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家電は本来戦わない  作者: ぬいみねね
コンタクト
4/17

3

「フォルムチェンジ!」

「フォルムチェンジ☆」

 二人は人型の形態に再び変形する。

 追い出すことは可能だろうが、どちらもないと生活が不便極まりないことになってしまう。それに購入したばかりの冷蔵庫を手放すなんて流星には考えられない選択肢だ。

「まあ一人暮らしには広すぎるから居住スペースには問題はないか……」

「君のような年代の人間で一人暮らしは珍しいんじゃないか?」

「うちには母さんがいないからな。父さんも単身赴任で今はここにいない。ところで、二人の名前を聞いてなかったな」

 流星は深く詮索されるのを嫌い、話を進める。

「我々の名前は人間の声帯で発声することが出来ないんだ。そもそも言語によって意思の疎通を図っていなかった」

「基本は思念で意思疎通ですもんね☆」

「じゃあ二人を……これから来る奴らも含めてどう呼べばいいんだ?」

「そうだ☆ 流星さんが名前を付けてください☆」

「何で俺の名前を……」

「忘れたんですか☆ わたしはあなたのスマートフォンですよ☆ 流星さんのことは何でも知ってます☆ 電話がお嫌いなんですか☆? あまり着信も発信をないようですが?」

「ほっとけ! お前なんかスマ子で十分だ!」

「えぇ☆ もっと可愛い名前がいいです☆」

「いやお前はもうスマ子で決定だから」

 せめてもの腹いせにぞんざいな名前を付ける流星。

「いい名を貰ったな」

「そんなぁ☆」

「それでは私の名を決めてくれ」

 腕組みをした銀髪の女性に迫られる。流星はペットを飼ったこともなければ、使用している家電に名前を付けたりもしないので、何かの名前を真剣に考えたことがない。それでも何とか捻りだす。

