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機神漫遊記 ~異世界生まれの最終兵器~  作者: 十月隼
四章 機神と大会
92/197

二次

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 丸一日観光を楽しんだ翌日、今日も今日とて気持ちよく戦うにはもってこいの快晴で迎える武闘大会二次予選だ。

 もうすぐ太陽が真上にさしかかろうという頃合い、ボクが今いるのは再びグランディアの一般市街。その中でもいくつかの通りが交差する広場的な場所の一つだ。この広場一つ一つが二次予選の一ブロックごとにそれぞれあてがわれていて、つまりはここに集まって準備運動をしている物騒な格好のみなさんがボクの対戦相手ってことだ。

 ちなみに事前情報通り、同じパーティに所属しているリクスは北門で受付を終えた時点で別の広場に誘導されていったからここにはいない。ケレンも応援としてそっちに付いていったけど、その代わりのようにシェリアはボクの応援に付いてきてくれたからその辺の屋上にいるはず――ああ、いたいた。……あれ、すぐ近くにいるの、一次予選の時に雑炊を食べさせてくれたおばさんだ。やっほー見えてる? ボク頑張るからね!

 知り合い二人に向かって広場から大きく手を振ってみるとどっちもすぐに気づいてくれたようで、シェリアは胸の前あたりで小さく、おばさんは頭の上で豪快にそれぞれ手を振り返してくれた。

 そして同時にその動きでお互いの存在に気づいたらしく、小さく会釈をするシェリアに対しておばさんは満面の笑顔ですぐ隣まで移動した。遠目には超フレンドリーなおばさんにシェリアが戸惑っているようだけど、おばさんの接し方が絶妙なのかそこまで嫌って様子じゃないのが見て取れる。うーん、隠してる種族のせいもあってかなかなか他人に気を許さないシェリアのあんな様子はなかなかレアだね。ぜひ近くで眺めてにやにやしていたかった!

 まあ、あっちはそのまま仲良く観戦してもらうとして、だ。

 改めて広場に散って開始の合図を待っているボクを除いた十九人を見渡す。半部くらいがヒュメル族で、そこにアナイマ族やデュカス族にワーグ族――いわゆる獣人だけど、アナイマ族とは違って二足歩行した獣みたいな外見を持つ脳筋種族といったファンタジーならではの光景が広がる中、ヒュメル族の内の一人に目を留めれば自然と物騒な笑みが浮かんでくるのが押さえきれない。そんなボクのことは向こうも当然気づいているようで、時折険しい視線を向けてくるのは両手剣(ツーハンドソード)を背負った青年。

 そう、何を隠そうボクの二次予選の対戦相手の中に、あのイルバスが混ざっていたのだ! なんていう幸運! こういうのを天の采配って言うのかな?

 とにもかくにも、前々から一発殴っておきたいと思ってた相手をなんの遠慮も呵責もなく堂々と殴りに行けるわけだ! 私怨? 武闘大会の真っ最中だから、死なない程度ならいくらボコっても合法です!

 もうワクワクがあふれて止まらない! 正午の開始までもう少しのはずなんだけど、なかなか時間が進まない錯覚すら覚えてちょっともどかしいな!


〈――皆様お待たせしました、総司会のノイアです! 本日も晴天に恵まれ、一次予選を突破した方々が競い合うには絶好の日和でしょう!〉


 そんなことを考えた矢先、なかなかテンションの高い挨拶が広場に高々と響き渡った。聞き覚えがあるね、一次予選の時に進行役って言ってた女の人声だ。多分放送だから、今頃リクスも別の場所で同じ言葉を聞いてることだろう。


〈早速ですが、本日行われる二次予選の概要をご説明させていただきます! 一次予選で大会メダルを五枚手に入れることができた参加者の皆様は、すでに市街地各所の広場まで誘導されていることと思います! そして今回の二次予選は、それぞれの広場に集められた中から最後まで倒れなかった一人が決勝へと進出することになります!〉


 いよいよ始まりが迫った証の放送を、内容自体は事前に聞いてあるから適当に聞き流しつつ装備の最終確認。今回は右手にスノウティア、左手には小盾(バックラー)状態のサンラストというリクスと似た状態だ。うん、これはリクススタイルと名付けよう

 なんでわざわざそうしたかというと、それなりに戦闘経験(データ)を見れたからボクなりの動きに昇華させようと思ったのが一つ。それが上手くいけばボクがリクスに技術指導できるんじゃないかとふと思いついたのが一つだ。いつも強くなることに真剣なリクスには仲間としてぜひとも協力してあげたいからね。

 ……このことは宿を出るときにそう決めたことで、リクスがベースの戦い方でイルバスをぶっ飛ばして『ざまぁ』してやろうなんてことはちっとも思っていなかったよ? だって誰が対戦相手かは会場に来るまでわからなかったんだし!

