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Harmagedōn  作者: ゼロ
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第一章 「出会い」

「なんだ…ここは…」

空からの導きによって異世界へと辿り着いた。

その世界は、暗闇に包まれた森の中だった。

不可解な現象によって導かれた大樹は唖然としていた。


「一体何なんだよ…何がどうなってんだ??」

途方に暮れながらも歩き始めて、周囲の様子を伺う。


今し方、自分の言った言葉を思い出す。


゛一度でいいからさ、冒険とかしてみたいよな!゛


とはいえ、こんな非現実的な展開にはついていけなかった。

冒険をこころざしはしたが、いざ突然起きると動揺が隠せなかった。

再三に繰り返される日常に不満は持っていたのだが、こうも荒唐無稽だと不気味さに不安を覚えてしまう。

あの謎の声の主人は一体誰だったのだろうか。

そう疑問を浮かべていくと、一寸先に人影を目撃した。


「誰だ?」

大樹はすぐに声をかけた。

暗闇に包まれていたので容姿ははっきりとは解らなかったが、シルエットからして自分と同年代だろうか?


「浅倉……?浅倉じゃないか」

そう言って近づいてきた人影がはっきりと見えてくる。

声の主は、あまりにも予想外な人物だった。


「楠原?楠原なのか……?なんでお前がここに?」

姿を現したのは、楠原レン。

浅倉大樹の通う小学校の同級生だった。

同じクラスメートなので、面識はあったがはっきりと話した覚えはあまりない。

金髪の美少年でクラスの女子からは好感を持たれる、いわゆるモテる男子生徒だった。

だが、楠原はそれほど積極的な性格ではない。

楠原は人付き合いは苦手なようで、異性から声をかけられても無愛想な態度しか取らない。

そんな生徒がなぜモテるのか、と大樹は疑問に思っていたが、顔が良いからモテるのだろうと思っていた。

部活にも活発で、社交的な人付き合いをする大樹とは相反する性格の美少年だ。

それに、女子とは深く人付き合いをすることはなく、同性とスポーツなどに励んでいる女っ気の無い大樹とは本当に正反対だった。


「こっちが知りたいところだ。街を歩いていたら変な声が聞こえて、見上げたら空を飛んでいたんだよ」

こんな話をして、自分はどうかしているのかと楠原は思ってしまう。だが、それが事実だった。こんな話をして、信じてもらえる訳が無いと思っていた。

だが、現実はそうでなかった。

「え?お前も?」

大樹は楠原が思っていた返事とは予想外の答えを出した。

まさか、自分と同じような不可解な超常現象を起こしている者が身近にいるとは思えなかった。

「お前もって……浅倉もなのか?」

楠原は大樹に身を乗り出してくる。

「ああ、家のベランダにいて、突然空が真っ暗になって手を上げたらこんなとこに来た」

状況を知らぬ者が聞いたら誰がこんな話を信じるのだろうか。

まさか自分のクラスメートが意味不明な現象を同じように体験するとは思ってもいなかった。

「……はぁ、夢でも見ているのか?」

楠原はため息をついて、上空を見上げて不可解な現象に不服があるようだった。


すると、大樹は楠原の頬をつねり出した。

「痛ッ!何をする!?」

「夢だったらここで覚めるはずだろ?」

楠原は大樹の手を払い、ぎっと睨みつけた。

「フツーそういうのは自分の頬にするものだろ……バカ」

「ま、痛いんなら夢じゃないんじゃないか?」


「ところで、お前もこんなの持っていないか?」

突然、切り替えるように楠原は大樹に問いただした。

「?」

「これだよ。ポケットに入っていたんだ」

楠原が取り出したのは青の腕時計だった。

高級とは言い難いが、レトロな腕時計で古風を思わせるような代物だった。

「なんだそれ?お前の腕時計じゃないのか?」

「いや……こんな腕時計、俺は知らない」