「……レイ、とか?」

「冷蔵庫から取ったんですか? 安直☆」

「おっお前らが決めてくれって言ったんだろ!」

「そうだぞ、スマ子。私はレイという名が中々気に入ったぞ」

「スマ子ってさっそく使われちゃいました☆ このままじゃ定着しちゃいます~☆」

 流星は気になっていたもう一つの事を尋ねる。

「ところで二人は何か食物を摂取する必要はあるのか?」

 得体の知れない異星人といえども、何らかのエネルギーなしで動けるということはないだろう。食事をするなら金銭がかかる。しかし、流星の家計には食費に回す余裕はない。

「我々は食事によってエネルギーの摂取をするわけではない。我々は生まれ持ったこのコアストーンによってエネルギーを供給されている」

 レイは胸の青い石を親指でくいっと指し示す。

「そんなことが可能なのか?」

「それが可能なんですよ~☆ ゼントロン星人は機械生命体ですから」

「機械生命体?」

「詳しく説明するのが面倒くさいので簡単に言いますね☆ 機械の体を持っている人間と同じような意思を持った存在だという認識で大丈夫です☆」

「やっぱり地球とはかなり違うんだな……」

「そうですね☆ ゼントロン星人から見ると地球はまだまだ未開の地です☆ 我が星は科学技術とか凄いんですよ☆」

「かなりの差はあるだろうことは想像ついてたけどな。短時間で言葉も振る舞いも人間と遜色ないレベルになってるし」

「私個人としては地球人の食事というものに興味があるのだがな」

「一応食べることは可能なのか? まあそれはそれとしてだ……。ここで生活を送るにあたってルールを守ってほしい」

「どんなルールだ?」

「先ず、ここは俺の家で、レイとスマ子の体は俺の所有物である家電だ。基本的に俺の言うことを聞いてくれればそれでいい」

「そうやって服従させて何をする気なんですか! いやらしい!」

「服従とかじゃない! 家電の機能を俺が言った時に発揮してくれたらいいんだよ!」

「紛らわしい言い方しないでください☆」

「変な風に取るスマ子が悪いだろ……。一体どこから地球の情報を得たんだ?」

「ネットです☆ インターネットを経由して、様々なデータベースを統合して言語プログラムを練りました☆」

「つまりお前自身はあの雑多な情報の海に浮き輪なしで飛び込んじまったのか……。適切なフィルター無しで片っ端から取り込んだらこうもなるか……」

「まあわたしにかかればインターネット上の情報全てを参照するのも、それほど時間はかかりませんでしたけど☆」

 胸を張って言うスマ子。参照出来ても、適切に咀嚼出来なかったようだ、と流星は思う。

「そうだな。借り物であるこの体は流星の物だ。しかし、緊急事態にはその限りではないことも覚えていてくれ」

 神妙な顔をしてレイは言う。聞き捨てならないと流星はすかさず問う。

「緊急事態って? ゼントロンは地球に何かを調査しに来ただけなんだろ? そんな事態になることがあるのか?」

「そうだな。しばらく厄介になるわけだから、隠しておくことも出来まい。我々と同じ目的の敵対組織も地球にやってきている」

 それはもっと先に言えよ、と言いたかった流星だが、あまりのことに絶句してしまう。

「つまり俺は、異星人の争いに巻き込まれかけている地球人、ということなのかな?」

「そういう言い方も出来ますね☆ でも安心してください☆ わたしたちはヴァイストロンになんか負けません!」

「ヴァイ……? 何だって?」

「ヴァイストロン、我々の敵だ。しかし、流星を巻き込むことはないだろうから安心していてくれ」

「もう十分巻き込まれていると思うよ、レイ……」

「そうとも言えるな。ここは我々の本部でもあるし、いつ襲撃されてもおかしくないな」

「何普通に言っちゃってるのこの人……」

「レイさんは大らかな人なんです☆ だからリーダーに選ばれました☆」

「いやその選択はどうかと思うぞ」

「戦いに関してはトップクラスですし☆ 大丈夫大丈夫☆」

 ここで流星はあまり聞きたくないが、聞かねばならないことを思い出す。

「そういえば残りのメンツはいつ来るんだ?」

「気配を感じるのでもう来ているはずなんだがな」

 残りの異星人達がやってきても俺の家電を媒体に体を作るな、と言っておこうと思った流星の出鼻を挫くレイの発言。

「もしかしてわざとやってるのか?」

「何をだ? 私はここを本拠地にしていいと流星から聞いた時点で信号を送っていたぞ」

 何を今さら? といった表情のレイ。出会った時の無機質な様子は影も形もない。

「いやいや! 知らないから! 何の信号だよ! 俺は交通信号しか知らねぇよ!」

「ぎゃーぎゃーうっるさいのぉー。ガキじゃあるめーし」

突然聞き慣れない声が背後から聞こえ、振り向く流星。

