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ロストカラーズ  作者: あすか
第二章 魔王城防衛
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第38話 言葉攻めをしよう

「おじーちゃーん! じょーしゅさまがきたよ-!」


 トオルの魔法で村の入口に転移してきた俺達を見て、ケットシーの子供が村長に伝えに行く。

 ケットシーの子供と一緒に遊んでいた子供たち、ナパイアーとスプライト達は笑顔でこちらに近づいてくる。


「じょうしゅのお兄ちゃん! 今日はねトロールさんたちが、こーんなにおっきなダイコンをとってたんだよ!」


 ナパイアーの子供、ナンが手を大きく広げて教えてくれる。


「そっかそっか。なら後でトロールさんたちに分けてもらって美味しく料理してもらおうな」


 俺はナンの頭を撫でながらやさしく微笑んだ。ナンは「うん!」って大きく頷く。


 スプライトの方、ラーワは地面においてあった袋の中をゴソゴソとしていたが、捜し物が見つかったのか、パタパタと飛びながら俺の方へ向かってくる。


「じょーしゅさま!この間教えてもらった花畑でとれた蜂蜜。アントビーさん達と一緒に採ったんだ!」


 そう言ってラーワが蜂蜜が入った容器を差し出してくる。俺は少し掬って舐めてみる。


 因みにアントビーというのは、以前姉さんがテイムした蜂の魔物だ。

 今はツヴァイスからここへ移動させて今は蜜集めをさせている。花畑は地球から持ってきた花の種を植えて作った。


「うん、美味しいな。これだったら甘いお菓子も作れるんじゃないか? 作り方を教えてもらって作ってみようか?」


「わぁい! じゃあ作るときはじょーしゅさまも一緒につくろ!」


 いいでしょ? って目が訴えてくる。


「う~ん、今は忙しいから暇になってからかな。俺と一緒に作る時にラーワが俺に教えれるように練習しといて欲しいな」


「わかった! たくさん練習して、じょーしゅさまにおいしいお菓子の作り方を教えます!」


 ラーワが空中で一回転しながら喜ぶ。見た目は完全に妖精だな。


「ズルい! 私も! 私もじょうしゅのお兄ちゃんにおしえるー」


「分かった。仲良くみんなで教えてくれよな。ただ、今はちょっと忙しいからあっちで遊んでてくれないか? 今度また新しい遊びを教えてやるから」


 俺は二人に向かってそう言った。

 二人とも「「は~い」」と言いながらボールを持って飛んでいった。


「慕われてるんですね」


「まぁな。村のことはトオルや姉さんに任せっきりでな。俺はあまり役に立たないから、子供と遊んでるんだ」


 俺も少しは役に立たないとなー。とは思ってるんだけど、どうやっても邪魔にしかならないような気がする。



 ――――


「じょーしゅさまー。おじーちゃんを連れてきました」


 村長を呼びに行ったケットシーの子供、ミケが戻ってくる。


「ありがとうなミケ。ラーワ達なら向こうに行ったから、今追いかければすぐに会えるとと思うぞ」


「ほんと!? 分かったありがとーじょーしゅさま!」


 ミケは急いで二人の後を走って追いかけていく。うん、元気なのは良いことだ。ミケが見えなくなったタイミングで俺は村長の方を向く。


「こんにちは村長。ナンが言ってたけど大きな大根が採れたって?」


「本日は大根とトマトが収穫できたと聞いております。今回のトマトは収穫高も多いのでケチャップの量産が出来そうです」


 収穫が少ないときからケチャップは作ってはいたが、トマトはノームが大好きなのでなかなか量は作れなかったのだ。


「いいね。ケチャップが出来ると料理の幅が一気に増えると思うぞ。それで、聞いているとは思うが、少し畑の様子を見に行ってもいいか? 邪魔はしないから」


「もちろん構いませんぞ。まだ働いているものもおりますので、もてなしは出来ませんが」


「いやいや、むしろ働いているところが見たいんだ。もてなしなんかされると逆に困ってしまうよ」


 ははっと苦笑いしながら答える。


「左様ですか。さっそれではこちらへ。案内しますぞ」


 俺達は村長の案内で畑へと案内される。



 ――――


「さて、着きましたぞ」


「……もしかしてまた広くした? 確かあそこは畑じゃなかった気がするが」


 一月前は何もない平地だったと思う。


「ええ、先日収穫した野菜の種がありましたからな。トロールにお願いして、耕してもらったのです」


「これ以上増やして大丈夫なのか? 人手が足りてないんじゃないのか?」


