第33話 無双しよう
「ええいっ! 何をしておる!! 相手はたった一人ではないか!?」
戦場で怒号が聞こえる。
「し、しかし隊長! 奴は化け物です。一旦退却した方がよろしいのでは……」
隊長の横にいた男が答える。おそらく参謀か副隊長の位置なのだろう。
「退却できるならとうにしておるわ!? それともお前はあの壁をどうにかすることが出来るっていうのか!?」
「いえ、それは……」
「なら、つべこべ言わずあの化け物をやるしかないだろうが!! ほら、貴様もこんなところで喋ってないでさっさと行ってこい!」
隊長は苛立ちながらも横にいた男に命令する。
「……よし! お前ら付いてこい! あの化け物を倒すぞ!!」
仕方がないとばかりに男は一軍を率いて飛び出す。化け物へと向かって……。
俺は今、千八百の兵士を相手に戦っているところだ。既に五百は倒しただろうか? 三百以降は数えるのを止めてしまった。
「せいやぁぁぁ!!」
半ばヤケクソ気味に近づいてくる兵士達を俺は倒しながら、予め準備していて良かったと思った。準備なしだと確実に面倒だっただろう。
――――
俺は通信室から出た後、おそらく戦場になるであろう広場へと向かった。
広場はちょっとした公園くらいの大きさはある。少し丘になっている部分があったり、奥に行けば小さな花畑なども存在する。
上から見たら大きな森にぽっかり穴があるように見えるだろう。
まず俺はセツナの報告を聞いて兵士達はここへ現れるんじゃないかと思った。
一応城までは竜車が通れる一本道の道路がある。周りは森だ。
この広場は城のすぐ近くにある。二千という数をまとめるには丁度いい場所だろう。
兵士は俺を相手に時間稼ぎをしなくてはならない。二千がバラバラに森で活動すれば時間稼ぎにはなるだろう。
しかし、それでは俺が城に籠もってしまう可能性がある。そうなったら本命の兵士が困る。
結果、ある程度まとまった数で活動しないといけない。そのためにはこの広場がちょうどいいのだ。ここを拠点に城へ攻撃する。
捕虜の二人からこの広場の場所は聞いているはず。だとしたら間違いなく最初に現れるのはここだ。
次に考えるのが一体どれ位の人数が来るのか? ということだ。二千全てがここにくるのは流石に考えにくい。別働隊はいるだろうし。今回は囮と物資の運搬も兼ねている。おそらく補給及び輸送隊は別だろう。
となると、二千全てが森に入るとは限らないということだ。領地外で待機してもおかしくはない。
そいつらをどうやって倒すかが問題だよな。簡単なのはここへ連れ込むこと。要は中が安全だから広場まで来いって言えばいいんじゃないか? 城を占領したことにすればここまで来るだろう。
ただ、俺が言っても信じない。ってか敵だと思われて終わりだよな。冒険者に変装する? いやいや冒険者カードじゃないから無理だろう。
なら、一緒に来た兵士が安全と言ったらどうだろう? 罠だと思うか? 少なくとも俺よりは信憑性はあるだろう。
よし、方向性は決まったな。
まず、兵士達が広場までやってくる。そこでまず全滅させる。その後、その兵士の振りをして広場まで連れ込む。城を占領した、大量の物資で持ち運びできないから全員来いって言えば大丈夫だろう。そうしてそれも全滅させる。
となると、まずは最初の敵が広場から逃げられないようにしないとな。逃げた兵が外の兵に伝えたら終わりだ。
俺は広場に罠を仕掛けることにした。広場の外周に【絶対防御】で壁を作って囲んでしまうのだ。広場から外へ出られない簡易結界というわけだ。【絶対防御】は防御魔法であって広域魔法じゃないから使っても問題ないしな。
試しにやってみる。平地全面に巨大な【絶対防御】。……うん、かなりの魔力を使うな。しかも起動している間は魔力を消費し続ける。例えば五時間維持しながら戦うとなったら、他に使用できる魔力は二割が限界ってとこか。
二割の魔力で五時間で二千の兵士相手か。何人が補給部隊か知らないが、一時間で五百人と考えよう。出来るだけ早めに倒さないとな。
