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ポピュラリティゲーム  ~神々と人~  作者: 薔薇ハウス
十二章 そして、その星は終末に向かう
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アンティミノスのしもべの成り立ち

「やぁ、お疲れ様。一ヵ月ぶりだね。ヒジリ君」


 ヘール諸島へ帰る船の中で、俺はひと月ぶりの審判の日を迎えた。

 場所は裏庭の花棚の下で、Pさんはすでに腰かけて居る。

 しかし、体は俺には向けず、裏庭に広がる花壇を見ていた。


「ど、どうも……」


 まずは一言。ぎこちなくそう言う。理由は先月のしこりがあるから。

 Pさんに対する怒り自体は、正直な所は殆ど消えている。

 俺が単純で、人を信じやすく、その上でPさんが謝ってくれた事がその原因と言って良い。

 だが、そんな俺であっても、以前のように無条件に信頼するのはどうかと思い、それが表面に出てしまった事で、返す反応が微妙になったのだ。


「あんな所にアガミカミが居たとはね。しかも契約前の力を使うなんて、僕も正直ちょっと驚いたよ」

「あ、アガミ……カミ?」


 唐突に、Pさんが言い、俺の方に体を向ける。その上で右手で「どうぞ」と言われて、Pさんの正面に腰を下ろす。


「なんですかそれ? アガミカミって?」


 同じ質問をするのは嫌なので、言葉を若干足して聞く。すると、Pさんは「うーん」と唸り、少しの間を悩んで見せた。


「ま、大丈夫かな」


 とりあえずの一言。その後に続ける。


「ヒジリ君が戦ったしもべの名前さ。破壊神アンティミノスと契約する前の名前だね。

 元は確か指導の神だったかな……? その頃に使っていた能力が、ヒジリ君達を苦しめた洗脳と言う訳さ」

「あ、はぁ……そうですか……」


 聞かされた所で良く分からない。そもそも「契約」とは一体何か。

 それに「元は」とか引っかかる事も言っているし、俺の興味は急速に深まる。

 だが、多分、聞いた所でいつものように流されるだろう。


「契約とか元ってどういう意味ですか?」


 そんな気持ちで一応聞くと。


「そうだね。

 この際アンティミノスの事を、ヒジリ君に知って置いて貰って良いかもしれない」

「えっ!?」


 まさかの展開で受け入れて貰え、Pさんの説明が始まるのである。


「まずはそうだなぁ……僕が神、と呼ばれる存在という事は、ヒジリ君ももう察していると思う。

 じゃあ聞くけど、神っていう存在は、そもそも一体何だと思う?」


 いきなりの質問だ。これに間違うと話を打ち切られてしまうのだろうか。

 だが、俺は歴史にも、神学なんかにも詳しくは無い。

 元々は槍術にちょっとだけ長けた、基本ムッツリな高校生なのだ。


「えーと……やっぱり人間を見守ってくれているとか、願いを聞いてくれる存在ですかね?」


 結果としての返答はそれ。Pさんは笑顔で「うん」と言う。


「残念。それは大外れだよ。神なんて存在は元々は居なかった。

 君達人間は勝手に生まれて、勝手に僕達を創造したのさ。

 信仰の対象としての神。物事とうまく折り合いをつける為の神。

 まぁ、色々種類はあるけど、僕達は君達人間によって、抽象的に生み出された存在なんだよ」

「あ、そ、そうなんですか……」


 何やら難しい事を言い出した気がする。哲学とかそういうレベルの話か。

 聞くんじゃなかったか……? と、薄ら思いつつ、Pさんの続ける言葉を聞いた。


「そして、僕達は唐突に生まれ、やがては意思と力を持った。

「存在を信じて貰える」と言う事が、僕達の力の源なんだけど、やっぱり望みや夢が叶わないと、人間は神を信じなくなってくる。

 このまま消えたくない。力が欲しい。そう思った神の一部の者が、アンティミノスと契約をした。

 その結果として生まれた者が、アンティミノスのしもべという訳さ」

「なるほど……」


 全てでは無いが一部は分かる。要するに一匹狼をやめ、組織に入ったと取れば良いのだろう。

 文字通り、ブラックな、極めて劣悪な企業であるが。

 しかし、ここまで話を聞くと、その、アンティミノスの正体とやらも気になる。


「その親玉のアンティミノスですけど、そいつは一体どういう奴なんですか?」

「ああ、彼ね。相当やんちゃだよ」

「やんちゃですか……」


 思わず苦笑する。どんなレベルで……? と、言葉とは裏腹な底知れ無さを感じるから。


「さっきも言ったけど神の力は、基本的には「信仰」による。

 信仰する者が多ければ多い程、僕達の力は強くなる。

 でも、そんな面倒な事をしたくないと考えたのが彼だったんだ」


 具体的にはどういう事か。緊張の為に息を飲む。


「星を破壊して生命を吸い取る。最低限の力でまた創り、人が増えてきた所で更に破壊する。

 自分の星だけに留まらず、人の星にまで手を出す奴でさ。僕の腕がこうなったのも、彼と遊んだ代償って訳」


 そう言ってPさんは左腕を見せて来る。以前に見たようなノイズが走り、Pさんは若干右目を細めた。

 遊んだ。と言うがおそらくは、戦って撃退したのだと思う。

 そこには自らの打算――つまり、縄張りを守ると言う物があるのかもしれないが、俺は単純に「良い神様だ」と、Pさんの事をちょっとだけ見直した。


「と言う訳で一通りは話し終えたかな? 他に何か聞きたい事は?」

「あ! えーと……待って下さい!」


 この際だからと考えるが、聞きたい事が瞬時に出無い。


「ひとつ前の山みたいな奴は、一体どういう奴だったんですか?」

「ああ、彼はコルトラスだよ。元々は確か山火事の神だったかな……?

