第54話 見送りをしよう
「お主ら! 本当に同盟を結ぶ気があったのか! あれでは宣戦布告も同然ではないか!?」
帰ってきて早々エキドナに怒られた。もちろんいつもの正座体制だ。最近正座させられることが多くなっているのは気のせいか?
場所は会議室だ。エキドナ以外にもルーナや姉さん、エキドナ側もラミリアやハーマインがいる。こんな皆の前で正座とか、本当に罰ゲームだよな。
「だってさ。ガツンとやれって言ったのはエキドナじゃないか。それに大爆笑だったじゃないか」
あれだけの爆笑なんだ。エキドナだって共犯だろ?
「馬鹿もん! 確かにガツンとやれと言いはしたが、誰が漫才をしろとは言っておらん! 流石にあれはやり過ぎじゃ。そもそもじゃ……一体誰が初対面の元魔王に向かってジジイなどと言うと思うか! 妾は敬語じゃなく、妾に対する話し方と同じで良いと言ったつもりじゃったぞ」
それならそうと、ガツンとじゃなくてハッキリ言って欲しかった。ってか、そもそもトオルが……。
「俺はトオルがケンカ腰でって言ったから、それに従ったまでだぞ」
俺の言葉にエキドナはトオルの方を見る。
「本当かトオル?」
「だって……僕、あの人たち嫌いだったから」
えっ!? トオルに考えがあったわけじゃないの? ってか、トオルが感情で動くなんて珍しいな。トオルが人のこと嫌いなんて言うの初めてじゃないか?
「どうしたんだトオル? 嫌いって、俺達初対面だったろ? 特に嫌う理由はなかったと思うんだが……」
ヘンリーの仲間なら敵だから嫌ってもいいかもしれないが、今はまだグレーだよな? 俺が失礼な態度とっても攻撃しなかったし、ヴァンパイアの説明も丁寧にしてくれた。寧ろ俺的には好感度高かったけどな。
「だって、あの人たち、エキドナくんのことを、蛇女って悪口言うんだよ? 非道いじゃないか」
……んん?
「ん、んんん! ゴホン、ま、まぁそういうことなら仕方ないじゃろ。今回は不問にいたす。じゃがトオルよ。あれは挨拶みたいなものじゃ。妾は全く気にしてはおらぬ。じゃからお主も気にするでない」
うわー……。エキドナの顔が真っ赤になっている。ってか、えっ? 朝から何となく思ってたけど、トオルとエキドナって……えっ? だって昨日のは逢い引きじゃないはず……えっ?
俺がどうしよう? って顔をしていたら、同じくラミリアも似たような顔をしていた。
(聞いてみる?)
(いえ、答えが怖いので聞きたくありません)
(でも今聞いとかないと、手遅れになるかもよ?)
(そうなったらその時です)
俺とラミリアはアイコンタクトでやりとりした。
恐らく間違ってはいないと思う。この瞬間だけは、ラミリアとは他人の気がしなかった。
「隠居ジジイには、後で妾の方からフォローしておく。ちょっとした行き違いであんなことになってしまったが、他意はないとな」
それは助かるな。俺がもう一度行っても、会ってくれるか分からないもんな。……不始末を謝罪する上司みたいで申し訳ないけどね。
「それでじゃ、シオン。先ほどの魔法は一体何だったのじゃ?」
これは説明しない訳にはいかないな。
「俺の魔法【毒の契約】だ。約束を破ると、呪いが発動する効果がある。今回は俺達に危害を加えないって、契約になっている。まぁ俺達に危害を加えない限り、特に何かがあるって訳じゃない」
「ふむぅ。しかし、そもそもその類いの魔法が、あのジジイ相手に効くとは思えんのじゃが?」
「一応俺の限界以上の魔力を使って契約したから、これが破られると、今の俺じゃ完全にお手上げだ。まぁエキドナの魔力以上の魔力を使ったので、問題はないと思うけど……。エキドナよりもゼロの方が魔力が多いなら話は別かな」
「ふむぅ。妾の魔力をも上回るとなれば、あのジジイには解けない可能性があるのぅ。何せ妾の魔力はこの世界でも随一じゃ! 他の魔王でも魔法では妾に敵うまいて」
はーははは。と笑い出すエキドナ。だがその笑い声は突然やんで真顔になる。
