32 追いかけるフェルナンド
32 追いかけるフェルナンド
すぐに戻るつもりだった。
だが、現実はそう簡単にはいかなかった。
ハイタック王国から派遣された新たな使者が、俺の足止めをしたのだ。
長い、話し合いが続いた。
しかし、その使者がもたらした情報は、おれにとって決して悪いものではなかった。
「まだ、神子様、オオヤナギ様は見つかりません。こんなに探しているのに」
使者は嘆いていた。
「ミツルギ様は演習で大怪我をされて浄化どころではなくなりました。ぜひともオオヤナギ様を探し出さねばいけません。どうぞこの国で神子様が見つかりましたら、連絡を下さいませ」
正直なところ、ハイタック王国の瘴気がどうなろうが知ったことではない。
けれど、そこで苦しむのはいつだって罪のない民だ。
「ルークなら、きっと見捨てることなどしないだろうな」
とおれは独りごちる 。
おれがルークを守りながら浄化を進めればいい。
そのついでに、ハイタックの連中に目にもの見せてやるのも悪くないだろう。
そう考えて、再会を楽しみに町へ急ぎ帰ってきたのだが……
ルークの姿はない。
それどころか、マーシャルとローレンスの姿も見当たらなかった。
すぐにでも馬を駆って飛び出したかったが、まずは冷静になる必要がある。
おれは自分を落ち着かせ、ルークが滞在していた宿の主人に話を聞くことにした。
「あの子なら、急に出て行ったよ。いい子だったのに、なにか急ぎの用事でもあったんだろうかねぇ」
と宿の主人は困ったように首をかしげる。
なにかがあった。それは確実だ。
俺は次にギルドへ向かったが、そこでも有力な手がかりは得られなかった。
ギルドではルークがいなくなったのを嘆く声が多かった。
俺に行方を知ってるかと聞いてくるやつもいた程だ。
薬師ギルドの連中が、ルークがいなくなったことをひどく嘆いているという話も聞こえた。
ルークの行動を検討する。
休みの日は、よく図書館へ行っていた。
それから、山から港を見下ろしていたこともあった。
そうだ。船が入ってくるのを、あいつはずっと眺めていたことがあったな 。
「船……! そうか、船だ!」
とおれは確信し、港へと走った 。
港の事務所に飛び込み、無理を言って船の運航表を見せてもらう。
改めて確認すると、想像以上に船の数が多いことに驚かされた 。
「これだけの数、どこへ向かったんだ……」
とおれは呟き、定期便の行く先を片っ端から書き留めていく 。
ふと、表の隅にある記載に目が止まる。
「ほー、臨時便なんてものもあるのか」
と俺は指先でその文字をなぞった 。
ルークはどの船に乗ったのだろうか。
あいつは自由だ。だが、今はその自由がひどく恨めしい。
「勝手に……動くなよ」
と、俺はそこにいないルークに向かって苦々しく話しかける。
「そんなに、逃げ出したかったのか?」
と更に尋ねる。
そうだ、きっと逃げ出したのだ。
しつこくつきまとうローレンスやマーシャルに嫌気がさしたに違いない。
あいつのことだ、衝動的にこの臨時便に飛び乗った可能性が高い。
一刻も早く助けに行かなければ、あいつは今ごろどこかで苦労している。
俺はすぐさま騎士団に連絡を入れ、シクレトへ向かうよう指示を出した。
「待っていろ。ルーク。すぐに行くからな」
と俺は決意を口にする。
それから俺は、陸路でシクルトを目指して馬を走らせた
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