07.昨日の今日で面接するのは渋谷のアットホームな職場
「ここが山音荘。2号室を使ってね。キッチンとトイレは共同。布団は使ってないやつをおいてあるから使ってね。もう夜遅いから、とりあえずゆっくりするといいよ。」
山音に案内されたのは六畳一間の小さな部屋。
何もない部屋だけど、さっきまで池袋の夜をさまよっていたリリアにとっては十分安心できる場所だった。
ドアからひょっこりと塩野谷が顔を出すと、明日の予定を言ってきた。
「社長に連絡したら午前11時に会社に面接にきてくれって。」
リリアはこの世界の連絡手段の速さに驚いた。
さっき話したことが相手のトップに伝わって、明日には顔を合わせるというのだ。
「もう連絡がつくなんて、どんな魔法を使ったんですか!?」
「魔法?slackだけど。」
slack...何とすごい魔法だろう。
この世界では魔法使い以外の人間も魔法が使えるということか。
驚いているリリアをよそに、塩野谷は話を進める。
「会社は渋谷にあるから、明日は10時すぎには山音荘を出発しようか。上池袋からは40分くらいかな。僕はフレックスで出社時間が自由だからリリアさんに合わせるよ。僕は1号室にいるから、困ったことがあったら何でも聞いてね!」
「えっと...実は時計も持っていなくて...」
「もしかしてスマホも?」
リリアと塩野谷の会話を聞いていた山音と星那は同じことを思っていた。「この子は本当に身一つで茨城を飛び出したんだ...相当な覚悟があって東京にきたに違いない」と。
「とりあえず、明日は8時に2号室のドアをノックするのでどう?とりあえず明日もデスマがきついからアニメ消化してから寝るわ。おやすみー」
塩野谷はデスマが相当きついのか、リリアの突っ込みどころは悉くスルーして部屋に戻っていった。
デスマがきついと言いながらもアニメを消化する塩野谷への突っ込みもそこそこに、山音もおやすみ、と言って部屋に戻っていった。
2号室に残されたリリアは屋根のある部屋に感動しながら床についた。
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「うちの会社、アットホームな社風だからリリアさんも働きやすいと思うよ!」
塩野谷は山手線の中で職場の説明をしていた。
無事に時間通りの出発にこぎつけたリリアはその説明に耳を傾ける。
出勤ラッシュの時間からズレた山手線は幾分過ごしやすく、渋谷駅まで会社について色々と聞くことができた。
アットホームな社風であること。
風通しがよく、社員同士のやりとりが活発なこと。
女性社員が少ないこと。
未経験者でも採用されること。
社員旅行で交流を深めること。
仕事にやりがいがあること。
残業は多いけどフレックス出社なので塩野谷的にはそこまで大変ではないこと。
現代日本のIT企業に勤めていたら、これはヤバいと思う要素満載だが、そこは異世界からきた魔女リリア・サクラトパーズである。
そういうものなのかと真面目に話をきいていた。
リリアがいた異世界も働く者食うべからず。生きていくために仕事をしていた。
星那や山音との会話や、今までのこの世界の観察から世界でも生きるためには仕事が必要だということはひしひしと感じているのだ。
リリアは、まずは仕事を得なければ話にならない。この面接を合格しなければと考えていた。
渋谷駅を降り、ハチ公口から10分弱歩いたところに会社はあった。
「スーパーハイパーテクノロジー?」
怪しげな名前だが、これも異世界からきたリリアには通じていない。
「まぁ、すごい技術をしてますよ、ってことかな。」
塩野谷は適当な返しをすると、会議室にリリアを通す。
「とりあえずここに待ってて。社長は...まだ出社してないみたい。」
目の前にペットボトルの水を置くと執務室に入っていった。
リリアは水を飲みながら一息つく。面接は第一印象が重要だ。ここで怪しまれたら当局に通報されてまた魔女狩りをされるかもしれない。
そんなことを思っていた。