そこには緑の髪をサイドに二つ結わえた、妙にギラついた淡い緑色の瞳をした流星の胸くらいの背の異星人がいた。

「新手はガラが悪いな……」

「んだこらぁ! んな舐め腐った態度とっとったらイテまうど! アホボケカス!」

「いつの時代のヤンキーだ」

「勝手に言語を学んだからそんなことになるんです☆ わたしに任せてください☆」

「何余計なことさらしてけつかんねん! おんどりゃあ!」

 お構いなしでスマ子はレイにそうしたように、緑髪少女の左手の甲にあるコアストーンにコードを接続し、言語プログラムをインストールする。

「はい、これでもう大丈夫です☆」

「あーあ、さっきの結構気に入ってたんだけどな」

 緑髪の少女は両手を頭の後ろで組み、少し残念そうに言う。

「終始あの調子では調査活動に支障をきたすだろう」

「へいへーい。それであんたが流星だよね。さっそくだけどあたしにも名前ちょうだいよ!」

「今来たところなのになんでそのこと知ってるんだ?」

「聞いてないの? えっとスマ子だっけ? が今までの会話の共有をしてくれてるんだ。そんなのはまあいいじゃん! ほらほら早く早くー!」

 少女は流星の腕を掴み、父を急かす子供のようにぐいぐいと引っ張る。

「ちょっと待ってくれ、名前を付ける前に聞きたいことがある。君の体はやっぱり俺の家にあった電化製品なのか?」

「そうだよ?」

「やっぱり……」

 がっくりと肩を落とす流星。少女は何か悪いことした? という無垢な表情で流星の顔を覗き込む。

「どうしたの?」

「いや、まあ、うん、もうさすがに諦めついたかな……。そうね、名前ね……」

「名前を考えやすいようにあたしの正体も明かしちゃおうかな! デフォルメイション!」

 流星の了解も得ずに少女は変形を始める。光が少女の体を包み、後に残ったのは流星の自室に置いてあった古今東西多種多様なゲーム機である。ファミコン、スーパーファミコン、ネオジオ、メガドライブ、ゲームボーイシリーズ、ワンダースワン、プレイステーション、セガサターン、プレイステーション2、ドリームキャスト、エトセトラエトセトラ。ゲーム機本体だけでなくモニターやスピーカーなどの製品も混じっている。

「じゃじゃーん!」

「なんでこんなにたくさん?」

「一つじゃ足りないから色々合わせて一つの体を作ってみたんだ~」

「そうかそんな手もあったのか」

 レイが言う。どうやらあまり深く考えずに冷蔵庫にしたらしい。

「メインはこの白地に緑色のアクセントが可愛いやつだよ」

「ああXBOX360か……」

 緑髪の少女が体に選んだのは、日本ではあまり振るっていないMS社のゲームハードである。流星はコントローラーの出来にいたく感動し、マルチプラットフォームの場合には必ずこちらのハードのソフトを購入するくらい好意的だ。

「これが可愛いという感覚はいまいちわからないが、いい選択だ」

 サムズアップで少女を褒める流星。

「わーい、なんか知らんが褒められた!」

 XBOX360がガタガタと震えて嬉しさを表現する。少女自身もそれが気に入っているようだし、それにちなんだ名前にしようと流星は思う。一案浮かぶ。

「君の名前なんだけど。ハコ、でどう?」

「ハコ?」

「そのゲーム機のあだ名みたいなものだよ。前身機が箱みたいだったことに由来する」

「うん! それでいいよ! 響きも結構可愛い!」

 そう言いながら人間形態へと変形をするハコ。

「そっ、そう?」

「素直に褒められて照れていますね☆」

「うっ、五月蠅い!」

「流星さん、わたしにだけ当たりがきつい気がします……」

 スマ子はしょんぼりといった様子で顔を伏せる。

「思春期の少年とはそういうものらしい」

 レイが知ったかぶりでフォローする。恐らくインストールされた情報の中にそういった知識があったのだろう。

「はっ☆ これが世に言うツンデレ☆」

 スマ子は我が意を得たり、という表情で流星を見る。

「ツンでもデレでもない」

 流星はスマ子を人差し指で小突く。こてん、とひっくり返るスマ子。

「あん☆ いけず☆」

「残るは一人か……」

「あと一人かー。さっさと出てこないかなー」

 ハコはどうやら既にこの場にいることに飽きているようだ。

 何も起こらないままに十分が経過する。

「遅ぇ……」

 ハコは明らかにイライラしている。

「確かに少し遅いな。残るもう一人はハコと同時にここに来たはずだが」

「実はもう来てたりして☆」

「またお前はそういうことを……」

「ふふふ、そのまさかさ」

 階上で声がしたので一同が振り向く。

「誰だ!」

「ふっ、わただだだだだだだっ」

 金髪の少女が階段から転がり落ち、廊下にひっくり返っている。乱れた美しい金髪で顔は判別できないが、レイたちと同じ衣装をまとっていることから最後の一人だと流星は判断する。