「して、シオンよ。なぜ其方は妾の総魔力がいくつか知っておるのだ?」
あっこれヤバいやつだ。そうだよな、普通相手の魔力量なんて知るわけないよな。ってかトップシークレットだ。
「いやー、なんとなくこれくらいかな? って思っていただけ……」
「そんな訳ないじゃろうが! さっきのお主の言葉は、間違いなく具体的に知っておった! さぁ吐け、吐くのじゃ! もう妾たちは一蓮托生じゃろう? お互いに隠し事はなしにしようぞ」
流石に誤魔化しは通じなかった。しかし、昨日知り合ったばかりで一蓮托生とか言われても……はぁ、仕方ないか。
俺はエキドナ達に、他人の属性と現在の魔力値を調べることが出来る魔法を使える人間がいることを説明した。
「まぁ調べたときは、姉さんと模擬戦しているときだったから、最大魔力値よりは低いとは思うし、属性の色が分かったところで、魔法の内容までは分からないからあまり意味はないけどね」
そもそもエキドナの属性は三つに分かれてて、それぞれ魔力値が違うから、一番高いのが総魔力か、三つが合わさったのが総魔力か、それすらも分からなかった。一応一番高い魔力値を参考にしたんだけど……合算だったら到底太刀打ちできない。
「むむむ。そうであったか。まさか妾の魔力がバレておったとは……。妾の部下でも、妾の魔力値なぞ知らぬぞ。ちなみに妾の総魔力と属性は何じゃ? ラミリアとハーマインは知らぬから、こそっと教えるのじゃ」
仕方なく俺はエキドナに耳打ちした。……いや、何もしないから! だからトオルは横でそんなに睨むなよ!
「ふむ。かなり正確に把握しておるようじゃ。じゃが、それはあくまでも通常の保有量じゃ。妾はいつも八割程度までしか魔力を貯めておらぬからの。総魔力になるともっと多いぞ!」
いや、それはバラさなくていいから。ってか、あれよりもまだ高くなるのか?
「属性も全て知られてしもうた。……しかしそうなると少し狡くはないか? 妾にも、其方たちの属性を教えてもいいとは思わぬか? ん?」
はぁ。教えないわけにもいかないか。ってか俺が言わなくても、トオルが教えるに違いない。
「分かった。だけど具体的な魔法の内容は、お互いに秘密な。だから俺もエキドナがどんな魔法を使うか聞かない」
「まぁ当然じゃろう。お互い切り札は、おいそれと話すわけにはいかん」
「よし、じゃあ言うけど驚くなよ。……俺の属性は紫だ」
そう言って身分証カードを見せる。
「……いや、驚くなと言う方が無理じゃ。まさか紫とは……ここ数百、いや千年単位で聞いたことがないかもしれん」
ルーナがレアだと言ってたが、ルーナよりも長生きのエキドナですら知らないんだ。やはり紫って珍しいんだな。
「でも、それならトオルの方が驚くだろ。何せトオルの属性は透明だ」
俺の言葉にエキドナとラミリア、ハーマインは驚きの表情を浮かべる。
「あの……シオン殿。透明って色ではないのでは?」
至極真っ当な意見を言っているのはハーマインだ。俺だって透明が色なのか未だに疑問だ。
彼女は宰相という地位には就いているが、元は研究者なので気になるのだろう。
「だけど本当だから仕方ない。それに元から色じゃない属性の奴もいるんだろ?」
村に住んでいるドッペルゲンガーのゲンさんの属性は鏡色だ。自分の色ではなく、相手の色を映し出すってことなんだろうな。
それから通信隊のキャメリアは、属性自体は水色だが、カードには万華鏡のように無数の細片として現れる。色以外にも細かな属性が存在するのかもしれない。
「なるほど、確かに過去にはカードに表示される色が、三角形で表示されたり、円で表示された例もございました。色以外にも着目するべき点はありそうですが……それでも透明とは……」
へぇ、三角や円もあるのか。やっぱり何か特別な効果があるのかな?
「まぁトオルじゃからのう。何でもありじゃ」
エキドナから見たトオルって、どういった位置づけなんだろう?
