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ゼントロンとヴァイストロンの戦いで破壊された秋葉原の街は復興が開始された。スマ子が近隣全ての監視カメラのデータを改竄したおかげで、異星人の正体が世間に明かされることはなく、原因はガス爆発か何か、という線で落ち着いた。
流星達は再び秋葉原を訪れている。ゼントロン達は怪我が治りきっていないので、皆どこかしらに包帯やらを巻いている。復興が始まったおかげか、路上にはメイド服に身を包んだ女子が幾人もいて、道行く人に声をかけている。
「メイドいかがっすかー。メイドーメイドー。安くしとくよーお兄さーん」
どこかで聞いたトム・ウェイツもしくは長渕剛を思わせるガラガラ声のメイドが、的屋のおっさんのような口調で客引きをしている。
「そんなメイドがいるか!」
ハコはやる気なさそうに突っ立っているメイドの尻に軽く蹴りを入れる。
「てんめぇ……メイド喫茶はいかがですか……?」
メイド服姿のカブが怒りを露わにしつつも口調を訂正する。よく見るとその場にいる三人のメイドはドゥカティ、カブ、ゴリラである。
レイがヴァイストロン達に、秋葉原の復興の手助けをするように言ったのだ。戦闘後、疲弊により大半の力を失っていたヴァイストロンは断ることは出来なかった。そうして今はメイド服を着て、客引きに勤しんでいるわけだ。
ドゥカティがゼントロン達と流星に気付き、俯きがちにぽつりと呟く。
「私のこんな姿を見て笑いにきたのね……」
「そんな悪趣味に見えるか? ちょっとしたお知らせに来ただけだよ。ヴォルテカを体内に取り込んでいる流星は正式に我々の保護対象となった、意味するところはわかるだろう」
レイは暗に、手を出せばまた同じ目に遭わせるぞ、と言っている。その妙に緊迫感のある空気に耐えきれず、流星は口を開く。
「俺はドゥカティにはその服似合ってると思うよ? 可愛い可愛い」
「かっ、可愛いですって!? わっ、私は何を着ても似合うから仕方ありませんわね! ってこの人間風情が! この私を可愛いだなんて!」
ドゥカティは照れているのか怒っているのか、なんだかよくわからないことをあたふたと変なアクションを行いながら言う。
「わー赤くなったー!」
ハコがそんなドゥカティを見て茶化す。
「これは元からですわ!」
ドゥカティは一時期の尖り具合はどこにいってしまったのか、と思わせる返しをする。
ちなみにモータードは非人間的な見た目なので留守番をしている。一番メイド服を着たがっていたらしい。不憫だな、と思いながら流星は秋葉原の街を後にする。
所変わってここは流星宅。流星を含め、ゼントロンの一同も怪我が治りきっていないので、家事全般を桜屋が手伝いに来てくれている。桜屋は家事全般もそこいらの女子以上に出来る。料理の味付けが少し淡く、いつか食べたおばあちゃんのそれと似ていると感じたが、言うと怒られそうなので流星は黙って完食した。
戦いを終えたその日、帰って来た流星達を桜屋は出迎えてくれた。どうやら秋葉原のトラブルのニュースを知ったことと、スマ子に連絡がつかなかったことから、何かが起こっていると察したらしい。自宅の玄関に着くなり気絶した俺を介抱してくれた恩は中々返すのが難しいな、と流星は思う。
「全く、教えてくれたら私だって何かサポート出来たかもしれないのに」
あれから何度目かの桜屋の台詞。
「流星は君を戦いに巻き込みたくなかったのだ、わかってやってくれ」
レイは流星の気持ちを代弁してくれる。
「それはわかるけど……。何も知らないで待っている側の気持ちも考えてよね……」
桜屋は伏し目がちにポツリと呟き、食器を洗いに台所に向かう。流星がいつも使っているエプロンを手慣れた所作で身につけ、食器を洗い始める。
流星は陽のあたる和室でぼけーと日向ぼっこをしている。そして、あの戦いを思い起こす。色々あったが全てが収まるところに収まった、と思う。いやー実に良かった。後は体が元通りに回復すれば言うことなしだ。
