日常編 ハグル③
このゲームを開始する際、ルールはサイコロで、手札は実際のトランプで配りました。
初期配置は隣り合わないように場所だけ決めて、後はプレイヤーとNPCをダイスで決めました。
その為、完全にランダムです。
<料理隊視点>
「さて、どうしましょうか? ここにいても仕方がないですよね?」
「でも、目の前にトオル様がいるのに放置しておくのは勿体ない気が……」
「かといって、条件も分からないのでしたらNPCも役立たずですよ」
「……アレーナ様。本人を目の前にして役立たずと言うのはどうかと?」
「別にトオル様が役立たずと言ってるわけではありません。情報がないから役立たずな状態なだけです」
「あまり意味は変わってないような気もしますが……でも確かにここにいても仕方がありませんね。場所だけ覚えておきましょう。えーと、ここは7‐5ですね」
「正直、スタート地点の隣がNPC部屋とは思ってもいませんでした。一体何人のNPCがいるのでしょうか?」
「トオル様がNPCってことは後はヒカリ様とサクラ様の三人じゃありませんか? シオン様はGMですから対象外でしょう」
「あまりそう言うメタ的要素は好きではありませんが、確かにその通りでしょう。ね? トオル様」
「…………」
「やっぱり何も話しませんね。条件が分からないと、どうしようもありませんか」
「ではどちらに行きます? 私は7‐1方面に行きたいです!」
「確かに7‐7はあまり行きたくはありませんね。いや? あのシオン様ですから、最後の部屋に何か残していたりしませんか?」
「なら7‐1まで行ってから7‐7も一応確認すればよくないですか? 7‐6は絶対何もありませんよ」
「そうですね。7‐3辺りも見たいですから、とりあえず7‐4に行きましょう」
料理隊7‐5→7‐4
「うーん、何もありませんね」
「まぁNPC部屋の隣は何もないでしょう。さっさと次いきますよ」
料理隊7‐4→7‐3
「やっぱり何もありませんね。それどころか、誰もいません。もしかして7列はもう何もないんじゃないですか?」
「確かに中央の方に固まっている可能性がありますね。ですが、それを考えてNPCが端っこにいたと考えるべきでしょう」
「なら予定通り7‐1まで一気に行きましょうよ!」
料理隊7‐3→7‐2
「おお! アレっちも来たっスか。大量っスね」
「リン。それからシャルティエ……遊撃隊と第二が揃って情報交換ですか?」
「さっきまで警備もいたんですよ。まぁ警備はさっさと出て行きましたが。それで料理隊はどうですか? 情報交換しませんか?」
「ええ、是非お願いしたいです。ですが、私達はNPC以外では初めて人に会うので情報はほとんど持ってないですよ」
「ならお互い一つずつ交換し合おうか。他にも欲しいなら知らない情報か魔石で交換って感じで」
「仕方がないですね」
「じゃあ遊撃隊からいくっス。『5‐4にいるNPCに話しかけて「合い言葉下さい」と言うと合い言葉を教えてくれる。合い言葉はゲーム中GMに言うと+30点。ゲーム終了後に言っても無意味』っス」
「5‐4ですか。私たちの知っているNPCとは違う場所ですね」
「では次は私たち第二ですね。『緑は最高得点』です。
「第二は魔石のルールですか。出来れば他のが良かったです。が、緑が最高得点なのはいいこと聞きました」
「じゃあ次は料理隊のも教えて欲しいっス」
「私たちは『ゲーム終了よりも早くGMに手役を見せゴールすると残り時間がポイントに加点』です」
「……合い言葉といい、ポイント加算といい、ゴールって制限時間終了以外にも方法があるんスか?」
「ゴールの仕方は分からないけどね。でも役が出来たのなら早くゴールした方が得点は高いわよ」
「確かにそうですね。今がもうすでに十分くらい経っているので、今すぐにゴールすれば五十点プラス!?」
「出来れば三十点くらい欲しいとこっスね。ゴールの仕方を知りたいっス」
「遊撃隊はカードが揃ってるの?」
「それが……実は不味いことになってるんス」
「何よ? 不味いことって」
「ここにさっきまで警備隊がいたって話はしたっスよね? その警備隊……すでにフルハウスが揃ってるっス」
「はぁ? なんで? だって始まったばかりよ!?」
「どうやら初めからツーペアだったみたいっス。それで……カード交換したら、渡したカードで揃ったらしくってスね」
「何でそんなカード渡すのよ!!」
「こっちだって知ってたら渡さなかったっスよ。あっちが『♠J』と何かを交換しない? って言われたからこっちの不要カード渡したら……」
