プロローグ-燃え盛る炎の中で-
燃え盛る炎は少女の体を包み、その命を燃え尽くそうとしていた。
その少女は悪い魔女だと、人々は言った。実際のところどんな悪行をしたかなんて誰にもわからない。
しかし、この世界では魔女というだけで悪なのだ。魔女というだけで非力な人間の脅威となると。
根拠なき恐怖にかられ、その少女を木にくくりつけ、火あぶりにしているのだ。
「この所業、決してゆるさぬぞ」
声にもならぬ声で、振り絞られた一言を最後に少女は目を閉じた。
自慢の金髪は燃やし尽くされ、雪のように白い肌は火傷でただれ、元の姿などとうにわからない。哀れな姿あそこにあった。
使い魔の黒猫はとうの昔に息絶えてしまった。少女と同じ、魔女狩りの標的なってのことだった。
死ぬ瞬間は寒いというが、炎に包まれたその体は熱かった。
魔女とて人間である。最期は人間らしく死ぬことすらできなかったのかと、少女は自分の運命を呪った。
呪ったところでどうにもならない。この炎の中炭となり、土の一部となれば幸せなのかもしれない。
それでも苦痛が彼女の体を襲う。
体が熱い、息が苦しい、つらい、つらい、つらい
最期の最期、どうにか力を振り絞り目をあけると...
「何、この人混み...」
さっきまで自分に向けられていた憎悪の視線は一つもない。それどころか少女を見るものは1人もいない。
服装も自分が着ているものとは違う。そして、そこにいる人々は机に並べられた書物を一心不乱に眺め、紙幣と交換をしていた。
先ほどまで火あぶりにされていた世界とは全く違うことは分かったが、どうも状況が読み込めない。
さきほどから感じていた暑さは人混みによるものだった。いつから炎の暑さから人混みの暑さにすり替わったのかも分からない。
混乱する頭を抱えながら、少女が入り口らしきところを見ると、こう書いてあった
「技術...書典....?」
ここは池袋サンシャインシティのイベントホール。現在行われているのは技術同人誌の即売会。
魔女狩りにあった魔女は現代日本に転生してしまったのだ。