「大丈夫?」

「きっと階段という存在を知らなかったんでしょうね☆」

 異星人達は皆、スマ子から地球の言語、社会の知識を得た。それをしていない金髪の少女は階段の降り方を知らないのだろう。しかし、流星の頭にある点が引っ掛かる。

「じゃあどうして今喋ってたんだ?」

「恐らくハコのように自ら情報を得たのだろう」

「そうすると階段から落ちたことの説明がつかない」

「説明しよう。知っていることと経験したことがあることは異なる。知っていたが経験したことはないのでこうなったのだ」

 少女はひっくり返った姿勢で言う。

 そのままでは可哀想だと思い、流星は手を貸してやる。

「ありがとう」

「それじゃあわたしの出番ですね☆」

「いや、その必要はない。自ら得た情報で十分だ」

「さっき階段から転げ落ちたのに、いいのか?」

「それもまた一興。自ら経験し、それを蓄積する。実に興味深い。どうやら私は自ら経験することに喜びを感じるようだ」

「って言ってますけど、どうします? レイさん?」

「そうだな。強制は出来ない」

「えっ!? あたしはダメだったのにあいつはいいのかよ!」

 ハコが勢い良くレイに不平を申し立てる。

「あれは聞き苦しかったからな」

 レイはばっさりと申し立てを拒否。

「なーんか納得いかない……」

 ハコは頬を膨らませ、不平の意を表する。

「まるで子供だな……」

 金髪の少女はぽつりと呟く。

「なーんか今聞き捨てならないこと言われたんですけど」

 どうやらハコの神経を逆なでしたようだ。二人の間に緊張が走る。

「あれあれ☆ あれあれ☆」

 スマ子がそれを敏感に察知し、二人の顔を交互に見る。ハコと金髪少女はお互いに睨みあっている。

「ゼントロン同士の抗争は認められない。事を荒立てるのなら私も動かざるを得ないな」

 ぬっと二人の間にレイが割り込む。ハコも金髪少女もレイと比べると随分と背が低い。スマ子がレイは戦闘能力が高いと言っていたが、気迫だけでも他を圧倒している。なるほど、リーダーにはレイがふさわしい、と流星は一人納得する。

先に折れたのは金髪の少女だった。

「……すまない、レイ。これが喧嘩と仲裁か。勉強になった。以後気をつけよう」

「あたしも別にマジでヤろうなんて思ってないし……」

「そうか、ならいい。流星、名を」

「そっ、そうだな……えっと君は……」

 突然話題を振られた流星は戸惑いがちに考え始める。しかし、金髪少女が言う。

「名は考えておいた」

 ごほんと一つ咳払いをし、金髪少女が暖めていたであろう名称案を開陳する。

「こんぴゅう太」

「却下だな」

「却下で☆」

「却下ー」

「却下したほうがいいよ。そもそもそれって男の名前じゃないか」

 満場一致で却下されるこんぴゅう太。しかし、その犠牲は一つの真実を突き止める手掛かりとなった。

「良い案だと思ったのだが……」

「とりあえず君は俺のパソコンを元にしてるみたいだね」

 この子もスマ子同様、インターネットから情報を独自に得たのだな、と流星は推測する。

「その通りだ。名は体を表す、と言うからこそのこんぴゅう太だったのだ」

「流星がつけた名前にしたほうが無難だ」

「まあわたし以外は結構まともですよね☆」

「反対意見が過半数を占めたからには民主主義的メソッドに則り、流星の意見を取り入れよう。それで、私にふさわしい名とは?」

 場の皆の視線が流星に注がれる。流星は妙なプレッシャーを感じながら思案する。今まで割と安直に決めていたが、こうまで注目されてはおいそれといい加減な名をつけることは出来ない。少し捻りが利いていて、皆に馬鹿にされない名前……

「どうだ? 流星?」

「……CP……」

 苦し紛れに流星の口から出た名は、パソコンの内部にあるパーツである中央演算装置、つまりセントラルプロセシングユニット略してCPUから二文字とったという結局割と安易なものだった。

「CPか……どこか示唆に富んでいる良い名だ……」

 金髪少女は流星の予想に反してCPという名がお気に召したようだ。

「なんかスタイリッシュで羨ましいです☆」

「ところで流星。一つ忠告がある。その、なんだ……君の年頃の男子にとっては仕方ないのかもしれないが……あまり裸の女性の画像を貯め込むのはどうかと思うぞ……。しかも尻ばかりとは……」