「最近はドリュアス達が花の管理を手伝ってくれますから、まだ大丈夫ですぞ」


「あまり無理するなよ? 体を壊したら大変だ」


「なぁに! 最近はむしろ今まで以上に元気ですから。やはり美味しい物を食べると元気になりますな。昔はやる気が出ませんでしたからの」


「まぁ新鮮な野菜には体に必要な栄養がたっぷりあるからな。健康にもなるか。でも、働きすぎて体を壊したら本末転倒だ。程ほどに頼む」


 それから……と一呼吸置いて要件を話す。


「こいつらに少し食べさせてやりたい。採れたてをを少し分けてくれないか?」


 俺がそう言うと、村長はすでに承知済みだったようだ。トオルがちゃんと話してくれてたのかな?


「はい、そう言われると思いましたので、準備しております。おーい、持ってきてくれ」


 そう言うと一人のリャナンシーが大根とトマトを籠に入れて持ってきた。


「シオン様、ご機嫌麗しゅう。こちらが本日収穫されたものとなります。土は落としておりますので、そのままでも大丈夫ですが、サラダにでも致しましょうか?」


「いや、とりあえず一つは今ここでそのまま頂こう。でも残りはサラダにしてくれると嬉しい。調味料の魅力も教えてやりたいしな」


「畏まりました。それではサラダをお持ちします。籠はこちらに置いておきますので、こちらを食べてお待ち下さい」


 俺はヴォイス達の前に籠を持っていく。皆は恐る恐る手に取る。だが、一口食べるとその目は大きく見開かれる。


「美味い! 何だこれ!」

「美味しいです~」

「これは甘くて瑞々しいな」

「こっちはかじると少し辛いがそれが堪らなく美味しく感じるな」

「野菜って泥臭く苦くてとても生では食べれないと思っていたんですが……」


 どうやら気に入ってくれたようで、各々感想を言い合ってる。

 一応この世界にもトマトはあるようだが、やはり浸透はしてないんだろう。


「あらあら、これくらいで驚いていてはこちらはどうなるんでしょう?」


 どうやらサラダを持って戻って来たみたいだ。


「早かったな。もう少し掛かると思ってたんだが」


「予め準備はしておりましたから」


 やはりすでに根回しがされていたみたいだ。そこには三つの料理が準備されていた。


 最初は普通のグリーンサラダ。レタスやキュウリ、トマトやアスパラ、コーンなど定番の野菜をドレッシングで味付けしている。

 2つ目はブロッコリーを茹でたもの。マヨネーズがかけてある。料理とは言えないかもしれないが、ブロッコリーはこの世界でメインの野菜のようなので、味の違いを教えてあげたいのだろう。

 最後はポテサラ。ジャガイモはこっちでは主食の一つのようだ。でも食べ方は茹でて食べるだけ。味付けも塩くらいとのことだ。


「これは俺達がいつも食ってる……このまま食べるんですか? シチューとかに入れないととてもじゃないけど食えないと思うんですが……」


 そう言いながらフォークでブロッコリーを刺し、口へ運ぶ。


「甘い!? それに美味しい! これは俺がいつも食べている野菜じゃないのか?」

「こっちは味がしっかりついてますよ! さっきと同じ野菜なのに全く違うものを食べているようです!」

「これは……まさかバレイショ!? まさかあれがこんな料理になるというのか……」


 一皿ずつしか用意してないから皆、少しずつしか食べれてないが、それでも味は伝わったようだ。


「どうだ、調味料で味付けするとさっきと味が全然違ってさらに美味しくなっただろ。あとお前らも食べているブロッコリー、青臭くてエグくて美味しくないとイメージだっただろ? だがそれは育て方の問題だ。肥料をあげて、土壌をしっかりしてやれば、ちゃんと美味しくなるんだ。同じようにバレイショ、俺達はジャガイモって呼んでいるが、こいつは調理法でいくらでも美味しくなるし、主食にも、おやつにもなれる万能食材だ」


 本当はポテトチップスも用意したいが、それは今回の趣旨と違うので外しておいた。


「いやはや……驚かされました。未知の食材だけでなく、普段我々が食べている食材まで美味しいとは思いませんでした」


 ひとしきり食べて満足した後にヴォイスが言う。


「さっきも言ったが、美味しくするにはそれなりの育て方をしなくてはならない。ここにあるどの食材もそうだ。植えるだけで良いわけじゃないからな。ここにある野菜の種を持って帰って育てても、味は落ちるぞ。後は味付けだな。多分お前らは塩くらいしか知らないと思うが、この世界にもたくさんの香辛料や素材があるんだ。そこから美味しい調味料を作ることができる」


