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人類滅亡学者の旅路  作者: sakura
探索
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40/59

春

 あれから数ヶ月が経った。

 

 相変わらず僕は一人。

 街中で異臭を放っていた変死体も今では乾いたオブジェと化している。


 春一番らしき風が吹き、春めいた兆しも見える。

 僕や人類に変化は無いけど、季節は変わりゆくのだ。

 毎日がイベントの無い変化の無い暇な日常なので時の流れを感じないから、季節の移り変わりは、時が流れているのだと分かり少し安心する。

 

 変化の無さは、永遠に同じ一日を繰り返してるようで閉塞感がある。

 贅沢なものだ。

 あれほどに平凡な日常を倦んでいたとゆうに、それがなくなったら、それはそれで不満を抱く。

 全く人とは度し難い存在だ。


 それが人類の特徴的であり、僕もそれを感じているのなら僕自身も愚かなる人類の一員たる証明になる。

 あと髪が伸びたので鋏で適当に前髪を切る。

 もちろん爪切りで爪も切っている。

 お風呂も毎日入っている。


 驚いた事に電気ガス水道のライフラインは、今尚健在である。凄いぞ人類よ。人間不在でも長期間稼働してるとは吃驚だよ。ありがたやと、いつも手を合わせて恩恵を被っている。

 だが、いつかは稼働停止するだろう。

 その時、僕には技術的素養がないので直しようがない。

 だから、備えなければならない。


 今は人類の遺産が僕を生かしてくれている。

 人は社会があって初めて生きることが可能だが、僕一人で社会を構成する諸々の維持は不可能。

 社会的遺産が失われた時が、僕が死ぬときだ。

 だからこそ、その時の為に備えなければならない。



 風が吹き抜ける。



 胸の中が虚ろで、その穴に風が吹き抜けていくようだよ。

 …もう、何ヶ月も喋っていない。

 会話は、もっぱら、もう一人の私と脳内で喋り合う。

 もし本当に僕一人だったら、狂っていたかも知れない。

 それ程に孤独感とは、人間の心を苛むのだ。

 もっとも一人の身体に人格が二人もある時点で、僕は狂っているのかもしれない。


 今は、もう一人の私は眠っているようだ。

 どうやら危機感がなく図太い神経をお持ちのようだ。

 まあ、でなければ、あちこちに散らばる変死体を無視して今まで一人旅などできようか。

 …凄いぞ、私。

 これぞ、自分で自分を褒める行為…自画自賛です。


 風はまだ冷たいが、陽射しは暖かい。

 春が近いのだろう。



 人類の探索は続けている。

 検証しなければ、人類滅亡を証明出来ないからな。

 僕、人類滅亡学者であるから。

 この設定は、鉄板でまだ僕の中で生きている。


 今はホームセンターを中心に、周囲をグルグル回り探索している。

 見渡せば、空も人工物も残っているのに人だけがいない。

 実にシュールで、恐ろしい景色だ。


 たまに猫に出くわす。

 あの太った猫だ。

 こちらを見て、機嫌が良ければニャンと鳴き、近づいてきて身体を足に擦りつけていく。

 機嫌が悪いときは、ソッポを向いて去っていく。


 …な、なんて自由な猫だ。


 彼ら猫には、人類滅亡など全く関心が無いのかもしれない。或いはどうでも良いのか。

 もし人語を解して、喋って人類滅亡の話題を振ったら、

「おやおや、今日は良い天気ですね。人類滅亡?そう言えば最近二本足を見かけませんね。気づきませんでしたニャ。」

 …などと言いそう。


 むう…恩知らずめ。


 だが猫は、それで良い。…それで良いのだ。





 




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