そうしてやってきたのは千八百人。二百人が森の入口の前で待機していると通信室から連絡があった。予想よりも多かったが、やはり待機部隊はいるようだ。俺は作戦通りに行うために広場が見えるように木の陰に潜む。
予想通り先頭の兵士が広場までやってきて待機をした。どうやらこのまま後続を待つようだ。しかも森に入るような別働隊もいないようだ。おそらく一回ここで集まった後に行動を開始するのだろう。
正直、ここが一番のポイントだったと思う。先頭が他を待たずに行動を開始したり、別働隊がすでに森の中にいたらおそらく全滅できずに取り逃しがあったかもしれない。
そういう意味ではあの二人が広場のことを話していたのは本当に助かったかもな。もし存在を知らなかったらここを拠点にしようとは思わなかっただろう。
しばらく待つとどうやら揃ったみたいだ。全員が整列して前で誰かがしゃべっている。その横に左右五名の人間がいる。おそらくこの隊の大将や部隊長だろう。
どうやら全員揃ったみたいなので、そろそろ始めるかな。俺は【絶対防御】を発動させた。
「う、うわっ地震か!?」
「な、何だあれは!!」
地響きと共に地面から現れる壁。それを見て戸惑う兵士達。周囲全てが壁に囲まれたと気づいて慌てて破壊を試みる。
「この壁、毒の壁のようです。触った者が次々と死んでおります!」
既に何人か犠牲になったようだ。ってか、明らかに罠の壁に不用心に触るなよ。
「魔法を当ててもびくともしません! むしろこちらの魔法が壁で破壊され、欠片が毒を帯びて跳ね返ってきます!」
兵士の魔法じゃどれだけ魔法を放っても壊れないだろう。例え【魔法無効化】系の魔法使いがいても、魔力の差がありすぎて壁を消すことは出来ないはずだ。
しかし……ただ壁を出しただけで大騒ぎだ。でも本番はこれからだ。さて攻撃に出るか!
――――
ってな感じで戦闘を開始して早一時間。現時点で死者およそ五百。いいペースだ。
ちなみに今回の俺の戦闘方法は敵に毒を与える。……うん、いつも通りだ。
まず俺の攻撃魔法は遠距離が【毒弾】【毒矢】、近距離が【毒投与】近距離~中距離で【毒射】の四種類だけだ。
前回は【毒弾】と【毒投与】しか使っていない。今回は他の魔法から試してみた。
【毒矢】は毒を矢は発動まで少し……といってもコンマ数秒で誤差の範囲だが。弓矢を召喚して弓に矢をつがえて,放つ。貫通力が半端ない。剣では歯が立たなかったアーケテリウムもこれならダメージが入るかもしれない。
【毒射】は人差し指を向ければすぐに発射できる。前回の【毒弾】よりも威力は小さめのため貫通しても後ろの兵士までは届かない。
正直この【毒射】は、他に比べて威力的は低くても、このくらいの敵には十分だし、近接戦でも即時発動だからものすごく使い勝手がいい。
【毒投与】は俺がどこでもいいので肌を触るだけでいいから威力を求めなくていいのが有り難い。だが肌を触る手間を考えるなら、どこでに当てて服ごと貫通してもいい【毒射】の方がいいだろう。
今回遠距離攻撃は【毒矢】を試した程度でそれ以外は殆どしていない。やるとしても、牽制で【毒弾】を適当に放つだけだ。しかも放つわけでなく、放物線を描いて投げる。どちらかといえば手榴弾だな。よしこれからは【毒爆弾】と名付けよう。
しかし、ずっと動き続けているから、流石にしんどくなってきた。まぁもし避けることが出来ない攻撃でも【自動盾】が発動しているので問題はないが、やはり避けてしまう。
もし相手の武器を破壊したいなら【毒の盾】でもいい。酸を付与すれば武器は溶けるか折れるかするはずだ。密集しているので敵からの遠距離魔法も考えないで済む。
すでに兵士の中には恐怖で座り込んでいる者、無理矢理【絶対防御】の壁を突破しようとする者など、命令を聞かずに自分勝手に行動している者が見受けられた。この部隊の指揮の低さが良く分かる。
ルーナが大丈夫といった理由もわかる気がする。何人いたって、たとえ広域魔法を使わなくたって、こいつらには負ける気がしない。
おっ、近くにいた兵士達が下がっていく? 魔法でも唱えるのか?
