村長の話
いつものクエストに立ちかえった真悟たちは、行方不明になった村人たちを探し出すべく、隠し部屋があると思われる一階に向かった。
一階ホールの左側の壁にあるドアから、部屋に入ったときだった。彼らの目が床に向けられる。地下室に通じる隠し扉が開いているのだ。
みんなは、地下に続く階段をおりる。薄暗い部屋はとても広く、そこには一人の子供と、十五人の大人が倒れていた。行方不明になった村人である。
美希たち女子三人が子供の方へ、武と真悟が大人の方へ急ぎよる。
死んではいないが、目を覚まさない。魔法で眠らされているようだ。
マリナがスキル魔法で眠りの呪縛を解くと、村人たちは、おのおの目を覚ました。
真悟たちは、いったいなにがあったのか村人から訊き出そうとするが、彼らはホールの部屋に入ったとたんに強烈な睡魔に襲われ、それ以降の記憶がないという。
なんにせよ、全員ぶじで良かった。とりあえず、ここにいるみんなは、お屋敷を出ることにする。
地下から階段を上がり、広いホールの部屋へもどろうと、美希がドアを開けたときだった。
「グフフフフ」
痩せぎすで背が高く、黒いマントに身を包んでいる男が、ホールの真ん中に佇んでいる。
吸血鬼を思わせるような男である。青白い顔をして、不気味な笑い声をあげている。
武が、その男を指さして怒鳴った。
「おまえが、村の人たちを地下室へ連れて行ったのか!」
得体のしれない男は、武に答えた。
「そうだ。貴様もわたしの保存食として、とらわれの身となるがよい」
行方不明となっていた村人たちが地下室で眠らされていたのは、この男の保存食となるためだった。
真悟たちは、瞬く間に戦闘フィールドに移行する。敵は、魔法を使う幻術士だ。真悟と美希の能力を、かねそなえているといってよい。
真悟は、苦戦を強いられる戦いになる予感がした。だが実際には、思ったほど厳しい戦いにはならなかった。
警戒すべきは敵の幻術スキルだが、真悟たちにはほとんど効かない。これは、美希の突出した運の良さが、パーティー全体に及んでいるためだ。
また、相手の攻撃力もそれほど高くはなく、真悟たちは予想外というほどにあっさりと片をつけたのだった。
シナリオにはない戦いが、みんなを成長させている。これは、アリッサにしても計算外である。
最後に、真悟たちは村人たちをタケノッコの村までぶじに送りとどける。
村で村長に会うと、老齢の彼は、真悟たちにお礼を述べた。
「村のみんなを助けてくださり、ありがとうございますだ」
彼は、さらに話を続ける。
「あなた方なら、幻のお宝を見つけることができるかもしれんのう」
それを聞いたみんなは唖然となる。美希が村長に聞き返した。
「幻のお宝?」
村長はうなずくと、白いあごひげをなでながら説明をはじめる。
「そうですじゃ。大陸から東に離れた島に、たいそうな宝があると、昔からいい伝えられておってのう」
武が真悟に顔を向ける。
「次は、その島に行くのか?」
「そうですね。島まで行って幻の宝を探すのが、次のミッションでしょう」
村長がヒントを与えるかのように、ふたたび話し出した。
「ここから南下すると、ルクシャーという港町がありますだ。そこから船にのって行きなさるといい」
美希が「飛行船があるから大丈夫」と話そうとしたとき、村の男が諭すように語った。
「海に出ると、空は風が強いうえに怪物に出くわすことが多いので、船で行った方が良いと思うよ」
そういう貴重な忠告には、したがうべきだろう。真悟たちは次なるミッションのために、港町ルクシャーをめざすのだった。
飛行船で大陸を南下する真悟たちは、途中で小さな村があるのを目にする。
美希が、ボソッとつぶやいた。
「あの村は、確か……」
みんなは一度、そこに立ちよったことがある。真悟が全員に声をかけた。
「降りてみましょう」
飛行船から降り立った村は、ボルクーモという小さな集落である。北上するとタケノッコの村があるという情報は、ここで聞いたのだ。
真悟たちは、ふたたび村の人たちに話を聞く。だが、特に有益な情報は得られなかった。
村の長のいる部屋に足を進める。そこには、はじめてきたときに開けた宝箱が、開けっぱなしの状態でそのままになっている。当初、この宝箱には、なにも入っていなかった。
村の長と話をしたとき、真悟たちの目が点になる。
「鍵は、役に立ったかのう」
話が見えない彼らは「なんの鍵?」と思った。アリッサが、バツが悪そうに説明する。
「本当は、お屋敷の鍵は、その宝箱の中に入っていたのよ」
なるほど……と、みんなは納得した。いまの長のセリフは、お屋敷の一件をクリアしたあとに発せられるセリフだ。
物語のシナリオは狂うことなく、もとどおりにきちんと修正されていることが確認できる。
あとは、冒険に集中すればよい。
真悟たちは飛行船にのり込み、港町ルクシャーに向けて進んで行くのだった。