「揃ったって訳ね」
「そうっス」
「まぁそこに私たち第二が丁度来たんだけど、『これで勝ちねー!』って言いながら出て行っちゃったわ」
「なら第二と警備は交渉してない訳ね」
「ええ、それで追いかけても仕方ないから、遊撃と交渉しようとしたときに貴女たちがやってきたわけ」
「そう……なら、この三チームで同盟を組まない?」
「同盟っスか?」
「ええ、現状は警備隊が一歩リードよね? もしこれで警備隊がゴールの仕方を知っていたら、本当に勝利が決まってしまうかも知れないわ」
「一応警備隊のルールは聞いたっスけど、ゴールのことは知らなかったっス」
「それは助かったわね。でも警備隊が一番ってのは変わらないわ。なら、なりふり構ってはいられないと思うの。今ならここで三チームのルールと警備隊のルールで全部で十二個のルールが分かる訳よね? 半分以上のルールを知っている私たちは、情報の面では多大なアドバンテージを誇ると思わない?」
「確かに……そうですね」
「だからとりあえずルールは全員で協力し合わない?」
「こっちは構わないっス」
「私達も問題ないわ」
「では交換しましょう」
「えーと、トランプのルールが『ハートのフラッシュは+15点』『同じマークの3と6を持っていれば×2』『スペードのマークを3枚以上所持で+10点』の三つね。まさか警備と被ってるとは思わなかったわ」
「仕方ないっス。九チームで七種だから、どうしても二チームは被るっス」
「で、魔石が『緑は最高得点』『赤と黄=白と青』『赤は3点』『同じ色を三つ以上そろえると価値は倍になる』ですね。これで赤=3、黄=5、緑=10。白と青が1か7。ほとんどの点数が分かりましたね」
「ええ、それで特殊ルールが『3‐7にいるNPCはトランプをジョーカーや余っているカードと交換してくれる』『ゲーム終了よりも早くGMに手役を見せゴールすると残り時間がポイントに加点』『5‐4にいるNPCに話しかけて「合い言葉下さい」と言うと合い言葉を教えてくれる。合い言葉はゲーム中GMに言うと+30点。ゲーム終了後に言っても無意味』『7‐5にいるNPCに魔石を渡すとルールを一つ教えてくれる』よね」
「ゴールの仕方は結局分かりませんでしたね」
「でも7‐5のNPC情報があったのは助かるわ。あそこのNPCはトオル様だったんだけど、魔石で残り二つの特殊ルールを交換すればゴールの仕方が分かるはずよ」
「じゃあそこまでは共同戦線でその先は別行動にしましょう」
「でも誰が魔石を払うっスか?」
「料理と第二で赤を一つずつ出しましょう。白か青なら、どちらかは一点ですけど、七点の場合が怖いですから三点の赤が無難でしょう。遊撃は警備の情報分、多く出してるから必要ないわ。まぁ他のトランプや魔石の情報が知りたければ、解散した後に聞けばいいわ」
「私達もそれで異論はないです」
「では行きましょうか」
料理・第二・遊撃7‐2→7‐5
<GM視点>
「いやぁ盛り上がってきたな。警備隊のフルハウスに三チーム同盟か」
「それにしてもシャルちゃんは強かだね。ルーナ様達と交渉したことを黙っている上に、緑の罠を着々と広めてるよ」
「ああ、情報も一番持っているし、カードさえ揃えば一気に勝ち抜けするかもな」
「料理隊はカードの並びが残念ですよね。ストレートくらいしか狙えそうにないですね」
「ああ、ってか料理隊の2と3を遊撃隊が手に入れれば遊撃隊も一気にフルハウスなんだけどな」
「あっ! 本当だ。でも絶対に料理隊が手放さないでしょうね」
「ああ、さてどうなることやら…」
<ルーナ・エイミー混合チーム視点>
「それにしても第一に会えたのは幸運でしたね」
「ええ、彼女たちのおかげで、無事にフルハウスにすることが出来ました。それに魔石も頂けました。本当に感謝です。ですが、賞品が少なくなってしまいましたね」
「いえ、いいんですよ。元から私たちだけが得してたんですから」
「それで今の手札が『♣A』『♠A』『♡A』『♢5』『♠5』ですね。これからどうします? ゴール探しますか?」
「出来ればフォーカードを狙いながら出口を探しましょうか」
「そうですね。じゃあ、7‐5に行ってルールを教えてもらいましょうか? ゴールのルールが分かるかもしれません。余ってる緑の魔石を消費するのにもぴったりです」
「そうですね。では向かいながら誰かいたら交渉しましょう」
<GM視点>
「おいおい、ルーナ達はどうなってるんだ? いつの間にフルハウスなんか揃ってるんだ?」
第一と接触って言ってたけど、第一はどうなってるんだ?
