第83話邪悪な存在
そのまま俺は光り輝く光線によって死んだ───────と思った。
(我ハオ前ニ力ヲ貸シテモイイゾ)
俺の中で何者かが語りかけてきた。
(誰だ!)
(我ハオ前デアリオ前ハ我デアル)
(どういう意味だ!)
俺にはその言葉の意味が理解できなかった。我はお前? お前は我? どういう意味なんだ。理解ができない。そもそも今俺がいる場所はどこなんだ。俺は見渡してみると白く永遠と続く何にもない空間が広がっていただけであった。どこなんだ一体ここは? 俺にはこの場所を理解することができなかった。先ほどまで目の前にいたカワラルーンの姿は見当たらない。先ほどまであった広い森は存在していない。今あるこの広い空間には俺しかいない。
(ココハオ前ノココロの中ダ)
俺の心の中? どういう意味だ。そもそも、そろそろこいつは誰なのか明かしたいところである。見た感じ声だけで姿は見ることができない。
(そろそろ姿を出せ! お前は誰なんだ)
俺は何にもないこの空間で1人叫ぶ。叫んだあとは、しばらくはその声から返事がなく沈黙した時間がただ無駄に過ぎたがもう一度俺が叫んでやろうと思ったところでようやく返事をしてきた。
(マア、イイダロウ。オ前ニコノ姿ヲ明カシテヤル)
そう言うと、俺の目の前に広がっていた真っ白い空間ははるか遠くから何にも寄せ付けることにないほどの真っ黒に染まっていった。そして、真っ白かった空間は一瞬にして真っ黒な空間へと変貌を遂げていた。
真っ黒か。とても不吉だ。俺は第一に考えたことは不吉だということだった。黒というのは古の時代より災害の象徴、呪いの色。とにかく、不幸を象徴する色であったのだ。
(何ダ、オ前ハ我ヲ疑ウノカ、我ヲ負ノ象徴トハ、イイ度胸ダ)
こいつ、俺の心の中を読んできた。全て俺が考えていることが筒抜けになっている。どういうことだ。俺は考えていたがそれを妨害する出来事が発生した。
はるか遠くから何者かが歩いてくるのが目についた。はるか遠方から真っ黒な邪悪な存在が目に見えた。禍々しいものだ。ただ、それは人には見えなかった。だから、邪悪な存在だと俺は認識した。
「こいつ!」
俺は警戒心を最大限まで上げてその邪悪な存在との距離が開くように大きく後ろへとジャンプした。俺は後ろにジャンプしてもその邪悪な存在からは一瞬たりとも目を離さずにしていた。
だが、次の瞬間には俺は一度も邪悪な存在から目を離していたはずがなかったのに姿がなかった。どういうことだ。
(我ハオ前ノ敵デハナイ)
はっ。俺はその声がした方──つまりは後ろの方を向く。そこには先ほどまで前にいた邪悪な存在がいた。いつの間に! 俺は再び警戒をする。
(ソンナニ警戒スルデハナイ。言ッタゾ我ハオ前ダト。オ前ノ中ニアル真ノ力ダ)
真の力? 俺はその言葉を疑った。俺にある真の力とは一体何なのだ。俺はこんなものを知らない。こんな邪悪なもののことなど尚更だ。
(俺はこんな力知らない! お前は俺なんかじゃない。俺を惑わすことをやめろ。それぐらいでは惑わされないぞ)
俺は邪悪な存在の提案を拒絶した。真の力何てもの俺にはない。そもそも、俺は邪悪なもの、闇といったものはろくでもないと思っている。だからこそ、そんなものが力だというのならば全力で拒絶をしたいと思う。
(ダガ、今我カラ力ヲ貰ワナイトオ前ハ確実ニ死ヌゾ。何カ勝算ハアルノカ?)
……。
勝算。そんなものあるわけない。ここで邪悪な存在の提案を拒絶したら俺はカワラルーンに勝つことができずに死ぬかもしれない。もう二度とランに会うことができないかもしれない。でも、それでも俺は闇というものが怖い。怖いからこそ信用しないし、それから遠のこうとする。だから、俺は覚悟を決めた。
(それでも、お前の提案を俺は拒否する!)
俺は決意を述べた。邪悪な存在は俺の真の力なんかじゃない。俺を惑わす悪の存在だ。俺はそんなものには騙されず屈しない。たとえここで死ぬこととなったとしても最後まで自分の覚悟を突き通したい。自分の心情を突き通したい。
(ソウカ、残念ダ。ダガ、イズレオ前ハ我ヲ呼ブ。ソノ時マデ楽シミニ待ッテヤル)
邪悪な存在はそう言い残すと姿を消した。より、正確にいうと姿を消したという言い方は正しいか分からないが一瞬で俺の目の前からいなくなっていた。
俺は警戒をようやく解いて膝に力が入らなくなりその場に倒れこんだ。
最後に、邪悪な存在が言っていた意味深な言葉がどうも気がかりであったがそれよりもここからの脱出を図りたい。ここはどこなんだという質問はしなかったため元の世界に戻ることができなくなっていた。ただ、戻ったところで殺されるだけであるのだからこの状況をうまく利用することもできる。この間にカワラルーンを倒す秘策でも考えておかなければならない。
……。…………。………………そんな簡単に秘策なんかは思いつかなかった。当たり前だ。そんなものがすぐに思い浮かんだのならば先ほどの戦闘の際に実際に行動に移している。自慢ではないが、一応戦闘中は頭がキレる方ではある。だが、思い浮かばないときはとことん思い浮かばないのが俺でもあり結局良い作戦も秘策も思い浮かぶことなどなかった。
「さて、どうしたものか」
秘策は思い浮かばない、元の世界に帰ることもできない。完全に積んでいた。このままこの何にもない空間で暮らすのか。暮らすことなどできずにすぐに死ぬな。これぐらいだったら正々堂々と戦って死にたかったな。俺はもう何もかも諦めてどうせならと思いその場で横になった。上を見ている状態だがそこには青い空何ていうものはなく、真っ白な世界が広がっているだけであった。真っ白な世界というのはある意味真っ黒な世界より恐ろしいな。俺はそう思って目をつぶった───。
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