ゼンイチの日記 ≪プーの森以降での変化≫
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町に戻ってから、またいつもの日常に戻った――はず、だ。
朝は魔法の訓練、昼は図書館で勉強、午後は気力を用いた戦闘訓練。気づけば、汗と土にまみれて夕焼けを見る日々が再開していた。
例のドリル剣は、しばらく封印することにした。
あれは間違いなく「ロマン武器」だ。対人でも有効だとは思う。というか、多分、一瞬で相手が木っ端みじんになる。そんな物騒なもん、日常で持ち歩くべきじゃない。
今は、ゲイルに借りた一本の刀を腰に差している。見た目は地味だが、手に馴染む。
もしアイスドラゴンの牙が手に入れば、この刀をベースにしたカスタム武器を作りたい――そんな妄想も含めて、刀の扱いには慣れておこうという作戦だ。
ただ、“日常”が戻ってきたと思ってるのは、どうやら俺だけかもしれない。
あの日――プーの森で、マッドグリズリーと死闘を繰り広げてから、ティアの様子が少しおかしい。
過保護というか、過警戒というか。
昼間は常に一緒に行動していて、トイレに行くにも背後に気配を感じるレベル。
夕方になると、今度はガルドが登場して「ゼンイチ、行くぞ」と無言で護衛役にチェンジ。
どうやらティアとガルドは、俺の知らないところで綿密な打合せをしているようだ。
たぶん、あのマッドグリズリーの一件が引っかかってるんだろう。
ゲイルが言っていた「魔族」という単語も気になるが、俺に悟られないように二人とも動いているし……そこは空気を読んで、詮索しないことにした。
俺は俺にできることを、いつも通りやる。それが一番。
ちなみに、そのゲイルだが――
あのとき吹っ飛ばされた衝撃で、左腕・肩・肋骨、合計10か所以上骨折していたらしい。
本来なら数か月の重傷コースだが、ギルドマスターという立場をつかって教会で優先治療をさせたとのこと。
……そう、この世界でいう“教会”は病院のことらしい。
最初は「神に祈る」的な宗教施設かと思ったが、実態は医療機関だ。
調べてみたら、今から100年ほど前、治療を担う施設が「教会」と呼ばれるようになり、そこから徐々に病院の呼称として定着したらしい。
おそらく、RPG好きな転移者の悪ふざけ……いや、影響だろう。納得しかない。
ちなみに教会はこの国で唯一、治療の魔石や解毒の魔石を保管する権利を持っている。
当然、「復活の魔石」みたいな便利アイテムもあるんじゃ? と淡い期待を抱いたが、そううまくはいかなかった。
命には限りがある。だからこそ、誰かを守る力が必要なんだ――そう思うようになった。
今日も夕焼けがきれいだ。
ドリルじゃない刀を手に、魔法と剣の訓練を終えて、帰り道をティアと歩く。
たとえこの日常が静かな戦いの前触れだとしても、俺はそれをちゃんと受け止めて、生きていきたいと思う。
――明日も、全力でいこう。