そう思ったら一人の兵士が前に出てくる。さっきまで総大将と話していた男だ。この部隊の中でも偉い方なんだろう。
「お前は……何故こんなことをする?」
「何故って? おいおい、何を言ってるんだよ。勝手に敷地内に入ってきたのはそっちだろう? それとも何か? 赤の国では他国のやつが城に土足で上がって、金目の物を持ち帰ってもお咎めなしなのか? なら今度色々と貰いに行くよ」
「なっ!? 巫山戯たことを……」
「ふざけてるのはそっちだろ! 解放した二人から聞いてるはずだ。こっちには関わるなと。それを無視して攻めてくるからこうなる」
別にこの男と話す必要はない。そう思って【毒弾】を放つ。まっすぐ男の胸の辺りに当たるとそのまま貫通し、男は倒れていく。
「ああっリカード様!!」
どうやらリカードという男だったらしい。そのリカードが倒れたことによりさらに場が乱れるようになった。かなり偉い奴だったのかな?
もう殆ど俺に向かってくる奴がいない。逃げられないこの空間の中で、鬼ごっこのように逃げ回っている。流石にこれっていくらルーナが言ったとしても経験値にもなり得ないんじゃないか? 時間だけが過ぎていく気がするぞ?
俺は戦いながらではあったが、ルーナに連絡することにした。
『はいシオン様。なんでしょうか?』
幸いルーナはすぐに出てくれた。
「ああ、ルーナか。今こっちを見てるか?」
キャメリアの魔法でここも映っているはずだ。
『ええ、見ております。どうやら好調のようですね』
「ああ、そうなんだが……正直飽きた。これってさ、ただの虐殺で……これ以上はとても経験値になるとは思えない。それでも全員殺さないと駄目か? もうこれ捕虜とかでいいんじゃないか?」
『……そうですね。わたくしも正直ここまで酷いとは思いませんでした。数人は強い方もいるとは思ったんですけどね。畏まりました。では捕虜にいたしましょう。上官を殺して、降参するものは動かなくしておいてください』
「了解。あと、結界の外にいる連中はどうする? そっちも捕虜でいいか?」
『シオン様の判断にお任せいたします。ですが、一人も逃がさないように気をつけてください』
「分かってるよ。じゃあ一旦切るわ」
そう言って通話を切る。さてと、では呼びかけますかね。
――――
「おーい! 聞こえるか! 今からお前達に選択肢をやる。降伏するものは武器を捨てて手を上げろ! 上官以外は捕虜にする。上官は上官らしく死を持って償ってもらうから降伏しても無駄だ。だから上官を助けようとするものと上官だけかかってこい! あと上官を隠したらそこはまとめて殺すから、嫌なら上官を差し出すように!!」
俺がそう叫ぶと、兵士達のほとんどが武器を捨てて手を上げる。困ったのは部隊長や大将、そしてそいつらの近くにいる奴らだ。隊長達は降伏しても無駄だから武器を捨てられないし、近くにいるやつは武器を捨てたら今度は隊長に制裁されるだろう。
「おい! 貴様ら何武器を捨てているんだ! 戦え! 戦わんと儂がお前達を叩き切るぞ!」
そう叫んでいる奴もいるが、そういうやつは近くの兵から切られていた。
「死にたきゃ勝手に死ね! 俺はもうこんなのは嫌だ。降伏する!」
そう言って隊長を殺す者が出始める。こうなったら後はもう同士討ちだ。自分達の隊長を殺して自分だけが助かろうとする者が大半だ。
気がつくと総大将まで誰かに殺されてた。少なくとも俺は殺してない。
大体三十分くらい経っただろうか。同士討ちが終わり、生き残ったのは五百くらいか?
