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ロストカラーズ  作者: あすか
第三章 不死王討伐
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第50話 感想を聞こう

「あー!! 疲れた!」


 自室に戻ると俺は叫びながらベッドにダイブした。ふー。ようやく一息吐けた。


 肩にいたスーラは、俺が倒れる前に机の上へ避難している。机の上が部屋でのスーラの定位置だ。


《お疲れ! シオンちゃん!》


「ああ、お疲れ。スーラも今日はありがとな。エキドナの時は助かったよ。あと、殆ど構ってやれなくて悪かった」


 俺が他人と話していると、スーラは俺の気が散らないように、俺が話しかけない限りは会話に入ってこない。話に入ってくるのは、自分やスライムのことが会話に上ったときくらいだ。だから今日みたいに人といるときは構ってやることが出来ない。


《気にしないでいいの! シオンちゃんと一緒にいるだけで、私はいつも楽しいの!》


 本当に嬉しいことを言ってくれる。


 と、その時部屋の扉からノックの音が聞こえる。ルーナが来たのか?

 俺は扉を開けると、やはりルーナだった。


 俺はルーナを部屋に招き入れた。そういえばこんな風に部屋に入れたのは初めてかもしれない。


「ああ! ついに今日、わたくしは大人の階段を登ってしまうのですね」


《シオンちゃん……私の前でそんなことするの?》


「いや、しないから。スーラも乗らなくていいよ全く……」


 流石に今日はもう疲れてツッコむ気になれない。


「あら、本当にお疲れのようですね。失礼いたしました」


 ルーナは畏まって謝罪する。やっぱりわざとか。


「それでシオン様。何かお話があるようですが?」


「ああ、姉さん達と話す前に、ルーナに色々聞いておきたくてな」


 俺は今日のこと、それからこれからのことをルーナに話した。

 聞きたいことは、エキドナがどういった人物か。それから先代のアンデッド王についてだ。


「エキドナ様なら他の魔王より信用は出来ます。約束は違わないでしょう」

「正直賭ではありますが、先代に会いに行くのは間違っていないと思います」


 色々聞いたが要約するとこんな感じだった。


 良くも悪くもエキドナはあんな感じだそうだ。様子を見るときは、妖艶な感じを演じ相手を油断させる。相手を認めると明け透けになる。魔王の称号にはあまり興味がないが、誇り高く虚偽は行わない。


 寝込みを襲うような性格はしていないので、同盟を結ぶならピッタリの相手のようだ。


「なら予定通りエキドナとはこのまま仲良くしておくか。それで、エキドナの都合が良ければ明日にでもその先代魔王の元に行くとするか。あ、でもここから遠いのかな? なら数日は城を離れることになるのか?」


 これって俺が初めて城から出る旅になるのか?


「トオル様と行かれれば、夜には帰ってこれますよ。もしくは以前のように、トオル様が行かれて目的地で迎えに来てもらえば……」


「いや、流石にエキドナに案内してもらうのに、俺が不在は駄目だろう。それに俺はまだちゃんと城から出たことがなかったしな。初めて外に出るとき位はしっかりとしておきたい。でもまぁ夜に戻ってくるのはありかもな」


 旅じゃなくて日帰り旅行みたいになっちゃうけど。とにかく、ルーナとそんな感じで予定を考えていった。



 ――――


「しかし、このような話でしたら、トオル様やサクラ様も一緒に話した方がよかったのではないでしょうか?」


「確かにな。だけどもう一つだけ聞きたいことがあったから……」


 むしろルーナを呼んだのはそっちが本命だ。


「もう一つ? 何でしょう?」


 少し恥ずかしいが、俺は一呼吸おいて話した。


「……今日の俺は城主としてどうだった? ちゃんと出来てた?」


 初めてちゃんと……かどうかは疑問だが、とりあえず、初めての外交だ。俺がしっかりと仕事をこなしていたか、ルーナの評価が聞きたかった。だけど、皆の前で聞くのは恥ずかしかった。