 被害があまり拡大しないように、色々と頑張って居たんだけどね」


 思いついた事を聞いてみると、Pさんは普通に応えてくれた。

 山火事の神……まぁ、人間にして見れば、発生する事自体が嫌な事で、そこに神様が居るだなんて、殆どの人は思わないだろう。

 やっかまれ、やがて廃れた理由は嫌でも分かると言う物である。


「あと、この星が滅びる理由って言うのは、やっぱりそいつが関係してるんですか?」


 当たり前のように質問すると、Pさんは「えっ?」と顔を顰めた。

 まずったな……と、すぐに思う。

 これはイサーベールに聞いた事で、他の誰からも聞かされていない。

 何でその事を? と、疑われてしまえば、嘘をつくか正直に言うか、どちらかしか選択は無くなってしまう。


「うーん……まぁ関連性は低いかな。

 彼には敵が多いからね。この星にまでは簡単に来れないよ。

 とか言いながら、しもべの方は、何体か逃してしまった訳だけど」


 だが、Pさんが笑った事で、気付かなかったのだと俺は判断。

 話をさっさと誤魔化す為に、今月の結果をPさんに聞いた。


「ああ、今月は三百五十一Pだよ。前回残した百七十六Pと併せて、五百二十七Pになるかな」

「どぅわっ……!」


 心なし、全身の毛が伸びた気がする。それ程に俺は衝撃を感じた。

 アンティミノスのしもべおいしいわ……とまでは流石に言わないが、アレと関わる前と比べてその差は実に歴然である。


「内容的には殆どがアレだけど、際どい格好のお姫様をオカズにしなかった事が高評価だったね」

「あ、そ、そうですか……」


 良かった……と言って良いのだろうか。それには微妙な反応をする。

 単純に、暇が無かったからなのだが、それを敢えて言う事は無いだろう。


「はい。じゃあメニュー。と言ってももう全部取っちゃうでしょ?」

「そうですね。必要なPによりますけど」


 そう言って受け取り、メニューを開く。

 先月に全てを獲得した為に、メニューは綺麗に一新されていた。


 魔法七 弱点看破 六十P

 真実七 相棒妖精の存在意義 六十四P

 特能八 人神化じんしんか 百二十八P


 必要なポイントが結構高い。特に得能の八は別格だ。

 意味も分からずで質問すると、Pさんはまとめて教えてくれる。


「弱点看破はそのままだね。魔法を使っている間だけ、相手の弱点が色で分かる。

 赤が最大の弱点で、黄色がそこそこ弱い所。青は普通の状態と言うか、特に異常がない所だね。

 単純に、疲労度にも反映するから、どこに疲労が蓄積しているのかを、確認する為にも使えるのかもしれないね」

「なるほど……」


 元の世界で言う所のサーモグラフィーみたいな物だろうか。用途が随分違う物の、そういう物だと理解する。


「で、得能八の人神化だけど、これは簡単に言っちゃうと、ヒジリ君の事を好きな人が多ければ多い程、能力が上乗せされるって言う得能だ。

 レナスちゃんの強さが滅茶苦茶なのも、これがかなり影響して居るね」


 一軍を動かせる立場の人だ。確かにそれは相当だろう。

 俺なんかせいぜいダナヒと師匠……それにギース位しかいないのだから。

 カレルは多分、嫌われて居ないと思うが、好かれていると言うのは微妙だし、ギースの妹のニースにしても、「俺の事好きだし」と思うのは慢心だ。

 ……ともあれ、レナスの話に戻るが。

 本来の強さにそんなものが上乗せされて居たなら、俺が勝てる訳が無かったという事で、これを取得して初めて対等……とまでは言わないが、スタート地点は切れる訳だ。

 追い付ける日があるかは謎だが、取って置かなければ差は付く一方だろう。


「真実七はそのままですね。分かりました。全部取ります」

「りょーうかい」


 メニューを閉じてPさんに返す。そこからいつもの行が始まり(この話は他の人には~と言うアレ)、真実七が話される。

 内容としては無人島でレナスに教えて貰ったような物だが、Pさんは相棒妖精の寿命の事には触れなかった。

 しかしながらPさんは親切でその後に言葉を続け、その事によって俺はレナスに聞かされていなかった事を知った。

 と言っても、大した事ではなくて。

 妖精を出さずに消して居れば、映像及び音声は「ぼんやり」としか伝わって来ないと言う事。

 そしてそれは、妖精を持って居ないマジェスティにも、反映されると言う事だった。

 つまり、ダナヒはこの状態で、ずっと「ぼんやり」を見せて来た訳だ。

 ポイントは大丈夫か……と俺が心配する理由も、おそらく分かって貰えると思う。


「いやー。今月は沢山話したね。先月が先月だったから、口をきいてくれないかと思ってたんだけど」

「いやいや……だって謝ってくれたじゃないですか。俺もいつまでも根に持ちませんよ。……頑張って居ればいつか帰れるんですから」


 Pさんの言葉に俺が答える。聞いたPさんは少し間を置いて、小さな声で「そうだね」と呟いた。


「来月はまた川下りをしよう。なんだか風景が変わって居る気がするんだ」

「分かりました。楽しみにしてます」

「じゃあまた来月。今月も頑張って」


 メニューを消してPさんが手を振る。先月と違って気持ち良い別れだ。

 流石に手は振り返さなかったが、俺は微笑んでPさんを見送り。


「よし、今月は頑張ろう!」


 気合を入れてそう言って、自分の頬をパチンと叩いた。



少し前に「あと二十話位で終わると思います」とか言っちゃいましたが、意外にその……長引きそうで、適当な事を言ってすみませんでしたぁぁ!(土下座)

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