「うんとこしょ☆ どっこいしょ☆」
胸ポケットからスマ子が這いだしてくる。流星はそれをひょいとつまみあげる。
「どうした? ていうかお前もう大分回復してないか?」
スマ子はモータードの攻撃に加え、能力の酷使でかなり疲弊していた。当初は自分で動けないほどだった。
「どうやら、流星さんのヴォルテカの力が以前より強くなっているみたいなんです☆ わたしはずっと流星さんの近くにいたから回復が早まったみたいです☆」
「俺自身は全くその恩恵を受けてないんだけど……」
「ヴォルテカは元来強力な電気の力ですから☆ 人間にはあまり有効ではないようです☆」
「不公平だ……」
つままれていた手から逃れ、またもや体を上ろうとするスマ子を遠ざける流星。スマ子がちょうど近くに居たハコの体をよじ登り始める。おそらくハコから飛んで移動する気なのだろう。
ここでスマ子がハコの右肩に乗る。ちょうど傷口に乗ってしまったのか、ハコが大声を上げる。
「ぎゃー! 痛い痛い! 降りて降りて!」
「何だ何だ、楽しそうだな」
ひょこっとCPも現われる。一体どこが楽しそうなんだろうか、CPの考えている事はいまいちわからない、と流星は思う。
「今の叫び声は何だ? トラブルでも発生したのか?」
ついにはレイまで登場する。そこでスマ子が先ほど判明したことを知らせる。
「皆さん、朗報です☆ 何と流星さんのヴォルテカの力で回復が早まります☆ ちなみに直に触れると効果が高まります、かもしれません☆」
「マジで!? 一番乗りー!」
痛がっていたはずのハコが、瞬時に気持ちを切り変えて流星の右手を握り体を押し付ける。
「じゃあわたしはいつもの場所に☆」
スマ子は流星の体をよじ登り、胸ポケットに収まる。
「それはいいことを聞いた」
再接続した左腕がまだ自由に動かせないCPは、右手を流星の左手に重ねる。
「むう、私の場所が空いていないじゃないか……。いやまだここが空いているな」
レイは流星の背中に自らの背中を預ける。
「俺、全く身動きが取れないんだけど……」
「いーじゃないですか☆ 美少女達に囲まれて幸せでしょう☆」
「だから自分で美少女とか言うなよ……。こっちが恥ずかしくなるから……」
「じゃあー流星は、あたしたちのこと可愛くないって思ってるんだ?」
ハコが余計なことを言いだす。流星はうろたえながら何とか答える。
「えっ、いや、その……そんなことはない……」
「つまり? どういうことだ?」
CPはある言葉を引き出そうと言葉巧みに流星を誘導する。
「俺はみんなのことを……その、何だ…………みんなは、可愛い、ぞ……」
真っ赤になりながら流星はそう言う。
「流星はシャイボーイだな」
妙に流暢な発音で変な言葉を使うレイ。
そうやって他愛もない話しに花を咲かせていると、いつの間にか皆眠っていた。
「もう、いくら天気がいいからってこんなところで寝て……」
家事を終えた桜屋が様子を見に来ると、畳みの上で寄り添い、眠っている流星達を見つける。桜屋はタオルケットを取りに行き、全員にかける。
「全く……みんな幸せそうな顔しちゃって……」
そう言いつつ桜屋の顔も普段からは想像できないほど穏やかである。そして、桜屋は部屋を出ていく。
夢にまどろむゼントロン達と流星を労わるように、優しい風が凪いだ。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。本作はこれで完結ですので感想やレビューをいただければ幸いです。
これで完結なのですが個人的に気に入っているのでそのうち続きとか書いてみたいな、なんて考えてます。キャラが多すぎると思って没にした登場人物を復活させたいなぁとかとか。色々考えるのは楽しいものです。
それではこれまでお付き合いありがとうございました。またそのうち何かしらアップしたいと思います。




