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「神子の余分」と言われましたが、中身は最強の神子でした ~入れ替わり召喚で捨てられた僕が、木の実と石で世界を浄化するまで~  作者: 朝山 みどり
第三章

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30 あたらしい生活

30 あたらしい生活


森の奥は、昼間でも少し薄暗い。


木々の隙間から差し込む光は柔らかいのに、足元は湿っていて、油断するとすぐに滑りそうになる。


今日は薬草採りのついでに、少し奥まで来てしまった。


やりすぎたかもしれない。


そんなことを思いながら歩いていると、かすかな音が耳に入った。


「うっ……」


小さな声、人の声だ。僕は足を止めた。



関わらない方がいい。それが正解だ。そう思う自分が、確かにいる。


でも。


足は止まらなかった。音のする方へ向かう。


見つけたのは、倒れている子供だった。


泥だらけで、服も破れている。腕には擦り傷、足も腫れている。


迷子だ。


あぁ、放っておけない。


そう思ってしまった時点で、もう答えは決まっていた。


「大丈夫?」


声をかけると、子供はびくっと肩を震わせた。


「だれ……」


怯えた目で、僕を見る。


知らない大人は怖いよね。


その視線に、胸の奥が少しだけ痛くなる。


「大丈夫。怪しい人じゃないよ……多分」


自分で言って、少し苦笑する。説得力はない。


それでも、できるだけ怖がらせないように、少し距離を取ってしゃがんだ。


「僕はルーク。君は?」


「ポール」


小さな声が答える。



「ポール、怪我してるね。ちょっと見せて」


「やだ……痛い……」


無理もない。


僕はゆっくりと手を見える位置に出した。


「触るだけだよ。すぐ終わるから」


少しの沈黙。


ポールはおそるおそるうなずいた。


その瞬間、僕はそっと腕に手を当てる。


魔力を流す。ゆっくりと、丁寧に。


急げば怖がらせる。


傷の熱が、少しずつ引いていく。


「あれ?」


ポールが目を丸くする。


「痛くない……」


「よかった」


その言葉と同時に、少しだけ息が抜ける。


「すごい……」


その一言で、胸の奥が少し軽くなる。


怖がられていない。


「歩ける?」


「うん……たぶん」


立ち上がろうとして、ふらついて、しがみついてきた。



「手、繋ぐ?」


そう聞くと、ポールは少し迷ってから、そっと僕と手を繋いだ。



「帰ろうか」


「うん」


「あのね、『美味しいリンゴがあるよ』って言われたの。でも見つからなくて……転んだの」


「そうか、痛かったね」


「ねぇ、リンゴ、本当にある?」


少し迷ったが


「僕は見た事ないな」


「そうか」


「この森は子供が入ったら危ないよ。もう入ったらだめだよ」


「うん」


子どもはしばらく黙って歩いていたが、


「ルークお兄さん」


「なに?」


「お姉ちゃん、心配してるかな」


その言葉で、状況がはっきりする。


探している人がいる。


「絶対心配してるよ」


「……怒られるかな」


「多分、最初は怒る」


「やっぱり……」


しょんぼりするポールを見て、少し考える。


「でも、そのあと抱きしめられると思う」


ケントが顔を上げる。


「ほんと?」


「うん。すごく心配してるから」


その言葉に、ポールは少しだけ笑った。


森を抜けると、遠くに人影が見えた。


「ポール!!」


女の人の声が響く。


走ってくる。


そのままポールを強く抱きしめた。


「どこ行ってたの!? 探したんだから!」


怒っているのに、声は震えていた。


安心しているのが、はっきりわかる。


「ごめん……」


ポールが小さく答える。


「怪我は!? 大丈夫!?」


そこで、初めて僕の存在に気づいた。


「あなたが……?」


「森で見つけて、連れてきました」


それだけ答える。余計なことは言わない。


「本当に……ありがとうございます」


深く頭を下げられる。


少し困る。


「大したことはしてません」


そう言って、少し距離を取る。


その様子を、ポールが見ていた。


「ルークさん」


名前を呼ばれる。


「ありがとう!」


まっすぐな声だった。


胸の奥が、じんわりとあたたかくなる。


「どういたしまして」


軽く手を上げる。


それ以上は言わずに、その場を離れた。


背中に、また声が飛ぶ。


「またね!」


足が、ほんの少しだけ止まりそうになる。


だめだ。振り返らない。


ポールが抱きしめられていた光景が、頭に残っている。


ああやって心配してくれる人がいる。


ああやって迎えてくれる場所がある。


いいな、と思った。


でも、それを口にすることはない。


僕には関係のないことだ。


そう言い聞かせて、前だけを見る。


ただ、歩く。


追いかけて来る幻影。追いかけて来て欲しい幻影を振る払うために。



いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

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どうぞよろしくお願いいたします。



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