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「神子の余分」と言われましたが、中身は最強の神子でした ~入れ替わり召喚で捨てられた僕が、木の実と石で世界を浄化するまで~  作者: 朝山 みどり
第三章

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41 浄化の能力

41 浄化の能力


あのときのことを、何度も頭の中で繰り返した。


森の中、あの黒いものが視界の端に映った瞬間、

体が勝手に動いた。


「だめだ……!」


気づいたときには、僕は手のひらを前に突き出していた。

何かを考えたわけじゃない。ただ、拒絶するように。


消えろ。


そう思った。


次の瞬間、瘴気はふっと形を崩して、まるで霧みたいに消えていった。


「……え?」


自分でも、何が起きたのか分からなかった。


確かに消えた。


あれは、偶然なんかじゃない。

あのときの感覚は、今でもはっきり残っている。


だから、分かった。


「ミツルギだけじゃない……僕も、神子だ」


自分に言い聞かせる。


怖かった。

正直に言えば、逃げたかった。


だって、僕は神子じゃなくてよかったと思っていたんだよ。


でも、それでも。


僕は、あの町のことを思い出す。

魔獣がやって来るとわかった日。僕は怖かったけど、皆は勇敢だった。


皆がいたから僕も戦おうと思った。そして戦った。


「守りたい」


利用されるとか、そんなことじゃない。


「僕が、助けたいから」


その気持ちは、不思議と迷いがなかった。


そのあと、クリフたちがもう一か所調べに行くって聞いたから、僕は収納に入っていた石に浄化の付与をした。


「これ……持って行ってもらっていい?」


そう言って差し出すと、クリフが一瞬だけ固まった。


「……石?」


「あ、えっと」


その表情で気づいた。


重いよね、普通に。


「ごめん、重いよね。僕、馬鹿みたいだ」


思わず苦笑いする。


でも、クリフはすぐに小さく笑って、


「いいよ。ありがとう、ルーク。俺たちは冒険者だ。これくらい」


と受け取ってくれた。


「心強い」


その一言に、少しだけ胸が軽くなる。



あの町で、矢に付与したときのことを思い出すと、あのときは、魔獣よ、消えろ。


そう思って付与をしたんだ。


だから今度は、石に同じように魔力を込めた。


「瘴気よ、消えろ」


それに効果があったと聞いてほっとした。


クリフたちが、小声でちょっと重かったとか話しているのも笑いを誘っている。



その時、マーシャルが一歩前に出る。


「石や矢に浄化を付与すれば、瘴気を浄化できる。これは国家として重要な戦力だ」


少し硬い声でそう言ってから、続ける。


「よって、国として神子を保護する」


その言葉に、空気が少しだけ重くなる。


だけど「ルークは冒険者だ」


すぐに、フェルナンドが遮った。


低く、はっきりと。


「保護などいらぬ」


一切の迷いがない声だった。


僕は思わず顔を上げる。


フェルナンドは、そのままマーシャルを見据えたまま言葉を続けた。


「それよりも重要なのは実務だ」


「そうだよ」「そうだよね」「ルークだぞ」とか声がする。心強い。


フェルナンドはマーシャルを睨んだまま


「ルーク。付与にはどれくらい時間がかかる?」


急に話を振られて、少しだけ慌てる。


「えっと……さほど、かかりません」


正直に答えると、フェルナンドはすぐにうなずいた。


「そうか」


短く言ってから、周囲を見渡す。


「騎士団の手配は済んでいる。そろそろ船が着くはずだ」


その言葉に、周囲の冒険者たちがざわつく。


「到着後、冒険者に案内させる」


「瘴気の発生地点を特定し、浄化作業を行う」


迷いのない指示が、次々と飛ぶ。


「道を知っているものは」とクリフを見ながらフェルナンドは話す。


「すまないが、道案内を頼む」


クリフたちは姿勢を正して


「はい」と答えた。


僕はその様子を見ながら、小さく息を吐く。


やっぱり、この人がいると違う。


「すごいな」


思わず呟くと、フェルナンドがちらりとこちらを見る。


「何か言ったか?」


「いえ……なんでもないです」


少しだけ笑ってごまかす。


でも、本音だった。


あのときも、この人がいたから町は助かった。


そして今も、この人がいる。


だから、僕は、前に出られる。


「守るって、こういうことなんだな」


僕だってこの町を守るんだ。

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