第32話 崩壊の序曲
翌日からの学校では腫れ物扱いだった。
クラスメイト達だけじゃなくて学年中、校内中からヒソヒソコソコソ。
二股なんて失礼な。
私達は純愛です!
兄弟と付き合っているからなんだって言うの?
先生達からも一線引かれている。
家にも連絡が入ったみたいで、親にどういうことか聞かれた。
私は素直に彼氏達が出来たと答えた。
「達」という複数形が気に入らなかったんだろう。
大変に怒られた。
愛している人が一人じゃないといけないって誰が決めたの?
私がそう尋ねると黙るのに、ふしだらだと怒られる。
私は早々に話を切り上げて自室に逃げ込んだ。
「糊さん」
本名すら知らない大好きな人。
この恋が間違っているかどうかなんてどうでもいい。
私は二人が好き。
どっちかなんて選べない。
涙が出てきた。
なんで会いたい時に会えないんだろう。
そう思ったらスマホが軽快な通知音を立てた。
糊さんとのタイムライン。
「大丈夫だった?」
「大丈夫じゃなかったけど、大丈夫にする」
そう決意を込めて返信する。
そうだ。
両親の説得なんて必要ないや。
だって、私には糊さんがいる。
共依存についてもう一度調べる。
『共依存恋愛とは、相手に過度に依存し、自分を犠牲にして尽くすことでしか自分の存在価値を感じられない関係性です。これは、一方だけでなく、お互いに依存し合っている状態を指し、相手なしでは自分が不安定になるため、不健全な関係から抜け出せなくなります。 』
私が自分の存在価値を糊さんに尽くすことでしか禁じられなくなっている?
違う。
だって、私は私で糊さん達を愛している。
これが共依存と他人からは思われても、それだけは変わらない。
私の価値は、私が決める。
そう思って、もう一度SNSの画面を眺める。
「糊さん、好きだよ」
「僕たちもだよ」
そう返されて、自然と笑みになる。
初めての恋、初めての彼氏がちょっと特殊だっただけで、私たちは私たちで愛し合っているからいいよね。
糊さんも、私だけがいればいいよね。
それが共依存の症状だと気付いていながら全部に蓋をして私はスマホを祈るように握りしめた。
不安になった時の私の癖。
糊さんと繋がっていたくて、ぎゅっと握り締める。
「糊さん……。今更私を捨てたら絶対に許さないから」
そう呟いて、また翌日のために着替えて寝た。
それからはずっと同じ毎日。
学校では糊さんと二人。
休みの日は三人で遊んで過ごす。
楽しくて、嬉しくて、ずっとこんな毎日が続けばいいのに。
そう思っていた。
でも、壊したのは他でもない糊さんだった。
「ねえ、ひとつ聞いていい?僕とあいつとどっちが好き?」
「なんで?どっちも好きだよ」
「俺だけじゃダメなの?」
「だめだよ。私は二人を愛しているんだから」
にこりと笑って答える。
二人は顔を見合わせて、ひそりと何か話し合っていた。
私は呑気に仲がいいなぁなんて思っていた。
「もし、もしもだよ。俺たちどっちか選んで欲しいって言ったら?」
「そんなこと出来ないよ!」
「そうだよね。今更元に戻れないよね」
「糊さん達、おかしいよ。どうしたの?」
いつも優しいのに、今日は違った。
「……ごめん」
そう言うと、2人に抱き締められた。
何が何だかよくわからなかったけれど、嬉しかったので私も抱き返した。
子供達の無邪気な声が遠くに聞こえる。
大好きだよ、糊さん達。
そうだよ。今更片側だけ選ばせようなんてさせない。
堕ちるなら、三人で堕ちようよ。