俺が全部で六百くらい、生き残りが五百、壁など自爆したものもいるが、少なくとも五百が同士討ちの犠牲になっているような気がする。
まぁ俺がそう仕向けたのだが……正直人の身勝手、醜悪さに反吐が出そうだ。
生き残りは武装解除して立って俺の指示を待っている。
「よし、ではまずお前達は捕虜扱いになるから、逆らったり、逃げたりしないように!約束が守れるやつはこれを飲んでもらう」
俺は錠剤を一人ずつ渡していく。
「これは何でありますのでしょうか?」
恐怖からかおかしな言葉遣いになっているが、一人の男が勇気を出して話しかけてくる。
「お前達、二人の捕虜の話は知っているか? 呪いに掛かっているって話だ。これはその呪いにかかる薬だ」
正直残っている全員に一人ずつ【毒の契約】をしていくのは時間がかかりすぎる。そのために【毒の契約】を錠剤にした。飲むだけで発動するようにしたのだ。
途端に辺りがざわめく。もう飲んでしまったものは吐き出そうとし、飲んでいないものは捨てようとする。
「騒ぐな! 飲まなかったやつは反逆の意思とみて死んでもらうから。それから呪いといっても別に害があるわけではない。条件を破るか、無理矢理解除しようとしない限りは何の影響もない」
俺が怒鳴ると静まった。騒ぐと殺されると思ったんだろう。まだ少しざわついてる気もするが、聞かないやつは知らん。
「条件というのは、俺に逆らわない。それとここでのことは一切外部に漏らさない。この二つのみだ。それに従わないやつは呪いが発動して死ぬが自業自得と考えろ」
そう言って途中になってた錠剤を配りを続ける。
「よーし、全員貰ったな、今更貰ってないって言っても、もう配布しないからな!」
ようやく全員に配り終わった。配るだけでも結構時間がかかった。もし一人ずつ【毒の契約】をしていたら半日はかかったかもしれない。
俺は追加でもらいに来るやつがいないか確認して、いないようだから締め切ることにした。
「この契約を守れそうにないやつは飲まなくてもいい。死ぬだけだ。後、飲んだ振りをしても無駄だぞ。今からここに毒の雨を降らせる。普通なら死んでしまうが、この薬を飲んだものにはその毒は効かないようになっている。飲んでない奴のみ死ぬからな!」
その言葉に飲むのを躊躇していたやつは慌てて飲んでいく。必ずいると思ったが、飲んだ振りをして薬を捨てた兵が大騒ぎをする。
ぱっと見、慌てているのは二十人くらいか? 五百の内の二十。多いと思うべきなのか少ないと思うべきなのか悩みどころだな。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 薬を落としちまった! もう一回くれ!」
捨てたであろう男が慌てて俺の前に来る。確かこいつはさっき上官に向かって剣を振っていたやつだ。やはり自分のことしか考えてなかったようだ。
「さっきも言っただろう。これ以上は提供しないと。落としたなら拾ってでも飲むんだな」
それを聞いて男は絶望し、俺に襲いかかってくる。
「こうなったら…死ねぇ!」
武装解除しているから殴りかかることしか出来ない。まぁ避けるのは簡単だし、反撃も出来るが、俺はあえて【自動盾】 に任せることにした。
俺の顔の前で【自動盾】が発動し男の拳が止まる。
「なっ!? ……ぐあああ!!」
男の殴った手が毒に侵され変色していく。変色は男の腕へ、体へ少しずつ浸食していく。今回の【自動盾】は見せしめの意味も込めて即死性をしないよう、じわじわと体を蝕んでいく毒にしている。
「見ただろう。俺に直接攻撃しようとしても毒の結界で俺に届くことはない。これは俺の意思に関係なく、俺に向かって攻撃したものに自動的に発動する。だから不意打ちしようとしても無駄だ」
俺は逆らえないように念を押していく。
