13才と31才と(後編)
「すっごい、内容が良かったですよね。歴代シリーズのキャラクターが合流してくるっていう、お約束の展開はしっかり押さえつつ、テーマはとてもシンプルで」
「ヒロインたちの目的は結局、一人の孤独な少女を元気にすることだものね。スーパーマンの映画だったら、地球や宇宙の平和を守る展開になるんだろうけど。日曜朝アニメのヒロインは、孤独な少年少女に寄り添うキャラクターなのよ。よくわかってるわぁ、映画の製作陣は」
映画館のロビーでソファーに腰掛けてから、13才と31才の二人は感想を語り合っている。
「私、心の何処かで思ってたんですよ。私は物語のヒロインに、なれないんだって。ヒロインになるような子は皆、ポジティブで輝いてて、そういう要素は私に無いですから」
年下の少女が、一息ついてから再び、話し出す。
「でも実際は、内向的なのに活躍しているキャラクターだっているんですよね。以前のシリーズから合流してきたヒロインは、『怖くない、怖くない』っていう呼びかけが決め台詞で。あの言葉は、孤独な女の子の心に、きちんと届くと思うんですよ」
「キュア・リリアンのことね。女主人公っていうと一人に限定されがちだけど、日曜朝アニメのテレビシリーズや映画は、複数のヒロインがいるって考えたほうがいいんじゃないかしら。最新シリーズなんか、特にそうじゃない。変身するときは二人一緒が基本だものね」
二人の目は輝いている。大好きなアニメを語り合えば、年齢の差も関係ないのだった。
「ええ。とにかく、あの映画は孤独な少年少女、そして孤独な大人への呼びかけなんです。ヒロインになれなくても、貴方には貴方の価値があるんだよって。頑張れば、もっと輝けるかもしれない。ヒロインに近づけるかもしれないって、そういう勇気を与えてくれる話でした」
「そうね。映画の中でプリズムっていうのか、光を煌めかせるアイテムがあったじゃない。あれは一種の増幅器で、『心の中にあるレンズ』を象徴してると思うのよ。そのレンズは、心のネガティブな部分を増幅させることもあって。でも逆に、心のポジティブな部分を増幅させることだってできるものなの。そして、孤独な少女のレンズに光を与えてくれるのは、友だちや外界からの助けなのよね……」
二人は映画の話に夢中であった。一人で映画を観に来ていたときより、ずいぶん明るい表情になっている。
「いつもながら、ヒロインがシリーズを越えての共演をするって展開が、もう激熱で激熱で! 孤独な少女の闇に、他シリーズのヒロインがハグで寄り添ってくれるところで泣いちゃいましたねぇ、私」
「シリーズを越えた共演ってことで言えばさ。最新シリーズって、物語の時代が1999年じゃない。だから、どうやって時代が違う他シリーズのヒロインと会うのかなって思ってたんだけど。舞台を夢の世界にすることで、時空を越えた共演が可能になってて感心したなぁ。まさしく、夢の共演ね」
「来年も劇場映画化が決定してますし。そのときは、細かい理屈を抜きにして、またヒロインたちは共演してくれますよ。公開が今から楽しみです!」
二人はソファーから立ち上がって、場内の売店に向かう。これから作品のグッズを買うのだ。
「映画のパンフレットは絶対、買いましょう。毎回、楽しみにしてるんです」
「もちろん買う、買う! 挿入歌の歌詞が必ず載ってるのよね。映画のメッセージが込められてて、いつも読み返してるの」
すいませーん、パンフレットくださーい。そう二人は、係員に声を掛けた。
「ああ、日曜朝アニメのものですね。あいにく、今あるのは残り1冊だけです」
その後、二人はパンフレットを巡って、しばし殴り合いのケンカを始めて。結局、パンフレットは割り勘で買って、二人で貸し借りしながら読むこととなった。お互い、映画館をまたいで、意外と近所に住んでいたので。
今年の日曜朝アニメ劇場版は、シリーズ歴代興行収入で1位を記録したそうだ。来年の映画は、更に人気が上がるかもしれない。とりあえず二人は、来年の映画も一緒に観に行くことを約束している。