 ルーナは俺の意図が分かり、少し驚いた後に笑顔になる。


「まぁ! ふふ、シオン様は本当に……。ええ、立派にこなしておりましたよ。ですが、もう少し腹芸を身につけた方が宜しいかと」


 それは俺も感じていたことだ。正直今回何とかなったのは、エキドナも俺と同じく、腹芸が苦手だからに違いない。


「そっか、ありがとうルーナ。腹芸か……苦手なんだよな」


「今はそうかもしれませんが、その内嫌でも身に付きますよ」


 そう言うものかね? でも少しだけ安心した。ルーナに答えてもらって良かったな。胸のつかえが取れた気がする。

 その後、少しだけ世間話をすると、ルーナは部屋から出ていった。


 すると、ルーナが部屋を出ていったタイミングを見計らうように、ケータイが鳴った。


「はい、シオンだ」


『ふふ、シオン様、先ほどはお楽しみでしたね』


 キャメリアだった。


「いや、お楽しみじゃねーよ! ってか覗いてるんじゃねーよ!」


 コイツ……まさかずっと見てたんじゃないだろうな?


『冗談です。私でも部屋の中は見ることができません。中でどんなことがあったかは……』


「切るぞ」


『ああ、本当にすみません。ちょっと度が過ぎました。でも、ちゃんとした用事があるんです』


 ったく。用があるなら最初から言えっての。


「それで? 話ってのは?」


『はい、念のためシオン様にだけ報告致しますが……現在トオル様とエキドナ様が逢い引き中です』


「……は?」


 キャメリアの言葉に思わず固まってしまう。今キャメリアは何て言った? 逢い引き? 誰と誰が?


「なぁ? もう一度言ってもらってもいいか? 誰と誰が何をしているって?」


『ですから、トオル様とエキドナ様が逢い引き中です』


 どうやら聞き間違いではなかったらしい。ちょっと待って!? 何で!? トオルとエキドナ? えっ? 思考が追い付かないんだけど!


『まぁ逢い引きと言いましても、トオル様がエキドナ様の部屋に入って行っただけですけどね。先程も申し上げました通り、部屋の中までは確認できませんので、中で何をされているかは存じ上げません』


 トオルが今エキドナの部屋にいるのは事実だが、その内容までは分からないようだ。

 ……なら一安心かな。他の人間ならともかく、あの草食系男子のトオルが無茶をする訳がない。恐らく昼に二人で話したいって言ってたから、そのことだろう。


「まったく……焦らすなよ。本当にビックリしたぞ」


『ビックリしたのは私も同じですよ。まさかトオル様が部屋から抜け出して、エキドナ様の部屋へ行くとは思いませんでしたから。まぁシオン様と違って、トオル様に間違いが起こるとは思っていませんでしたが』


 どうやら本気でキャメリアも逢い引きとは思っていなかったようだ。ってか、俺と違ってってどういう意味だ? 俺だってそんなことしないし、したこともないぞ。


「でも、報告ありがとうな。助かったよ」


 もしこの話を知らなかったら、明日驚いたかもしれない。


『いえ、これが私の仕事ですから。それで……シオン様はルーナ様と一体どこま……』


 キャメリアが余計なことを言おうとしていたので、言い終わる前に電話を切ってやった。悪ふざけも大概にしろと言いたい。


 しかし……本当にキャメリアが勘違いしていたらどうしよう? ルーナは今日初めて入ったんだが、それがいつものことって思われないだろうか?

 ……勘違いから変な噂が立てられたら厄介だ。俺はキャメリアにメールで『本当に何でもないからな!』と送った。


 もし俺が女性と何かあるとしたら、きちんとケジメを付けてからだ。なぁ?

 俺は部屋の隅に畳んでいるストールに向かってそう呟いた。

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