「じゃあちょっとだけ巻き戻しちゃうね。キャメちゃん! さっきのところを見せて!」
ティティがそう叫ぶと一画面に第一と混合が映し出される。巻き戻しなんて出来るのか。
「ちょうど三チーム合同の裏で接触してたようだよ。なんか第一は勝ちを諦めちゃったから、ルーナ様に優勝してもらって賞品を分けてもらうみたい」
第一の希望は手鏡だっけ? 他チームなら厳しいだろうが、ルーナのチームは二人組だ。賞品はどのチームも変わらないので、人数が少ないチームからならお零れに預かれるだろう。
えーと、第一の初期手札が『♠A』『♣4』『♣K』『♢5』『♡A』とAのワンペアがあるから悪くはないと思うけど……あ、『♣K』があるのか。でルールは『クラブの[K]は‐10点』と最初から知ってると。
ならこれで相手を嵌めたらいいと思うけど……。
「第一はね。ルーナ様達に出会う前に、警備隊に出会ってたの」
ああ、フルハウスの自慢でもされたか。で、戦意喪失と。そこにルーナが現れて、自分の手札と合わせるとルーナ達がフルハウスで警備隊に追いつくと。
なら自分達の勝利よりも勝ち馬に乗るのは当然かもしれない。カードの交換と魔石の譲渡。ルーナ達が一気に勝ちが見えてきたな。
「でもでもー。これってアリなの?」
「そりゃあ、アリさ。人数の少ないルーナ達を見事に利用して利益を得る。勝ち馬に乗るのも作戦の一つさ。まぁ少し見切りが早かった気もするが……」
「じゃあルーナ様が一気に優勝候補だね。シオン様が下僕になる日が近づいてきたかも」
そうだった! ルーナが勝ったら俺がルーナにいいように扱われてしまう。
「おい、現状の他のチームの手札って分かるか?」
「んーとね。……こーんな感じ!」
するとモニターに各チームの手札が表示された。
混合チーム:『♣A』『♠A』『♡A』『♢5』『♠5』
第一チーム:『♠3』『♣4』『♢6』『♠8』『♣K』
第二チーム:『♡9』『♣J』『♣Q』『♢K』『♡K』
料理チーム:『♠2』『♢2』『♡2』『♢A』『♢7』
遊撃チーム:『♣3』『♡3』『♠J』『♡J』『♣6』
通信チーム:『♠4』『♣5』『♠6』『♢J』『♢Q』
研究チーム:『♠9』『♣2』『♡4』『♣10』『♢10』
補給チーム:『♡5』『♡6』『♡7』『♡8』『♡10』
警備チーム:『♠7』『♣7』『♢7』『♡Q』『♠Q』
NPC所持カード:『♠K』『♣8』『♠10』『♣9』『♢8』『♢3』『♢4』ジョーカー×2
「えーと、フルハウスが混合と警備、ツーペアが遊撃……って遊撃!?」
「どうやら料理と交換したみたいだよ」
「確かに料理がスリーカードになってるな。フルハウスには出来なかったが、お互い得する交換をしたわけだ。で……おいおい、補給はすごいな。ハートのフラッシュで、しかもストレートにリーチだぞ」
「NPCとの交換で一気に巻き返したみたい」
「で、ワンペアで第二と研究……って研究はどうなってるんだ? 初期カードから全く変わってないぞ?」
「それが……研究は本当に運が悪いみたいで、全然誰にも会わないんだよ。唯一あったのが警備だから……」
「あー交換できなかったってやつか。で、役なしが通信と第一か。第一は降りてるから通信だな……どうしたんだ?」
「どうやら補給と分かれた後に、どことも出会ってない……というか、同盟組を見かけて後ろから尾行していたみたい。同盟組の会話とかを必死に聞いていたよ」
「なるほど、合流せずに情報を隠れて得ていた訳か。合流したら魔石を渡したり、情報を取られたりするからな。良い考えだと思う。でも……間に合うのか?」
「でもでも情報量は一番だよ。後は役を作ればいつでもゴール一番乗りかな」
「そのゴールの情報を知っているのが、通信隊とNPCから魔石と交換で聞き出した同盟チームだけか。これは後半戦が楽しくなってきたな」
「だねだね」
「よーし、ここにいるやつら! どのチームが勝つか賭けろ!! 一番のチームを当てた人は特別ボーナスの支給だ!!」
「本当ですか!?」
「じゃあ私はルーナ様のチームで!」
「補給隊のカードってヤバくない?」
「大穴で研究……はないか。やっぱりルーナ様かなぁ?」
面白いことに自分のチームに賭ける人は誰もいなかった。まぁ自分のチームが勝てば景品は得られるんだから、負けたときのボーナスってとこだろう。
結果は一番人気がルーナ・エイミーの混合チーム。やはり第一を味方につけたのが大きいようだ。
二番人気は補給チーム。ボーナスのハートでストレートフラッシュが見えてるのが大きいだろう。
三番人気は意外や意外、今のところ役なしの通信隊だ。情報を制しているのと、エリーゼの優等生っぷりが人気の秘密だろう。
次点で料理チームだ。スリーカードだが、同盟組の中では一番可能性がありそうだ。
フルハウスの警備隊・第二・遊撃がその下についている。警備は役は良いんだが、情報を集めなくて無駄に時間ばかり過ぎているのが、期待薄と思われているのだろう。
第二は一見強かに見えて、実は厳しい状態だ。欲しいカードは結構余所で使われていて、揃えにくい状態だ。遊撃はフルハウスまでは完成しそうだが、そこ止まりになりそうだ。
研究は……うん、頑張れ。だけどもし補給や第一と出会えたら逆転の可能性は残ってる。
「じゃあ後半戦いってみよー!」




