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ロストカラーズ  作者: あすか
第三章 不死王討伐
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第64話 対面しよう

 ホリンの影を追いかけながら城へと向かっていると、赤い鎧を着けたスケルトンが増えてきた。こいつらが元々赤の国の兵隊だったんだろう。まぁ鎧を着けただけなら、強さはそう変わらない。【毒の霧】で洗脳するだけだ。


 気にせずに先に進んでいると……あれ? 洗脳に掛からないスケルトンがいる? 【毒の霧】に入っても気にせずに俺に向かってくる。


 どうやらコイツらは多少の耐性があるようだ。ちょっと【毒の霧】の威力を上げるか?

 いや……違うな。俺は前方――スケルトンの先を確認する。そこにはスケルトンじゃないヤツがいた。アンデッドではなさそう。……ヴァンパイアか? 明らかにスケルトンよりは格上の敵だ。


 もしかしたら幹部クラスの敵かもしれない。流石にここに来ているのは、ヘンリーだけじゃないだろう。精鋭の部下も連れてきているはずだ。

 もしかして、アイツがいるから【毒の霧】の効果がないのか? ちょっと気になるな。俺はあの幹部っぽい奴の所へ行ってみることにした。


 向こうも俺が近づいてくるのに気がついたようだ。近くのスケルトンに命令を出す。だが、遅い。俺は一気に敵に詰め寄る。


「な、早い!」


 幹部が慌ててるが、すでに手遅れだ。スケルトンが行動を起こす前に敵幹部を捕まえる。もちろん殺さずに生け捕りだ。あわよくば情報を手に入れたい。


 攻撃を受けると思って身構えた敵は、まさか捕まると思わなかっただろう。すんなりと確保できた。そして素早く離脱。先ほど同様屋根までジャンプする。


「さて、聞きたいことがあるが、多分素直に話さないだろう? ルーナ達から見えなくなるほど離れるわけにもいかないし、時間もないし早めに終わらせてもらうぞ」


 そう言って俺はこいつに【自白投与】の魔法を掛ける。……無事に魔法は成功したが、かなりの魔力を使った。中々強いな。


「さて、では話を聞かせてもらおうか」



 ――――


 ヘンリーは今回の遠征で、本人と三人の幹部しか連れてきてなかったようだ。コイツはその一人のようだ。

 確かに中々の魔力を持っていたが、このレベルで三大幹部の一人なら、残りも大したことないだろう。

 ちなみにこいつはヴァンパイアらしい。実力的には、過去に倒した偽ヘンリーと同レベル感じの強さだ。


 以前なら、霧状態で逃げられたり、コウモリ化して逃げたりと捕まえるのも一苦労だっただろう。

 しかし今や魔力無効化を覚えた俺の敵ではない。この辺り一帯に【毒の霧・魔力無効化】を発動するだけで相手は魔法が使えなくなる。


 ただし、これは霧の外に出られたら無効に出来なくなる上に、結構集中しないと出来ないので、戦闘には不向きだ。こうやって捕まえている時ぐらいしか活用できない。


 それにしても……いくら何でも三人は少なすぎだろ。何を考えて……と思ったのだが、本来なら、ヘンリー達はまだ行動を起こす予定ではなかったらしい。隠密行動中だから少な目で活動していた。確かにそれなら理解できる。

 それを急遽、昨日行動を起こしたか? それは、近日中に俺達が攻めてくると、タレコミがあったからだそうだ。タレコミ? 一体どういうことだ?


 コイツは誰がタレこんだのか知らなかったが……とりあえず、そのことは後で考えることにした。とにかく、少しでも多くアンデッド兵を増やすために、急遽町全体を襲うことにした。ヘンリー達の感覚では明日俺達が来るだろうと予想していたから、間に合うと思っていたようだが、予想以上に俺達の方が早かったという訳だ。


 トオルの転移で近くの村からやって来たから早く着いたのだが……予想以上に俺達の情報がバレてないか?


