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第21話 「勇者アヘ顔ダブルピースの最終決戦」

やっとロランの倒し方を思いついた。

 ペンダントを首に下げて仁王立ちするロラン。


 俺とリディアと魔王は、そんな彼を悔しげな表情で見つめることしかできなかった。


「勇者アヘ顔ダブルピース様……何か、作戦はありませんか?」


 聖剣の切っ先をロランの方に油断なく向けながら、小声で問いかけてくるリディア。


「そうは言ってもな……」


 一応、可能性はゼロではない。


 ペンダントを手に入れたばかりの今のロランは、まだ上手(うま)くその膨大な魔力をコントロールできていない。


 この隙に乗じてなんとか奴からペンダントを奪うことさえできれば、形成は一気に逆転するはずだ。


「おい、勇者アヘ顔ダブルピース! 何かいい案を出せ!」


 魔王が眉間にしわを寄せながら、少年特有のあどけない声で言った。


「分かってるよ……」


 俺は、冷静に考えた。先程の闘いを見る限り、リディアの聖剣であればロランの攻撃をガードすることができる。


 つまり、この戦いのカギは彼女の持つ聖剣だ。


「よし、リディア」


「はい、なんでしょう?」


「とにかく、あいつの気を引くんだ。ロランの攻撃を剣でガードしまくれ」


「分かりました!」


 彼女はコクリと頷くと、ロラン目がけて機敏に走り出した。


「無駄だ!」


 叫びながら右手を前に突き出すロラン。そして手の平から、紫の光球を打ち出した。


 ヒュン!と空を切って迫るそれを、リディアが素早く剣で弾く。大きく軌道をずらされた光球が、部屋の天井に当たって軽く爆ぜた。


「ロランさん……覚悟!」


 彼女にとって、ロランは父の長年の友人である。そんな彼に刃を向けるのはつらいことかも知れないが、とにかく今はやるしかない。


「はぁっ!」


 威勢良く叫びながら、リディアは敵に斬りかかった。


「ふん!」


 対するロランは、黒いローブをひるがえしながら剣戟を躱し、左手に発生させた魔法のエネルギーを彼女に打ち出す。


「っ!?」


 リディアは、とっさに両手で剣を構えた。






 ガキィンッッ!!






 剣と魔法がぶつかり合い、甲高い音が鳴り響く。なんとか攻撃を防ぐ事には成功したが、後ろに激しく吹き飛ばされたリディアはバランスを崩しながら床に転んだ。


「じゃあな、リディアちゃん!」


 ロランは叫ぶと、右手の拳をグッと握りしめた。するとその拳が紫色の光を放ち始める。


「これでとどめだ……!」


「させるか!」


 俺は叫びながら、ロランの背後から襲い掛かった。彼がリディアと戦っている間に、こっそりと背後まで回り込んでいたのだ。


 だがロランまであと数センチというところで、俺の体は空中でピタリと止まった。


「!?」


「無駄だよ……」


 ロランは床に倒れ込むリディアを見つめながら、背後の俺に話しかける。


「君は絶対に、私に“触れる”ことは出来ない……」


「くっ……!」


 なんとかもがこうとしたが、体が一切いうことをきかない。頬を冷や汗がしたたり落ちた。これが魔法の力か。


 だが、魔法を使える奴ならこっちにもいる。


「今だ、やれ!」


 幸運なことに、口を動かすことはできた。俺は空中で体を固定されたまま、大声で叫んだ。


 それと同時に、俺の更に背後でスタンバイしていた少年魔王が、機敏に行動を開始した。


「はあぁぁぁ!!!」


 右手を前に突き出し、火球を素早く打ち出す。


 火の玉はロラン目がけてまっすぐ飛んだ。すると彼は、体を180度回転させて俺と魔王の方を向き、まるで小うるさいハエでも追い払うかのように左手を振る。






 パシュンッ!






 小気味の良い音と共に、火球はロランの眼前すれすれで消滅した。


「くだらんな……」


 冷淡に言い放つロラン。


 しかしその隙に――聖剣を構えたリディアが、彼の背後まで迫っていた。


「よしいけ、リディア!」


 俺が叫ぶのと同時に、ロランは慌てて後ろを振り返る。


「はっ!」


 鋭く息を吐きながら、彼女は聖剣を振り下ろした。ロランは素早く体を横に反らし、寸での所でリディアの一撃を躱す。


 だが、“完全に躱す”ことはできなかった。






 キィィィンッッッ!!!






「何!?」


 金属と金属のこすれ合う音が響き渡る。


 そして彼女の振り下ろした聖剣の刃は、ロランの首にさがったペンダントの鎖を見事に切り裂いた。支えを失ったペンダントが宙を舞う。


 これによって彼の魔法による呪縛が解け、俺は自由に体が動かせるようになった。


「よし、魔法がとけたぞ!」


「やりました!」


「き、貴様らぁ……!」


 更にリディアは、取り乱すロランを勢いよく蹴り飛ばす。


「うぐっ!」


 短い声をあげながら、ロランが床に崩れ落ちた。彼女は宙のペンダントをキャッチすると、俺の方に向かって迷うことなく投げる。


「アヘダブ様! とどめを!」


「お、俺か!?」


 このペンダントは、所有者の魔力を劇的に高める魔道具だ。それを俺が持ったら果たしてどうなるのか、完全に未知数である。


 そしてその答えは――俺がペンダントを“右手で”受け取った瞬間に分かった。






『おめでとうございます、勇者アヘ顔ダブルピース様――ペンダントを手にしましたね。最高クラスのアビリティが開放されました』

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