この後、もう俺は面倒になって、俺たちの今までのこと――この一年半で起こった出来事や、この城で何をしていたか。本当に隠さないと駄目なこと以外は全て話した。
「その魔力増強ドリンクと言うのは凄いのう! 妾にも効果はあるのか?」
地球の道具にも色々反応していたが、中でもエキドナが一番注目したのが、俺達の強さの秘密でもある魔力増強ドリンク。通称チートドリンクだ。
エキドナは元の魔力が高いから、恐らく総魔力がもう何年も増えてないだろう。
「多分効くんじゃない? 俺達もまだ全然伸びてるし」
「頼む。妾にも一回飲ませてはくれまいか?」
「まぁ毎日は駄目だけど一回なら……だけど覚悟しておけよ? 言っておくが、もの凄く不味いからな? 今飲むと次の飯は食えたものじゃないかもしれないな」
「……そんなにか? ……いや、構わん。魔力が伸びる可能性があるなら、それくらい我慢するわい」
「じゃあそこまで言うなら……二人はどうします? 飲みます?」
一応ラミリアとハーマインにも声をかけてみる。二人も飲んでみるようだ。
飲んだ三人はあまりの不味さに顔をしかめる。
「確かに不味いの。これどうにかならんのか?」
「駄目なんだよ。俺も色々と試したけど、味をなくすと効果もなくなってしまってな」
一年半も飲み続けているんだ。俺だって改善しようと色々試してみた。
だが、今言ったように、味をなくすようにすると効果がなくなる。
じゃあ、発想を変えて、自分の舌をしばらくの間、味覚に麻酔を掛けて、味を分からなくした。そしたら、確かに味はしなくて効果もあった。だが、麻酔を解いた瞬間、不味い味がまとめて一気に口の中に広がった。これは何時間経っても、必ず麻酔を解いた時点で味がぶり返すのだ。しかも麻酔の時間が長いほど戻ったときの衝撃が強くなる。
金輪際一生味覚がない状態で過ごすなら問題はないだろうが、食という楽しみを奪ってまですることではない。
また、他にも色々と分かったことがある。
このチートドリンク一回で総魔力の1%が増加される。
また、一日一回効果があるが、毎日同じのを飲み続けると少しずつ効果が低くなっていく。初日が1%なら、五日後には0.5%って具合だ。
合間に筋力増強ドリンクなど、別のドリンクを挟めば、次の日にはまた1%に戻る。その為、ローテーションで飲むのが一番効率がいいみたいだ。
毎日全魔力を消費するくらいの修行とドーピング。これが一年半で総魔力値が四十万まで増えた理由だ。
「ゲホッ……しかしこれで妾も少しは魔力が伸びたかの?」
あまりの不味さに咽ながらも、エキドナは少し嬉しそうだ。
「伸びたのは確かだと思うが、実感出来るくらい増えるわけじゃないぞ? ちなみに七十二回飲めば、今の倍の魔力になる可能性がある」
元々のエキドナの魔力値が五十万だと仮定すると、一回飲めば五千増える計算だ。……存外増えるけど、エキドナにとっては微々たるものだ。因みに1%の利率を七十二回繰り返すと、ちょうど倍になる。まぁエキドナの場合は魔力が高すぎで、伸び悩む可能性も十分にある。1%以下の可能性が高いからそこまではいかないと思うが。
「もう分けてはくれぬのか?」
だから上目遣いはやめろ! 美人からの上目遣いは、グッとくるが、相手がエキドナだと、隣から変なプレッシャーが飛んでくるんだよ! ったく、どんだけだよ!
「じゃあ、今後何か俺達の役に立ったら、分けることにしよう。例えばハーマインが飴の量産に成功したり、エキドナがゼロの執り成ししたりだな。って、それ思い出したけど、共同研究の件ってどうなったんだ?」
俺達が出発する前にそんな話になってたよな?