そう言われて咄嗟に大樹は自分のポケットを弄った。すると、見慣れない感触がして、すぐさま゛それ゛を取り出した。

大樹のポケットに入っていたのは真っ赤な腕時計だった。

「なんだこれ……俺もこんな腕時計、知らないな」



──それはただの腕時計じゃないポル。


「え?」

咄嗟に周囲から声がして、二人は揃って周辺を伺った。

すると、自分達の真上に変な生き物がいた。

真っ赤なマントを羽織っていて、二頭身の魔法使いのような風貌をしていた。茶色い杖も持っている。


「…………」

二人は、呆然としながら謎の生き物に注目していた。

「何を見ているポル。ポルの顔に何が付いてるかポル?」

滑稽な語尾を付けて喋る生き物は浮遊していたが、地面に着陸した。


「えーっと……浅倉大樹と楠原レンに間違いないポルね?」

魔法使いの生き物は二人に質問した。

すると、大樹はまた楠原の頬を手でつねった。

「ッ!だから痛いって!やめろ!!」

「いや、また夢なのかどうか確かめようと…」

「それは自分の頬にしろって言ってんだろ!!」

楠原は大樹の不躾な行動に激昂する。


「僕の質問に答えるポル……時間を無駄にはしたくないポル」

「……ああ、一応質問には答えるけど、俺は楠原レン。こいつは浅倉大樹。名前はそれで合ってるよ。なんでお前は知ってるんだ?」

「主様から話は聞いているポル……さっさと僕についてくるんだポル。それから、僕の名前はポル。お前じゃないポル」

ポルと奇妙な語尾を付ける謎の魔法使いはせっせと背を向けて、歩行を始めた。

大樹と楠原は慌てるようについていく。


「なあ?なんなんだここは?ここは一体どこなんだ?お前は誰なんだ?なんで俺たちはこんな所にいるんだ?」

「質問が矢継ぎ早だねぇ。一個一個答えるのも面倒だけど、ポルは人柄が良いから正直に答えるポル。君達は選ばれたんだ。君達がさっき言った腕時計……だっけ?その゛紋章゛がその証拠ポル……そして、ここは君達の世界の裏側の世界ポル。人類誕生から存在していたけど、こっちの文明の方が遥かに優れているポル。人類と共存しあうことなく互いに独立しあっていたけど、世界の異変によってそれは崩されたポル。そして、ポルはその異変を治す子供達を守護するように選ばれた、言わば君達の付き人ポル」

淡々と語る言葉に、真剣に聞いてはいたが、先ほどと変わらず内容は意味不明だった。

人類誕生からこの世界は存在していた?互いに独立していたが、その均衡が崩されてしまった?

次々にポルが語るおとぎ話のような物語には、驚かされることばかりだった。

「……世界の異変って何だよ?」

大樹はポルに問いただした。

「この世界と君達の世界のバランスが壊れたポル。その壊れた原因は分からないポル……主様から聞いた話では」


「きゃー!!」

ポルが語ろうと瞬間、遠くから女児の悲鳴が聞こえた。

「何だ!?」

楠原は身構え、咄嗟に声をした方角へ向いた。

「今の悲鳴は……間違いない、新たな選ばれし者ポル!!」

楠原が向かうよりも前に、ポルが浮遊の魔法を使って再び空を舞う。

「さあ、行くポル!!君達の出番ポルよ!」

「は?俺たち……?」

「ぐずぐずしている暇は無いポル!早くするポル!!」

「うわあ!!」

また新たなに゛魔法゛を使って、二人の少年を浮遊させた。

浮遊した少年二人は引き寄せられるように前へ進んでいく。


「な、なあ…これって本当に夢じゃないのか?」

「さっきお前につねられて痛かったんだ。夢じゃない!嘘だと思うなら今度は自分の頬をつねってみろ!」

「………痛い」

「くだらないやり取りをしている暇は無いポル!!戦いの準備に備えるポル!!」


ポルはすごいスピードで大樹と楠原を引き寄せていく。

徐々にスピードは上がっていって、二人は更に動揺した。

゛戦いの準備って?゛

二人の浮かんだ疑念はそれだった。

またこれから何か始まるのだろうか───

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