 CPは少し気恥ずかしそうに言う。流星はこの世が終わりを迎えたような顔つきをして、震える声で心の内を漏らす。

「CP、お前を殺して俺も死ぬ」

 CPが流星のパソコンということは、流星がネットの広大な海からブラウザクラッシャーや無限ポップアップウィンドウなどにもめげずにこつこつシコシコ集めた珠玉のいやらし画像や動画総計二テラバイトが、全てCPに知られてしまうことは当然の話である。

「早まっちゃ駄目ですよ☆ 男子たるもの女体に興味SINSINなのは当たり前です☆ 特にお尻とは中々通ですね☆」

「お前に何がわかるぅ!」

自らの性癖を異星人にすっかり覗かれてしまった男子高校生の気持ちは、中々共感を得られない。

「さあ! これで我々ゼントロン達が体を得て、名を貰ったのだな。部隊としての体裁が整ったわけだ」

「おーさすがリーダー、この場の空気をもろともしない……」

 レイが流星の性癖の件を完全にスルーしている様子に、ハコが思わず感心する。

「ええっと、そうだ。もう夜だし、今日は一旦休んで明日からにしたらどうだ?」

 スルーしてくれた方がありがたい流星はレイに提案する。

「さすがに今すぐ飛び出して捜索を開始するわけではない。そもそもどこから探したら良いのか見当もつかない。先ずはどういった方針を持って地球上で生活をし、調査をするのかを決めたいと考えていた」

「そうか。それはいい考えだ」

「スマ子、ハコ、CP、それぞれそういったことを考えつつ休んでおくように。明日会議をし、方針を決めてからが、我らの本格的な活動の開始だ」

「了解」

 一同が声を合わせて、返事をする。

流星はどうしても言っておかなければならないことがあることを思い出し、話し始める。

「それで俺からも提案というかお願いがあるんだ。レイとスマ子にはもう言ったんだけど、俺が要請をしたらみんなは家電の姿になってその機能を果たして欲しいんだ」

 所有者として当然の権利を主張する流星。

「皆も既に知っていると思うが、我々は流星所有の電化製品を元に体を形成している。電化製品は人間の生活には欠かせないものだ。我々もこの地球の人間に迷惑を及ぼす気は毛頭ないので、流星の案を呑みたいと思う」

 もうすでに迷惑は被っているのだが……という考えが流星の頭に浮かぶ。

「はーい」

 先ほどとは一転、修学旅行生が先生に諸注意を聞かされた後のような返事。

「こいつら守る気あるのか……」

「大丈夫だろう。それでは各自流星宅内で休め。会議が終わるまではここを出ないように」

 皆思い思いに三々五々に散っていく。流星はテーブルから降りようと苦心しているスマ子を上から引っつかむ。

「さっそく御用ですか☆」

「御用だよ。さっさと変形してくれ」

「は~い☆」

 スマ子が姿を変え始める。

流星は、これからプライバシーというものは一切ないのだろうな、と早々に諦めをつけた。そもそも既にそれは失われたのだ。失われているのなら諦めるのも容易い。

「何するんです?」

 すっかり形状を元のスマートフォンに変えたスマ子が流星に問う。

「スマ子には関係ない。と言いたいが……どの道知られるのならいいか……。さっき委員長からメール届いてたろ。返事しないと」

「委員長? ああ桜屋麻耶さんのことですね☆」

「そうその人」

 流星は画面をタップし、メールのアプリケーションを起動する。馴れた手つきでメールの文面を確認する。メールを読み終えた流星は一言、

「もう少し……早くこのメールを読んでいたらな……」

「なになに……?」

 スマ子が流星の許可なくメールの文面を読み取る。それは年頃の女の子らしからぬ顔文字や絵文字もない簡素な文。

『淀橋君、あまり家電に熱をあげるのも考えものよ。何事もあまりに熱中し過ぎると思いもよらない形でそのしっぺ返しがきたりするから。あなたがいくらそれに愛やお金を注ごうとね。そうだ、明日までに英語のテキストP21からP25の和訳をしておくこと』

 後半は読まない方が良かったかも知れない、と流星は溜め息をつく。


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