 俺は畑の方を見渡す。


「最初に種を持ってきたり、作り方を教えたのは俺達だ。だが、ここまで美味しく育て、色んな調味料を編み出したりしているのはここにいる村人達だ。俺はこの村人達を誇りに思う」


「そうですね。いい村だと思いますよ。子供達は元気に遊んでいて大人達も畑仕事を頑張っている。故郷の田舎を思い出しますよ。……食べ物は全然違いますけどね」


 エイミーが笑いながら、そして少し懐かしそうに言う。


 ここで俺は爆弾を投下することにした。


「お前達の目的はこの村の破壊。畑の略奪、村人達を捕まえることなんだよな。一体どんな気持ちだ? この穏やかな村を侵略する気持ちは?」


 これが俺がヴォイス達に言いたかったことだ。さて、これに対してどう答えてくれるのか。

 笑ってたエイミーの顔が一気に強ばる。


「え……いや……そ、ちが」

「違わないよな。確か命令は囮と物資の奪取。何でも奪ってくるのが命令のはずだ。そのために森の入口に大量の竜車を準備していたんだよな? お前達は知ってるか解らないが、国が依頼した冒険者の依頼書には、城の中にいる魔族か生死問わず一人当たり五千Gだった。ここにいる全員一人五千の命だ」


 俺はエイミーの言葉を遮って捲し立てる。もしかしたらエイミー達は冒険者でないから知らないかもしれない。だが探索隊の目的は変わらないはずだ。


「お前達はこの村がこんなに穏やかで慎ましく生活していても、魔族だから、異邦人だからってだけで殺したり、奴隷にしたり、見世物にしたりするんだよな? そういえば、ちょっと前までこの城で雇われていたスプリガンがお前達の国に捕まったんだが、そこでは拷問を受けて殺されたぞ。そして死んだ後は剥製にされ、見世物になっているそうだ」


 俺の言葉に誰も何も言わない。それが真実だと分かっているからだ。


「きっとお前らは今こう思ってるよな? 俺達だって命令だったから仕方なく……ってな。エイミー、さっき自分の故郷を思い出すって言ってたよな? 考えてみろ。例えば青の国の兵士がいきなりエイミーの故郷に来て村人や母親を殺したり、畑や財産を根こそぎ奪っていき、最後に命令だから仕方なくやったから許してね。って言われたらどうする?」


 エイミーは答えない。じっと顔を俯かせている。


「ちょっと前にも言ったが、俺は仕方がないと思っている。悔しいし、許せないとも思いはするが、兵士だって上には逆えない」


 それを仕事にしているんだ。だから俺だって反撃できた。そこに罪悪感はない。


「でも本当に仕方なくって思ってたか? 個々の暮らしを見て、こんな話をしたから、今はそう思っているかもな。でも、ここに攻めるとき仕方なくって思ったか? 多分魔族なんだから、異邦人なんだから死んで当然だろう。そんな風に思ってなかったか? 罪悪感なんて欠片も感じなかったんじゃないのか? でも、もしこの村が人間だったら仕方なくって考えるんじゃないか? 罪悪感を感じるんじゃないのか? 他に方法はないか考えるんじゃないか?」


 さっきまでの話はあくまでも人間同士の話だ。俺達異邦人や魔族はそう思われていない。多分害虫駆除と同じような感覚だったのだろう。


「今回お前達をここに連れてきたのは、お前達なら少しは分かってくれるかと思ったからだ。お前達は輸送隊の仲間を見捨てなかった。異邦人である俺とも話をしてくれた。そんなお前達だから、もしかしたら俺達異邦人や魔族も交流できる可能性はあるんじゃないか? そう思った」


 こいつらで駄目だったら人間との共存は不可能かもしれない。それくらいの覚悟を持って今回連れてきたんだが……。


「さっき話した覚悟というのは、これからの自分と向き合う覚悟だ。今までは当たり前のようにやってきたこと。この状況を知っても変わりなく同じことが出来るか? 兵士として過ごしていくならやらなければいけないだろう。その覚悟だ」