そして、見せしめにあった男を見て、薬を捨てた残りの男たちは俺を襲うのは諦め、まだ薬を飲んでいない奴に襲いかかる。
「おらぁ! その薬よこせぇ!」
「うるせぇ誰がお前なんかにやるかよ!」
ここまでやっても躊躇していたやつがまだいたらしい。一部分で薬の取り合いが始まっていた。それを見て慌てて飲むもの、横取りが成功して薬を飲めたものもいるようだ。まぁ躊躇していた方が悪いな。
未だに一部分では取り合いをしていたが、俺は気にせずに【毒の雨】を発動することにした。
雨が止むと生き残りは五十人ほど減っていた。あれだけ言っても飲まなかった奴はそれなりにいたらしい。
「よし、今ここにいるやつは薬をちゃんと飲んだやつのようだな。お前らはさっきも言ったように俺には逆らえない、ここでのことは何も話せないようになっている。これを破るとそこで死んでいるやつと同じようになるからな」
俺は再度念を押しておくことにする。
兵士達は今までのことから俺の言葉に嘘はないと感じているのだろう。ゴクンと生唾を飲む音がどこからか聞こえてくる。
「よし、まずお前達にはやってもらうことがある。それは森の入口で待機している連中の確保だ」
それを聞いて兵士たちはざわめく。
「ちょっと待ってくれ! 俺は確かに降伏をした。だが、仲間を裏切るようなことはしたくない!」
一人の男が俺に向かって抗議をしてくる。こいつはまともなやつみたいだな。
「勘違いするな。別にお前達に殺し合いをしろとか言わん。だが、外にいる二百人を放置するわけにもいかない。それは分かるよな?」
兵士たちはまず、俺が外に残してきた人数を性格に知っていて驚く。そしてこの作戦が最初から筒抜けだったことを理解する。
「これから俺が奴らを全滅させに行ってもいい。だが、お前達だってみすみす仲間を殺されたくはないだろう? だからお前達に仲間の降伏を薦めてほしい。ちなみにこれは命令ではなく任意でのお願いになる。別にやらなくても殺したりはしない。ただ、誰も名乗り出ない場合は俺が殺しに行く、もしこの作戦に参加した場合、お前達は降伏以外の行動をしたり、仲間に逃走を促したり、またお前ら自身が逃げたりしたら契約違反になり呪いが発動する。参加する場合はよく考えて参加するんだな」
その言葉に殆どの者が不参加を決め込んだようだ。まぁここで大人しくしていたら死ぬことはない。意味のないリスクはとりたくないだろう。
「一つ確認させてくれないか? もし降伏勧告をして、あいつらが自主的に逃げたり、こちらを攻撃した場合はどうなるんだ? 俺たちは死ぬのか?」
さっきとは別の男が質問してきた。
「いや、それはないから安心してくれ。お前達はあくまでも降伏勧告に行くだけだ。使命を全うしたら結果は問わない。だが一緒に反逆したら命は無い。さて、誰か行くやつはいないか?」
「俺は行く」
暫く待った後、さっき仲間を裏切らないって言った男がが手をあげる。
「俺も行く!」
今質問してきた男も手をあげる。先ほどまでの態度から参加を言い出すのはこの二人だろうとは思った。そして、それに引きずれれたように他の者も遅れて手を上げる。最終的には十名が名乗りを挙げた。
思ったよりも多いな。いや、五百人くらいいて十人だから少ないか?
俺は最初に手をあげた方を振り向き、「とりあえずお前がリーダーな」と伝え、二番目の方に「お前はサブリーダーだ。頼んだぞ」と言った。
二人はお互いの顔を見合わせ、そして、俺の方を見て「分かった」とだけ言った。
「よし、じゃあお前らは俺と一緒に森の外まで行くぞ。そして、行かないお前らはここで待ってろ。この中だったら自由にしてて構わない。ただし禁則は破るなよ! 何度も言ったが、俺に逆らわない、ここでのことは話さない、この二つを破るなよ」
さすがにここまで言って禁則を破ったらもう知らん。
俺は十人を連れて外へと向かった。




