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ポピュラリティゲーム  ~神々と人~  作者: 薔薇ハウス
十一章 明かされて行く謎
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救世主の誕生

百話記念に頂きました! 言われるまで完全に忘れてましたが(笑)

絵師様はいつものゐうらさんです!

ありがとうございましたー!

挿絵(By みてみん)

 瞼の上に温かみを感じ、俺はゆっくりと右目を開けた。

 眩しいが心地良い太陽の光。どうやら朝になったようだ。

 左目も開けて天井を見る。それから顔を左に向けると、どこかの部屋に居る事が分かった。

 俺は現在ベッドで寝ている。固く、粗末なベッドであるが、孤児院のそれに似て居て心地良く、右腕を両目の上へと乗せる。


 もう一眠りしようと思った訳じゃ無く、あれからの事を思い出す為だ。

 あれから――アンティミノスのしもべを倒して、脱力感を覚えて倒れてからの事だが……


「駄目だ……思い出せないな」


 結果としてはそこに落ち着く。と言う事は、やはり意識を失い、誰かに運んで貰った結果、ここに居ると言う事なのだろう。

 知りたい事は色々あるが、とりあえずの形でため息を吐く。

 兎にも角にも何とかなった。と言う、成し遂げた気持ちが過半数だが、もう少しうまくやれたんじゃないかと、反省する部分も多少はあった。

 今回の事件は要するに、アンティミノスのしもべが居たから起きた。

 つまり、奴さえ何とかすれば、被害はもっと減らせたはずなのだ。

 それが最初から分かって居れば、礼拝堂でも先手が打てた。そうすれば死んだ兵士の中にも生きられた者も居た事だろう。


「過ぎたる事で悩むに及ばず。次に生かせば其で良し、か……」


 勿論、それは俺の言葉じゃない。爺ちゃんがたまーに言って居た言葉だ。

 こういう時だけ乗っかるのも何だが、人間とは基本勝手な生き物。

 悩んで居ても仕方が無いと思い、俺は調子良くその言葉に乗っかった。

 その時、部屋の扉が開けられる。


「おぉー。おはよう。気分はどうじゃね?」

「おはー! ヒジリー! 牛乳飲むー?」


 入って来たのは師匠とユートで、後ろにはギースの姿も見える。


「き、昨日の事だけどさ……その、何だ……迷惑かけたよな……悪かった」


 ボソリとそう言って、二人に続く。俺の答えは「いや」と言う物で、その後に「ギースのお蔭で勝てたようなものだし」と続けて、お互いの顔に苦笑いを浮かべた。


「さて、早速じゃが動く事は出来るかね? 皇帝陛下が会いたいそうなんじゃが」

「あ、はい。大丈夫です。やっぱりあの女の人ですか?」


 答えた後に聞いてみる。師匠が「うむ」と答えた事で、やっぱりそうだったのかと俺は理解した。


「先に言っとくとあのカッコーじゃないよ? 残念? ねぇ、ヒジリ残念?」

「えっ、マジで!? ……じゃなくて! そんな事お前にはどうだって良いだろ!?」

「フヒョーィ! ヒジリエッロエロー!」


 ユートの言葉に本音を漏らすが、その後に慌てて誤魔化して置く。

 思えば相当にエロイ格好だったが、戦闘中だった為にあまり見て居ない。

 師匠に「うむ」と言われた時には、薄らと格好を思い出したが、どうやらそれは彼女の意思で着て居た物では無かったようだ。

 そこには若干の惜しさを感じつつ、ベッドの中から左足を出す。

 それから全員で部屋を後にして、皇帝が待つと言う部屋に向かった。


 場所はやはり玉座の間であり、今日は二人の兵士が立っていた。

「救世主殿に感謝致します!」等と言われ、少し反応に困ってしまったが、軽く会釈をした後に、開けられた扉の先に向かった。

 目に入る物は青い絨毯と、昨日には無かった黄色の垂れ幕。

 絨毯は床に、垂れ幕は壁にあり、垂れ幕には国を象徴すると思われる、横たわった竜が描かれていた。

 絨毯の左右には五人ずつの兵士が居て、近付く度に先のアレ――

 即ち「救世主殿に感謝致します!」と言う物をそれぞれの言葉で俺達に向けて来る。

 そりゃあ決して嫌では無いが、あまりしつこく言われてしまうと、聞かされる方はたまったモノじゃない。


 そしてようやく玉座の前、つまり、先日の女性の前に着く。すると、女性は玉座から立ち上がり。


「救世主様に感謝致します」


 先日よりもエロイ格好。

 具体的には「V字」の金の水着に、白いマントを羽織っていると言う、青少年には悩殺的すぎる格好で俺達に頭を下げてきたのだ。

 確かに、確かに昨日とは違うが、これはこれで破壊力がありすぎる!

 思わず俺は腰を引き、顔を逸らして見ないようにする。

 見たいけど、仮にも相手は皇帝。あまりに「失礼なコト」になると、それこそ去勢もされかねないだろう。


「なんか凄い格好してんな……それってあんたの趣味かなんか?」


 凄いよギース!? 色々な意味で!

