退屈な日々と成長
イリアス視点です。ちょっと短い
僕は領主の息子として生まれ、何一つ不自由のない生活をしていた。
両親も優しく、本当に恵まれていると思う。
ある時家に冒険者が来た。魔物討伐の依頼を受けてきたらしい。
その時彼から外の世界の色々なことを教えてもらった。
それからだろう、自分の目で見てみたいと思うようになったのは。
ある時、思い切って父に聞いてみた。
「もう少し成長したら、旅をしたいと考えています。僕は世界はとても広いことを知りました。旅をして世界を自身の目で見てきたいのです。許していただけませんか?」
「それを許すことはできない。外はお前が思っている以上に危険なのだ。甘く見ていれば命を失うことになる」
やっぱり駄目だった。でも、そこで諦めるつもりはなかった。
僕は度々家を脱け出しては森に行った。少しばかり遠かったけど、森に行くまでもが冒険しているようで楽しかった。
それから剣と魔法を習い始めた。
ただ実戦はしていなかった。だから今の自分がどれだけ魔物に通用するか試したかった。
そして、僕はまた家を脱け出し森へと向かった。
そこで僕は父の言葉の意味を実感することになる……
僕は魔物を探して、森の中を歩き回っていた。
ガサガサ――
音のしたほうを見ると一体のウルフがいた。
「さて、通用するか試してみようかな」
僕はウルフに向かっていった。
歯が立たなかった。剣も魔法もまったく通じなかった。
改めて自分の甘さを認識させられたのだ。
悔しかった。
その場から命からがら逃げだした僕はそのまま意識を失ってしまった。
次に目を開けたとき、目の前に少女がいた。
何か不思議な雰囲気を持っているような、そんな気がした。
彼女はとても強いらしい。
あのキラーウルフを普通に倒してしまうほどに。
口には出さなかったけど、彼女は全身血まみれで少し怖かった。
彼女は冒険者になりたいと言っていた。
なぜ?、と聞くと
世界は広い。そしてその世界を自分自身の目で見たい。
といった。
僕は自分と同じ気持ちの人にあえて嬉しかった。
それから町に着いて、彼女を冒険者ギルドまで案内した。
そこでガラの悪そうなやつに絡まれた彼女は、そいつに決闘を申し込んでしまった。
その時の彼女の眼は凄まじかった。殺意が滲み出ていたのだ。
決闘は一方的だった。
彼女が魔法を行使すると、男の周りが火で覆われた。
それを見て笑う彼女は、悪魔のようであった。
いや、ほんとにさ。
それから彼女は僕を家まで送ってくれた。時々怖いけど、とても優しい人だとはわかっていた。
そういえば、ちゃんと自己紹介してなかった。
僕が領主の息子だと知った時の、彼女の反応は面白かった。
今回のことで自分の実力の無さを知った僕は新しく目標を立てた。
それは立派な領主になること。
考えれば簡単な話だった。世界を見るのに冒険者である必要はない。領主になっても世界を見ることはできる。
死にかけたのはまずかったけど、その分得るものも多かった。
助けてくれた彼女には本当に感謝してもしきれない。
ちなみに彼女は僕のことまだ幼いと思ってるけど、これでも13歳なんだ。
ちょっとばかし、同年代より身長が低いだけ。
いや、気にしてないよ。コンプレックスじゃないよ。ほんとだよ!!
次からは視点戻ります。次はいよいよアルの初仕事です。