 また、ヘンリーがとった行動は、それだけでなかった。俺達が来ることによって、手薄になったシクトリーナを落とす。その為に、不夜城からシクトリーナへ侵略を開始したそうだ。

 明日来る予定の俺達への人質にする為に、時間的にはちょうど今頃シクトリーナを攻めている頃だという。……姉さんたち大丈夫かな?


 今のままでは連絡が取れないから、少し心配だが、ここで引き返すよりも先に、ヘンリーを倒した方が早い。

 残る大物は幹部が二人とヘンリー、それからこの城でアンデッドになった兵にも何人か強いやつがいるらしい。


 まぁ強いと言っても、この幹部レベルで強いんなら、大したことはないはずだ。ルーナやトオル、エキドナなら片手間に倒せるレベルだ。ってことは、やはり敵はヘンリー一人ってことだ。


 このヴァンパイアは一応殺しておく。復活されても面倒だし、こいつさえ殺せば、この辺りのスケルトンも大人しくなるだろう。それから、俺の攻撃がちゃんとヴァンパイアに効くか確認する必要もある。


 【魔力無効化】を付与した武器なら確実だろう。なら【魔力無効化】以外の毒はどうだろう?

 一応この一年で色々と対策を考えてきた。

 まずは潜伏系の毒だ。すぐに発動しない。しばらく時間をおいてから発動させる毒だ。ある時一気に毒が回る。コンピューターウイルスをイメージしてみた。


 次に感知系と追尾の毒だ。敵が使った魔力の残滓から敵を追跡して毒を食らわせる。敵がその場からいなくても追跡できるのはいいアイデアだと思う。


 で、対ヴァンパイア用に作った毒がこの二つを合わせたような毒だ。たとえ霧状になっても霧の一粒に毒を潜伏させる。その後人型に戻った際に体中に潜伏した毒が蔓延する。

 地球であった害虫を巣まで始末する害虫コロリをイメージして作った。


 さっそく今回はこれを使ってみようと思う。一旦【毒の霧・魔力無効化】を解除するだけでこいつは霧状になって逃げだすだろう。

 そこにあらかじめこいつの魔力を覚えさせた毒を発動して追尾させる。敵地に帰った時点で毒を食らわせる。こいつが他の幹部を巻き込んで毒をまき散らす。たとえ幹部たちが霧状になって逃げても、霧の一粒でも毒に感染すれば、元に戻った時点で死に至る。うん、これで行こう。


「よし、一思いに殺してやろうか」


 そう言って俺は【毒の霧・魔力無効化】を解除する。


「ふははっ馬鹿め油断したな! わざわざ霧を晴らすとは……!」


 幹部の奴はそう言って霧状になって逃げていく。……えっ? 本当にこんなに上手くいくの?

 ってか、これで効かなかったら流石に恥ずかしいな。失敗しないように祈りながら、俺は【毒の自動追尾】(ホーミング)を唱える。


 後はあいつが逃げ切った場所で、魔法を発動させれば、そこにいる敵は死ぬはずだ。最低でもこいつは死ぬ。後は待つだけなので、ここで出来ることはない。俺は先に進むことにした。


 しかし……やはりシクトリーナ城のことが気になる。姉さん達大丈夫だろうか?

 それと、タレコミも気になるな。俺の仲間で情報を流す奴はいないはず。

 もしかしてセツナが捕まって情報を抜き出された? とも考えたが、時系列が違う。もしセツナが捕まったのであれば、それは今日の事だ。今朝まではリンと行動していたはずだ。


 ヘンリーが情報を知ったのは昨日以前になるはずだ。だからセツナではない。あと、考えられるのは一人。……エキドナ。ちゃんと和解したんじゃなかったのか?


 もし奴がここにいるとしたら……さっきの瘴気は、ヘンリーじゃなくあいつの仕業じゃないのか? 今思うと、あの瘴気はヘンリーの魔法にしては強力すぎた。下手したらルーナやホリンにダメージが入ってた。ヘンリーの攻撃ならそこまで強くないだろう。もうこれはヘンリーどころの騒ぎではないかもしれな。


 急がないとセツナやルーナが危ない!


