは嫌だからである。


「いや、あれは侮辱行為なんだよ。って、でもそうか、こっちの世界ではそうだと決まった訳じゃないのか……

 中指を立てるってどういう意味なんだ?」


 その上で聞くと、ユートは「えっ……」と言い、「知らないからヒジリに聞いたんだけど……」と、当然の答えを返して来たのだ。

 侮辱行為と分かって居れば、確かにそもそも聞いて来ないだろう。


「ヒジリが居た世界ではどういう意味なの?」

「あー……だから、侮辱行為。なんでそうなのかは知らないけどね」


 逆に聞かれ、そう答える。

 確か「お前にブチ込んでやる!」という意味の、欧米風の侮辱だと思ったが、それを説明する訳には行かないので、ユートにはそう答えて置いた。


「ふーん……でも、もしかしたらこっちじゃ違うかもしれないし、今度の村ではやってみたら? 意外に大ウケするかもしれないよ?」

「いやいや、リスクが大きすぎるでしょ……同じ意味だったらソッコーで追放だよ」


 もしも笑顔ならそれはそれで怖い。

 単純に決め技と取られたにしても、意味を知っているだけに俺個人が怖い。

 その言葉にはユートは「うーん……」と言い、前方のナエミの横へと飛んだ。

 それから何か色々聞いて、「やっぱり駄目だった」と言って戻り、ナエミにとってユートの存在が、無いものという事が改めて分かるのだ。


「(ナエミは兎も角ダナヒさんは何でなんだろう……

 あの人もユートが見えて無いし、そもそも相棒妖精が居ないんだよな……

 Pさんだったら教えてくれるかな……? ってか、真実を進めろとか言われるだけか……)」


 そう考えて一人で笑う。理由が分からないのは謎であるが。

 着ぐるみの中での事だったので、ユートにもそれは見えておらず、おそらく肩あたりが揺れたのだろう、「疲れた?」と、心配して声をかけてきた。


「いや、大丈夫。しばらく無視するぞ」


 それに答えて歩を早め、ナエミに追い付いて右に立つ。


「どれくらいかかる?」

「頭くらい取れば良いのに……」


 時間を聞くと、ナエミはそう言い、着ぐるみの頭を見ながら笑った。


「子供の夢を壊すからな。こういう事は徹底しないと。

 あの有名なランドのマスコットも、休憩室以外じゃ脱がないって話だろ?」


 そう言うと、ナエミは更に笑って、「らしいね」とその後に言葉を加えた。

 俺の方はネットの知識だが、ナエミの方はどうなのだろう。

 まぁ、あまり関係無いので、「どこで知った?」とは聞かなかった。


「時間は大体一時間位かな? 村って言うより集落みたい。

 さっきの村に木材や、山の幸を売りに来てるんだって」


 遅れた答えに「そうか」と言うと、ナエミは「ありがたいよね」と顔を戻す。


「何が?」


 と聞くと、「心遣い」と言い、俺を更に困惑させた。


「居候でしかないわたし達にこんな仕事をさせてくれるってコト。

 ご飯でも住む所でも、何もしないんじゃ、居づらいじゃない?

 でも、何か仕事をしたなら、そんな気持ちは少しは薄れる。

 きっと、周りにもそう映るだろうし、むしろそれが狙いなのかも?」

「あー……」


 言われてみると確かにそうだ。何かをしなければタダ飯喰らいだ。

 仮にも王からの命令なのだから、周りには遊びとは映らないだろう。

 最悪でもお使い位には受け取られ、そうなれば俺達の立場と言う物も、タダ飯喰らいでは無くなる訳だ。


「だから、出来る事を一生懸命頑張ろう。こんな格好は恥ずかしいけど、仕事だと思えばなんて事は無いし」


 ナエミは殆ど太ももを出している。少し屈めば下着が見える程に。

 俺が知る限りは初めての事で、着ぐるみの中からガン見をした後に、ナエミの言葉に「そうだな」と同意した。

 そういう事ならヘールくんを貫こう。何しろヘール諸島のゆるキャラなのだから。

 イメージを壊すような事をしてはいけない。この時俺は密かに決意した。


 一時間後には目的地に着き、俺達は集落の広場に辿り着く。

 そして、そこで新国家建設の宣伝を行って見たのである。


「はっ、新国家ねぇ……」

「どうせ何も変わりゃあせんよ……そんな事より仕事じゃ仕事……」


 住民達はそう言って、宣伝を殆ど素通りして行き、それを見たナエミが「おかしいな……」と言って、俺を少々疑問させた。


「どうした?」


 周囲に誰も居ない事を見て、小さな声で俺が聞く。


「あ、うん」


 ナエミはまずはそう言って、振り向いた上で言葉を続けた。


「なんか、子供が居ないなぁって思って。それに女の人も仕事をしてるし、余裕が無いって言うのかな。切羽詰まってる? って言った方が分かる?」

「ああ……」


 答えた後に視線を外し、行き交う住民の表情を見る。

 確かに余裕が無いと言うか、切羽詰まっている感じに見受けられ、普通に歩けば良い所をなぜかの早足で移動をしていた。

 働かないとマズイ事になる、と、言わんばかりの脅迫的なものだ。


「(ちょっと、子供が居るかどうか見て来てくれ)」

「らじゃー!」


 不思議に思った俺が言い、聞いたユートが飛んで行く。

 しばらくしてから戻ったユートは、


「子供もヤギもおりません!」


 と、なぜかの敬礼姿勢で言って、俺達の疑問を深刻にさせるのだ。

 ヤギは兎も角子供はおかしい。超が付くほどの田舎と言えるが、一人も居ないなんて事がありえるだろうか。


「なんかおかしいよ。聞いてみようよ?」


 伝達するとナエミはそう言い、水汲みをしている女性に向かって行った。

 男の俺より行動的だが、今はそれがありがたい。

 ヘールくんの姿で声をかける事は、イメージを壊すには十分だからだ。


「私には何とも……どうしてもと言うなら長に聞いて下さい……」


 しかし、女性はそう言って、答えを集落の長に委ねた。

 その為、俺達は長が住んでいる家に足を向ける事になったのである。


ミ〇キーは股間を蹴られても喋らない。プロっすわホンマ…

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