「はい、後で詳しく報告致しますが、正式にシクトリーナ領とエキドナ領で共同研究することになりました」
ルーナが笑顔のところを見ると、どうやら条件的にも上手くやってくれたようだ。
「そっか、じゃあこれからよろしくな」
「ええ、こちらこそ他にも色々と興味深い研究をさせて頂けそうなので楽しみです」
まだ口の中にまずい味が残っているのかハーマインは苦笑いだったが嬉しそうだ。一体どんなことをするんだろう? まぁその辺は後でルーナに聞けばいいか。
「ハーマイン、妾のためにも頑張るのじゃぞ!」
エキドナさん、俺はあなたにも頑張っていただきたいです……。
――――
こうして正式にこれから手を組むことになった。差し当たってはヘンリー戦だろう。
手っ取り早く終わらせたいので、早めに行動したい。
が、エキドナ達は一旦自領へ帰らないといけない。流石に何日も開けるわけにはいかないからな。
その後、向こうで色々と終わらせてから、またこちらへやってくる。おそらく早くても十日前後だろう。
その時にはこちらに援軍も用意してくれるらしい。また、エキドナはもう一度ゼロの所へ行ってくれるそうだ。…一人で大丈夫だろうか?
「では行ってくる。しばしの別れじゃ」
城横の広場でエキドナとラミリア達親衛隊がそれぞれの従魔に跨がっている。
いつでも出発出来るみたいだ。
だが、その親衛隊とラミリア達は今、明らかに動揺していた。皆一様に同じ場所を見ている。
いや、彼女達だけではない。俺達もだ。
「……エキドナ、そしてトオル。お前ら何やってるんだ?」
そこには、今朝と同じように、エキドナの後ろにしっかりとトオルがしがみついていた。
「シオンくん、僕も一緒にエキドナくんの所に行ってくるよ。何、僕がいなくても魔法結晶にたっぷりと魔力は補充しておいたから、十日くらいは大丈夫だし、キューブもあるから僕がいなくても問題ないよね?」
いやいやそういう問題じゃないだろ!? えっ? 何考えてるの?
「シオンよ。十日ばかしトオルを借りるぞ。こやつがおったら、ゼロの所にもすぐに行けるし、何より次にこちらに来るときが楽じゃからの」
どうやらエキドナ領を転移登録するために一緒に行くようだ。一瞬ここから出て行くのかと思ってビックリしたぞ。
俺がそう言うとトオルが笑って答えた。
「ははは、そんなわけないよ。ちょっと行ってくるだけだって。出て行くとしてもずっと先のことだよ、ねぇ?」
「うむ。そうじゃろう。まだトオルはシクトリーナに必要な存在じゃろうて」
ねぇ! 何でエキドナに呼びかけてるの!? そして何でエキドナはそんな答えなの! 俺には分からないよ!
俺はラミリアを見る。俺の気持ちが分かるのは、彼女しかいない。
どうやらラミリアも同じ気持ちだったようだ。俺がラミリアの方を見ると同時にラミリアは俺の方を見た。
(どう思うこれ?)
(もう手遅れかもしれません)
(だよなぁ)
(向こうでは出来るだけ注意しておきます)
(頼むぞ)
最後にラミリアは俺に向かって親指をグッと立てた。やはりちゃんと通じているみたいだ。
そうしてエキドナ達は帰って行った。トオルを連れて……。
――――
「どどどどーゆうことなのよシオン! 何? トオルとエキドナって出来ちゃってるの!?」
「そういえば今シオン様とラミリア様も何か通じ合ってませんでしたー?」
「えー! トオル君だけじゃなくてシオン君もなの!?」
「エキドナ様、トオル様がしがみついたときに顔を真っ赤にされてました。エキドナ様も満更ではないのかもしれません」
エキドナ達がいなくなった途端、残された姉さん、シャルティエ、ヒカリ、ルーナが騒ぎ立てる。
「落ち着けって。まだ決まったわけじゃないだろう?」
「甘いわよシオン。あれはすでに決まってたわよ」
「完全にお互いラブラブでしたよねー」
「はー、あのトオル君がねー」
「そういえばエキドナ様って、お子様がたくさんいらっしゃったような……」
「「「「えっ?」」」」
「おい、ルーナ! どういうことだよ! じゃあエキドナって人妻なのか!?」
それは流石にマズいんじゃないのか?
「ちょっとトオルが略奪婚とかありえないでしょ!」
「まさかのNTR? ちょっトオル様マジっすか!?」
「はわわっ!? エキドナさん。浮気は駄目だよ」
ルーナが落とした爆弾に、思わず俺まで反応してしまった。ってかシャルティエ……その表現は異世界人としてどうよ?