 これ以上はスケルトンを相手にいている場合じゃないな。俺はスケルトンに会わないように、屋根を飛び移りながら追いかけることにした。

 下のスケルトンは洗脳したスケルトンにお任せだ。スーラの分身は……すまん。ゆっくり追いかけてきてくれ。


 屋根がない場所は木のてっぺんや、出来るだけ高いところを渡る。そうやって飛び越えて行くと城の前まですぐに到着した。

 上空を見上げるとホリンの姿が見える。もちろん背中にはルーナを乗せている。


 どうやら上空にはレイスが結構な数いて、それの処理に覆われているようだ。

 そしてルーナの目の前には……いた! 奴がヘンリーだろう。偽物と同じ顔をしている。黒い翼を使って空を飛んでいる。


 俺は足に魔力を集中し高く飛び上がる。魔力を集中させることで、一瞬だけ瞬発力を上げる。ルーナから教えてもらったんだが、本当に便利だ。属性関係なく筋力が増強するため使い勝手が大変良い。


「えっ? シオン様?」


 突然空中に現れた俺を見て驚くルーナ。まぁそりゃあ驚くだろう。慌てて俺を拾うホリン。


《シオンちゃん!》


 笑顔? かどうか分からないが、喜んで近づいてくるスーラ。


「ただいま。大丈夫だったか」


「ええ、問題ありません」


「辺りにレイスがいっぱいいるし、目の前に魔王がいるみたいだけど?」


「全く問題はありません」


 一切表情を変えずにルーナは言った。


《シオンちゃん。私が渡した私は?》


 何とも哲学的表現だが、スーラの分身の事だろう。


「……すまん重かったから置いてきた」


《重っ!? ……もうシオンちゃんキライ!》


 そう言ってルーナの方にジャンプする。スーラも女の子? だし重いは禁句だったか。

 いつもならすぐに謝るところだが、今回はそうはさせてくれないみたいだ。


「おやぁ? 誰かと思えば以前私を殺した人間ではないですか?」


 コイツもスーラと同じように哲学的なことを……。にしても、本体も随分と人を小馬鹿にした話し方だ。


「あなたにも借りを返さないといけないのですがぁ、今はそこのメイドに用がありましてねぇ。大人しくしてもらえないでしょうか? そうだ! 代わりに部下が相手になりましょう」


「部下ってあれか? クッソ弱いヴァンパイアか? さっき地上で出会ったけど、本気であの弱さで幹部なのか? 泣きながら逃げていったぞ」


 そう言えばアイツはたどり着いたのか? いや、まだ【毒の自動追尾】が発動してない。アジトが遠いのか、アイツがとろいのか。全く使えない奴だな。


「貴様……シャムザに何をした?」


「シャムザ? ……そんな名前だったのか。いやあいつには色んな事を教えてもらったぞ。ここにいる幹部が三人しかいないことや、何故急に城下町に行ったか。来てるんだろう? ヤツが?」


 俺の言葉にヘンリーの顔付きが変わった。


「貴様は……一体何者だ? 何故あの方の事を知っている? 何故あの方がここにいることを知っていて、そんなに平然としていられるんだ!!」


 おうおう、ヘンリーに余裕がなくなってきたな。


「さて、誰なんだろうな? ま、お前の敗因は、こちらのことを知らずにちょっかいをかけてきたってことだ」


「敗因? 私が負けるとでも? これを見ても私の負けだと思いますか? カミラ! 連れてきなさい」


 ヘンリーが叫ぶと、背後にある城のバルコニーから女の吸血鬼が奥から現れる。


「セツナ!!」


 ルーナが叫ぶ。カミラは十字架に磔にされたセツナを持ってきた。セツナの意識は無さそうだが、死んではいないようだ。


「ふふっ、どうですか? 私に手を出すと彼女がどうなるか分かりませんよぉ?」


 形勢逆転とみたか余裕を見せるヘンリー。


「それにぃ、今頃私の部下達があなた方の城を占領している頃ではないでしょうか? ルーナさぁん、あなたがここにいるから、占領はきっと簡単だったでしょうねぇ」


 どうやら本当にシクトリーナを攻めているみたいだな。しかし……セツナが囚われている以上どうしようもない。

 とりあえずここは大人しくして、トオル達を待つしかないか。

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