 覚悟とか格好つけた言い方だが、要は俺達を受け入れてくれないか? 俺の気持ちはそう思っていた。



 ――――


「確かに重いな」


 しばらくしてアルフレドが呟く。


「俺も似たようなことを考えたことがある。まぁ人間相手にだがな。命令とはいえ殺しだ。俺は間違ってないか? 悩んだよ。初めて殺した夜は眠れなかった。病気が蔓延しないように村を焼き払ったこともある。今でも考えるよ。本当にあれでよかったのかって。でも、俺は異邦人や魔族の命は気にしたことはなかった。今日初めて考えたと思う。だが、俺は変わらないと思う。多分、躊躇したりしたらこっちが殺られる。兵士としてやっていくからには感情を考えてはいけないからな。でも、恐らくこれからは殺した後で後悔することも増えるかもな」


 アルフレドは淡々と心の内を話す。こいつは根っからの兵士なんだろう。


「俺は戦い自体、今日が二回目でさ。あの天幕で隊長を殺したんだ。それ自体は必要なことだと思ったし後悔はしていない。でも殺すときにさ、こんな奴は苦しみながら死ねばいいやって思っててさ、じわじわとなぶり殺す気だったんだ。その時、姉さんが言ってた快楽殺人者にはなるなって言葉がちらついてさ、ああ、俺は何してるんだろう? って思ったよ」


 今は少し冷静になったから思うが、やはりあの時の俺はあいつ等をいたぶることで自分の欲望を満たしたかったんだと思う。


「俺はさっきアルフレドがロベルトに言ってた『故人を悪く言うな』って言葉にこいつ凄いやつだなって思った。うまく言えないけど、多分ちゃんと向き合っている奴なんだなと思ったよ」


 俺には出来ないことだ。


「ただ多分俺達みたいな魔族は少数だから、同じような感じで他の魔族に接すると殺されると思う。だから、躊躇はしないでほしい。じゃあ何でこんな話をしたんだって感じだよな。……ただ、人間に悪いやつがいるように魔族にも良い奴らはいるんだ。それだけは知っていてほしかった。それだけだ。悪かったな変な話をして」


 これは大事なことだ。この話でこれからこいつらがヘンリーのような魔族にまで躊躇するようなことがあったらそれが死に繋がる。


「いえ、俺達も色々と考えさせられましたよ。すぐには変わることは出来ないし、兵士でいる間は変わることは出来ないでしょう。でも今日のことは忘れないと思う」


 ヴォイスはそう言ってまとめてくれる。元々隊長だからかやはり全体をまとめる力があるよな。


「エイミーも悪かったな。陥れるような役目をさせてしまって」


「いいえ。……私もよく考えてみます。さっきシオンさんが例えで言った村が襲われた状況を考えたら、私悲しくて……。シオンさん達は私達人間にいつもそんな風にされてたかと思うと……ごめんなさい。うまく言葉にできません」


「いいさ、エイミーが真剣に考えてくれることが、こっちは嬉しいんだ。それよりほら……涙を拭けよ。みっともないぞ」


 俺はエイミーにハンカチを差し出す。


「えっ? 私泣いてなんか……あれ? 何で?」


 どうやら自分で泣いていたことに気がついていなかったらしい。すいませんって言いながらハンカチを受け取り慌てて涙を拭く。


「えへへ。母が殺されちゃったとか考えたからかな」


 エイミーは照れながら下手な作り笑顔を向けてくる。少しは落ち着いたみたいだ。


「さて、しんみりしちゃったけど、そろそろ戻るか。あいつらほっとくとどうなってるか……禁則を侵して全滅とかしてないよな?」


「まさか……でもシオンさんの悪口言って、死んでる人がいそうでちょっと怖いんですけど……」


「……冗談になってないな。一応行く前に念を押したつもりだけど……よし、急いでかえ……」


 帰るぞ! って言いたかったが、俺が話し終わる前にシャルティエが走ってこちらへ向かってくるのが目に入った。その後ろからはヒカリとトオルが着いてきている。一体どうしたんだ?


「し、シオン様! 大変です!!」


 俺が気がついたのが分かったのだろう。 息も絶え絶えにシャルティエが俺に向かって叫ぶ。


「どうしたシャルティエ? 何があった?」


「ヘ、ヘンリー卿が……攻めてきました!」


 俺はシャルティエが一瞬何を言っているのか理解できなかった。


「はぁ!? ヘンリーがこの城に来たのか!? 敵の人数は? 迎撃は?」


「攻めてきたのはヘンリー卿一人です! 現れた場所は例の広場……あの人間の捕虜がいる場所です」


「何だって!? 何であんなところに……おい人間達はどうなった!!」


「そ、それが……私が確認した時点では、まだ生き残りはいましたが」


 シャルティエの言い方から結構やられているようだ。


「何てこった。よりにもよって……」


 このタイミングを狙っていたのか? それにしてもどうして一人で?


