第34章 もっと深く愛せるための別れもある
「瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ」
という万葉集の歌が頭に浮かぶ。
そう、どれだけ周囲が反対しても、誰が見ても不釣り合いだと思う相手でも、
絶対に不幸になる相手だとしても、なぜか忘れられない、縁が切れない、求めてやまない相手がいる。
運命の相手というのは本当にあるのだと思う。
何度生まれ変わっても離れられない、離れたくない相手がいて、
いくら抗っても心が、魂が互いを引き寄せる。
あるべき自分の生まれてきた意味を求めて、人は彷徨する。
たった一人の、自分の扉を開いてくれる運命の人と出逢うまで。
人生は自分探しの旅であり、運命を重要として受け止め、川の流れのように、
たとえどんな苦難や悲惨な現実があったとしても諦めず、時を経れば道もまた開かれる。
どんな誤解も、行き違いも、悩みも悲しみも、今の幸せのために必要だったことのように思えた。
全てが上手くいくことなんて絶対にありえない。辛いことも、悲しいことも、悔しいことも、
やるせないことも、思い通りにならないことも。
それは全て、人生を深くする調味料のようなもの。
あの耐え難い22歳の別れがあったからこそ、
30歳の誕生日の喜びが宝石のように輝きを増している。もう絶対に手放さない。
これからどんなことがあっても。
悠以外、私はもう男を愛せないことは骨の髄までわかっているから。