 そう思って見ずに答えを待つと、女性はまずは「いえ」と言う。


「歴代の皇帝、女性に限りですが、その格好が「こう」と決まっている物で、作法に則って着ているだけです。

 ……何か問題があるのでしょうか?」


 それから不思議そうな口調で言うので、ギースは「はぁー」と驚くのである。

 問題は……まぁ、見た目だろうか。普通に考えれば痴女に近い。

 だが、それが決まりであるなら、作法であれば仕方なく、彼女達の文化に理解を示して、「問題は無いです」と女性に返すのだ。

 ……内心ではそれはもう、「うっひょぉ……!」と密かに喜びながら。


「それでは救世主様。こちらにどうぞ」

「は?」


 直後の言葉に疑問する。女性が玉座を空けたからだ。しかし、視線はついつい体に。

 これは悲しいかな男のサガだ……


「救世主様を立たせたままで、わたくしが玉座につくと言うのは……

 ですのでどうぞ、お座り下さい。兵の手前、示しもありますので」


 なるほどそういう物らしい。救世主と言えば師匠達もそうだが、玉座は一つで少々迷う。

 すると、師匠が背中を叩き、ギースが「イケよ」と短く言って来る。

 こんな事で揉めても何なので、軽く頷いてから玉座についた。


「うっ……」


 その後に女性が左に座る。正確に言うなら玉座に手を置き、彼女自身は床の上だ。

 傍から見るなら俺が王で、彼女の立場は例えるのなら、征服された国の王女が、征服者にかしずいて居る図と言えば分かり易いか。

 兵士達、即ち、国民達の手前でこれはどうなのかと俺は焦るが、女性はそれに構う事無く、冷静な顔で「救世主様」と言って来た。


「ほへ?!」


 焦って返すとにこりと笑われる。改めて見ると凄い美人で、その上で凄いスタイルと来て居れば、目のやり場には当然困る。

 素材用として転用されたら、「童貞乙♡」と言うセリフが付きそうな笑顔だが、実際には彼女はそんな事は言わず、唐突に名前を教えてくれた。

 それによると彼女の名前は。


「ミュリペー・アジラエフ・ヴォートワーツ・エルトゴールト九世」


 と言うらしく、困惑した顔で「えーと……」と返すと、「ミュリペーと呼んで下さい」とまずは言った。

 そしてその後に、俺達が知りたかった情報である、ここに至る経緯のような物を、最初からゆっくりと話し出したのだ。


 それによると「卵のようなモノ」

 つまり、アンティミノスのしもべの卵なのだが、これが郊外に落下した所から一連の事件は始まりを告げる。


「刃を通さぬ黒きモノ、我らの国にやがて現る。

 そのモノ現れし時、我らの行く末が、喜ばしい物に大きく変わる。

 崇めよ。そして敬服せよ。神の如くにそのモノを扱え」


 これが、ミュリペーの国に伝わる昔からの伝承で、卵をそうだと信じた為に王宮に運び入れて礼拝堂に保管。

 やがて孵ったアンティミノスのしもべに洗脳されてしまった事で、今回の事件に繋がったらしかった。

 確かに奴らの体は固い。

 刃どころか大砲の弾ですらかすり傷一つ付けられない位だ。

 その上で卵の色は黒。

 昔からの伝承があったと言うなら、都合の良いように取ったと言う事も仕方が無いと言えるのだろう。


 ちなみにだが、戦争を起こした理由も、操っていた理由もミュリペーには分からず、そこは現状、想像する事でしか、アンティミノスのしもべの真意は分からない。