「おい! どういうことだ! 一体あいつらに何があったんだよ!」


 ただならない状況を察して、ヴォイスが俺に向かって尋ねる。


「どうやらあの結界内に他の魔王が現れたらしい。聞いたことはあるか? 【不死王】ヘンリーって名前」


「【不死王】だと!! どうして!」


 通り名の方は知っていたのだろう。予想外の名前が出てきてとまどうヴォイス。


「元々この城に攻め込もうとしていたんだ。というか赤の国がこの城を攻めようとしたのはヘンリーの仕業だぞ」


「どういうことだ? まさか王と不死王は組んでいるのか!?」


「説明したいが今は時間がない。それよりトオル、すぐに飛べるか?」


 俺はトオルに聞いた。


「お待ち下さい。現地にはルーナ様とサクラ様が向かっております。しばらくは大丈夫でしょう。その前に回復を……」


 シャルティエがそう言うと、ヒカリが俺にポーションを手渡す。


「ポーション? 特に怪我はしていないが?」


「これは魔力回復ポーションだよ。飲めば魔力が回復するはずだよ」


「本当か!? 助かる」


 正直もう魔力は殆どなくなっていたから非常に助かる。俺はポーションを受け取り一気に飲み干す。すると殆どなくなっていた魔力が戻ってくるのを感じる。


「おお、スゲーな。確かに魔力が回復していく。ヒカリありがとな」


「私の魔力じゃあまり回復出来ないだろうけど、私にはこれくらいしか出来ないから……シオン君がんばってね!」


 魔力回復ポーションはヒカリが込めた魔力分回復するみたいだ。ヒカリは俺達の中では魔力が一番低いので確かに全快はしないが、それでも半分近いくらいは回復した。


「シオン様。ヘンリー卿の目的はどうやら人間の方だったようです」


「どういうことだ?」


「ヘンリー卿率いる魔王軍はアンデッド軍なのです、今回の赤の国との戦争で多くの人間が死にました。おそらくこれを見越してヘンリー卿は人間を嗾けたのではないかとルーナ様が仰ってました」


 つまりアンデッド兵を増やすために計画したことだと?


「自軍の補強か。冒険者ギルドへの依頼を考えると、最初は冒険者で考えていたんだろうな。兵隊を率いてくることで思わぬ収穫になったわけだ。しかしどうやって結界の中へ? まさか転移?」


「転移ではなく召喚のようです。前回、使い魔を倒したのを覚えておりますか? 一応浄化しておいたのですが、おそらく骨か血の一部分が残っていたのでしょう。眷属召喚と言って、眷属の一部分を生贄に任意の場所にその場所に眷属を召喚できるのです。今回は自分自身が召喚したようですが……」


 眷属って前回【毒の雨】で殺したコウモリだよな? その一部分を生贄にしたから、前回の戦闘場所である広場に召喚されたのか。ヘンリー一人なのは一人しか召喚できないからか?


「ルーナと姉さんは大丈夫なのか?」


 二人のことだから簡単にはやられないと思うが、ルーナは城の外にいるから、どれだけ戦力ダウンしているか分からない。それに姉さんも初実践を終えて部屋で休んでいたはずだ。


「シオン様が来るまでの時間稼ぎに徹するため、無理はしないと仰ってました」


「了解。じゃあやっぱり急いで行かないとな。シャルティエ、ヒカリ、悪いがこいつらのこと頼んでいいか」


「待て俺たちも一緒に……」


 置いていこうとした俺にヴォイスが声をかける。気持ちはわかるが余計な死体が増えるだけだろう。


「足手まといだ! 相手は魔王、俺よりも遥かに強い相手だ。守りながら戦いなんて出来ないから、ここにいてくれ」


 自分の実力は分かっているのだろう。悔しそうに拳を握りしめる。


「分かった。しかし仲間を……出来る限り助けてやってくれ」


「当然だ。と言いたいところだが、正直どこまで出来るかわからない。すまない。お前達の仲間は無事に帰すといってこの体たらく、本当に申し訳ない」


「謝らないでくれ。シオンさんが悪いわけじゃないんだから。それよりも早くいって助けてやってください」


「そうだな。言ってくる。トオル!」


 さっきまで疲れていた様子のトオルも魔力回復ポーションを飲んである程度回復したようだ。


「こっちも準備できたよ! じゃあ行くよ!」


 そう言って俺達は転移をした。

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