24 魔獣の襲撃
24 魔獣の襲撃
ギルドの緊急招集の鐘が鳴り響いた。
急いで向かったが、人がどんどん集まって来る。
話を聞いて、背筋が冷える。
魔獣が、こっちに向かっている。
しかも、ただの移動じゃない。凶暴化しているらしい。
到着は明日の朝。逃げ場なんて、ない。
これって瘴気の影響?神子を召喚したってこのためだよね。
神子がいなくても切り抜けられるの?
僕は人混みの中で、すぐにフェルナンドさんを探した。
見つけた瞬間、ほっとする自分がいるのが、少しだけ嫌だった。
近づこうとした、その時。
赤毛の男が、さっと僕の前に割り込んできた。
距離が近い。やけに馴れ馴れしい。
「ルーク、弓は使えるのか?」と赤毛の男が言う。
「いや、使えない」と僕が答える。
「じゃあ教えてやる。遠距離は必要だ」
断る理由を考えるより先に、うなずいてしまった。
周囲の空気が、断ることを許さない。
僕は、赤毛の男から離れると、そのままフェルナンドさんのところへ向かった。
「おはよう。待ってた。明日よろしくな」とフェルナンドさんが言う。
「あぁ。そこの武器は冒険者に渡すのか?」
「うん。予備だ。壊れた時のためだ」
「矢は?」
「最初は防壁から撃つから、支給する」
声を落とす。
「秘密は守ってくれるよね」
「もちろんだ」
少しだけ、息がしやすくなる。
「攻撃力、上げる付与をしておく」
「……頼む」と彼は短く言った。
僕は小さく笑って、その場を離れた。
目につく矢に付与を施していく。
やがて準備が一段落した頃、僕は弓をもらって訓練場へ向かった。
赤毛の男と、大剣を背負った男もついてきた。
弓の持ち方を教わる。
背後から手を取られて、姿勢を直される。
近いのが嫌だ。
逃げたいと思うのに、逃げられない。
ここで嫌がれば、面倒になる。
「力を抜け」と赤毛の男が言う。
集中するしかない。
的を見つめて、矢をつがえる。放つ。
外れた。
何度も繰り返す。
呼吸を整えて、視線を固定する。
当たった。
少しだけ、肩の力が抜ける。その時だった。
「上手いじゃないか」とフェルナンドさんの声がした。
「教え方が良いんだよ」
口が勝手にそう動いた。場を丸くするための言葉だ。
空気が、少しだけ重くなる。
「ちょうど終わるところだったんだ」と僕は続けて、赤毛と距離を作った。
そのままフェルナンドさんの隣に立つ。
安心する。
でも、その安心が、少しだけ怖い。
「助かった、ありがとう。明日は頑張ろう」と僕が二人に言う。
「おう、任せろ」と赤毛の男が答える。
僕はそれ以上関わらないように、その場を離れた。
家に戻って、短く休む。
眠れたかどうかは、よくわからない。
鐘の音で目が覚めた。
もう来た。一人の冒険者としてむかえうつ。
防壁に上がると、遠くから土煙が見える。
数が多い。
「先頭を狙って撃て!」と指示が飛ぶ。
弓を構える。震える手を、無理やり止める。
放つ。当たる。
魔獣が倒れ、後ろがもつれる。
崩れた列に、次々と矢が刺さる。
よし、やれる。
外へ出る合図が出た。外は怖い。魔獣が近い。
横に、赤毛の男がいる。
距離が近い。離れない。
だが、うまく連携ができていると思う。
その時、声が上がった。
「騎士団が来ました!」
一気に流れが変わる。
押し返されて魔獣が、崩れていく。
戦いは、終わった。
気が抜けた瞬間、体が揺れて、赤毛の男に支えられた。
「大丈夫か」
「……平気。ありがと」
本当は、全然平気じゃない。
死者はいなかったらしい。あの状況で奇跡だと思う。
だが、この戦いは、まだ終わっていない。
そう感じて、僕は静かに息を吐いた。
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