「いえ、わたくしの勘違いかもしれませんから、忘れてくださいまし。以前ティポーン様とそのような関係になったとかならなかったとか、そういった噂の話でございますから」
「ティポーンって昨日トオルがエキドナに言ってたよな? えっ? じゃあ信憑性高いんじゃないの?」
「何!? トオルってば知ってて行動しちゃってるの!?」
「えっじゃあこれって向こうで決闘ってパターン?」
「トオル君……なんだか主人公みたいだね!」
えっ? 本当にどうなっちゃうのこれ?
「それでシオン。あなた本当に何も知らないの?」
「俺だって詳しくは知らないよ。ただ、昨日トオルがエキドナの部屋に入って、明け方に戻ったってことくらいで……」
「ちょっと何よそれは! 完全に朝帰りじゃないの!?」
「エキドナ様の部屋の清掃は、確か第一のあの子が担当だったはず……」
「はわわっ!? トオル君不潔だよ!?」
「……それで、何故それをシオン様が知っておられるのですか?」
騒いでいた三人がルーナの言葉でピタッと止まり、俺に振り向く。
「そうよ! 何で知ってるのよ!」
「シオン様……いくらなんでも覗きは……」
「シオン君。知ってて止めなかったんだね」
「ばっか! チゲーよ! 俺は昨日ルーナが部屋から帰った後に、キャメリアから聞いただけで……元々日中にゆっくり話したいって言ってたから、そのことだろうと思って……」
俺の一言に周りが一斉に静かになる。
「ちょっと!! 何でシオンの部屋にルーナがいるのよ!」
「えっ? ルーナ様もしかして……今日のシオン様の部屋掃除は確か……」
「はわわっ!? シオン君不潔だよ!」
いかん。余計なことまでつい喋ってしまった。
「そんなシオン様。まさかこんな所で、昨夜のことを皆様にご報告なんて……わたくし恥ずかしいですわ。キャー!?」
「こらルーナ! 恥ずかしがるな! 何もなかっただろうが! それからそこの姦し三人組も! 本当に何もしてないからな!!」
ってかルーナ。お前はキャーとか言うキャラじゃないだろ!?
「そう言われておりますが、どうでしょうか? シャルティエ殿」
「どうやらルーナ様を部屋へ呼び出したのは、事実のようでござるな。それに先ほどはラミリア殿とも通じ合っていた模様。どう思われるか? ヒカリ殿」
「これはやはりハーレムを狙っているのではないかと……そうでござろうルーナ殿?」
「いや、流石にわたくしにそのノリは無理です。ですが、ハーレムの可能性はありますね。一部のメイドにちょっかいをかけている可能性があります。特にアレーナやエリーゼ辺りは怪しいと思いますよ? サクラ様」
「まったく、ルーナはノリが悪いわね。でも、確かにシオンはロリコンじゃないから、ティティやシャルティエの可能性はなさそうよね。アレーナとは一番仲よさそうだし、エリーゼはシオンの好みのピンポイントそのもの。リンやセツナもいい感じだけど、城にいないことが多いから、手は出してないでしょう」
「そうですか……私は対象外ですか……。まぁいいですけどね。私も別にシオン様はタイプじゃないですしー。私はキャメリアとシルビアは、すでに毒牙にかかってると思うけどなぁ?」
「通信隊の子は他にもいるけど、シオン君はいっつも今言った子達が居るときにしか、顔を出さないよね。でも一番デレデレしているのはスーラさんですよね。ってことはスーラさんが正妻?」
《シオンちゃん。浮気は許さないの》
《わ。私だってこれからはマスターの為に何でもします!》
「「「ん?今何でもって?」」」
「こら! スーラとホリンまで参加しなくていいから!」
ただでさえ喧しいのにスーラとホリンまで参加しだした。これはもう収拾がつかなくなりそうだ。
この後も姦し三人とルーナ+二匹はどうでもいい話を延々と続けた。そこに、俺達を探しに来たエリーゼや夕食を知らせに来たアレーナまで巻き込んでの大騒ぎ。
結局この広場でバーベキューパーティーにまで発展してしまった。
まぁ何のかんのこの二日緊張しっぱなしだったし、最近はヘンリー対策で忙しかったのもあるから、皆息抜きしたかったんだろう。
こういうのも偶にはありかもな……だが、俺を巻き込むのは本当に止めてほしい。