 だが、ミュリペーを操って「連れて行け」と言っていた所から考えると、この島だけでなく他の場所でも洗脳がしたかったのでは無いかと言う推測は出来る。

 本人――つまりアンティミノスのしもべが滅びた以上は推測でしかないが。


「なるほど……そういう事だったんですか……先の戦争も操られた結果、と言う事なら、ダナヒさ……いや、海王陛下も、理解を示してくれると思います。

 今後はもし良かったら、ヘール諸島との交友も考えて下さるとありがたいです」


 全てを聞いた俺が言うと、ミュリペーはすぐに「勿論です」と言った。


「あなた様こそが黒きモノ、刃を通さぬ我らが神。

 私はこの心、この体の全てをあなた様にお捧げ致します」

「いぃ!?」


 そして更に言葉を続けて、俺の左手に頬をつけるのだ。

 俺の髪は確かに「黒い」し、傷つけられて居ない以上は「刃を通さぬ」と言えない事も無い。

 だが、それはあまりにも物事を都合良く受け取りすぎだ。

 勿論、女性にそんな事を言われたのは、生まれて初めての事ではあるが、誤解によって言われても、それ程嬉しい物じゃ無く、故に俺は「やめて下さい!」と言って、ミュリペーの頬から左手を離す。


「わ、私の事がお嫌いですか……? それならそれで構いません!

 奴隷としてでも傍にお置きを!」


 ぐわあああ駄目だ! この人駄目だ! 洗脳されて無くても変わらない!

 所謂ヤンデレとでも言うのだろうか、こうと決めたら曲がらないらしい。

 助けを求めて師匠達を見るも、師匠はただただニヤついており、ギースに至っては横を向いて、つまらなそうに鼻をほじっている。


「ヒジリピンチ!」


 唯一、ユートは動いてくれたが、向かった先はミュリペーの胸で、「コレをどう使うか次第で、今後の評価が分かれる所です!」と、分かって居るのか分かって居ないのか、判断に悩む言葉を吐いた。


「兎に角! 俺は神じゃないです! それにミュリペーさんも皇帝なんですから、国を捨ててついてくるような事を簡単に口にしちゃ駄目ですって!」


 言った後には「しまったな」と思う。一国の王に対して言い過ぎたからだ。

 本人もそうだが、聞いている兵士達が気を悪くしたと言う可能性もある。

 故に、すぐに言い過ぎた事を謝罪しようとしたのであるが。


「……御尤もです。流石は神様。

 愚かな私めを叱って下さるのは、あなた様を置いて他にありません。

 国の事は、弟が居ますので、どうかご心配をなさらないで下さい。

 私めの今後の人生は、あなた様と共にある事を皆もきっと望んで居るのですから」


 目を潤ませてミュリペーは言い。


「その通りです! 我ら一同、ミュリペー様と神様が共にある事を望んでおります!」


 兵士は兵士で武器を置き、その場に跪いて声を揃える。

「事前に練習でもしたんですか!?」と、思わず俺は言いそうになったが、それ以上の問題――この状況をどう切り抜けるかで悩む為に、何も言えずに顔を歪ませた。

 ある意味、今までで一番のピンチ。俺はこの状況を切り抜けられるのか。

 放置して逃げたい本音を押さえ、俺はひたすらに打開策を考えた。



行動高速化でギースと入れ替わり、鼻くそほじって知らん顔で切り抜けろ!

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