 ちなみに、乱戦じゃ邪魔になりそうだった愛用の外套はとっくに脱いでシェリアに預けている。おかげで周りの視線がめちゃくちゃ集まってきてるんだけど、もう気にしても仕方ないから開き直って堂々としてみたり。


〈審判として各所に配置されております騎士の皆様が戦闘不能と判断された時点で二次予選敗退となります! また、戦闘の舞台はそれぞれが今いる広場の中のみです! 通りや広場に面する建物内に体が出てしまった時点で失格となりますのでご注意ください! それ以外の点に関しましては一次予選の細則を踏襲させていただきます!〉


 装備は良しと改めて周囲を見渡す。ほぼ円形の広場に障害物は一切なく、二十人の人間が乱闘を繰り広げるには充分な広さだ。四方にある通りへ続く道の入り口には甲冑姿の騎士の人たちがそれぞれ二人ずつ。建物の屋上には観客が押し合いへし合いしてるけど、まあそっちは関係ないからいいや。

 肝心の対戦相手たちは、特に指定されもしなかったせいかみんなある程度の距離を保ちつつ広場のあちこちに散っている。ボクがいるのは一番色々動きやすそうだからほぼ中央だけど、四方を警戒しないといけないからかすぐ近くには誰もいない。対して最優先目標のイルバスは建物を背にする端っこだ。開始前からすぐ近くに陣取ってても良かったんだけど、そうすると離れようとするイルバスに付いていくボクっていう不毛な追いかけっこになりそうな気がしたからやめておいた。どうせ始まったら逃げられないんだから、即行で接近して殴りかかればいいだけだしね!


〈以上が二次予選の概要です! さあ、ここからは真の強者のみが競い合う場です! この中から選ばれた猛者として決勝への出場権を手にするのは、果たしていったい誰なんでしょう!?〉

呼出(アウェイク)周辺精査(サーチコンパイラ)


 いよいよ始まりそうな放送を聞いていつものように『探査』の魔導式(マギス)を起動。うん、感度良好。これなら広場の戦いを余すことなくモニターできるね。今後のボクの成長のために、みんなには協力してもらうよー?


〈――それでは皆様お待ちかね、グラフト大武闘大会二次予選、開始です!〉


 その宣言と共に高らかな鐘の音が響き渡る。それとほぼ同時、ボクはイルバスめがけて駆け出した。標的はしっかりと周囲を警戒しつつ、両手剣を構えたままその場から動かず待ちの姿勢。好都合だね。

 そして『探査』の反応に意識を傾ければ、早速広場のあちこちで戦闘が発生している模様。そんな中で三つの反応がボクを目指して来ている。内二つはそれぞれボクの斜め後ろから来てるから先にかち合ってくれるだろうし後回し。


「うおおぉぉぉっ!!」


 残りの一つは行く手やや左から、雄叫びを上げつつ距離を詰めてくる鋲打ち革鎧(バンデッドアーマー)を着込んで戦槌(バトルハンマー)を担いだ……うん、ゴリラだね。多分猿とかのワーグ族なんだろうけど、見た目完全に武装したゴリラだ。

 まあ外見のことはともかく、特になんの因縁もないけどイルバスを殴りに行くには邪魔だからさっさと退場してもらおう。

 左肩を突き出すように半身になりながら左腕を畳み、サンラストが正面に来るように構えたところで脚への魔力供給を増やして地面を蹴った。急加速したボクの進行方向は今まさに迫り来るゴリラの人。

 それを見たゴリラの人がギョッとした顔になって反射的に戦槌(バトルハンマー)を振り下ろそうとしたけど、それより前に懐に飛び込んだボクは勢いを殺さずそのまま突進を敢行。


「ぐぼぁっ!?」


 小柄ながら全身金属のおかげで二百ケートゥ――前の世界で言うおよそ二百キロを超える重量と並の人間には出せない加速度を余すことなく乗せた盾突進(シールドチャージ)は、見上げるほどの筋骨隆々な体躯を持つゴリラの人を交通事故のごとく盛大に跳ね飛ばした。……あれ、なんでだろう、今なんかちょっと複雑な気分になった。まあ、ワーグ族は並の人より頑丈って話だから多分大丈夫だろう。

 吹っ飛んだゴリラの人が運悪く着弾地点にいた人を巻き込むのを見送り、『探査』の反応で後ろから迫っていた二人が思った通りに戦い始めたのを確認。障害はなくなったと判断して視線をイルバスに戻せば、いつの間にやら見知らぬ双剣使いと斬り結んでいた。ちょっとそこの知らないヒュメル族の人! そいつはまずボクが殴りたいんだ!

 盾突進(シールドチャージ)の勢いのまま戦う二人の元まで駆けつければ、タイミング良く双剣使いの人がボクの方へと飛び退ってきた。うん――


「――邪魔!!」

「ぐぇっ!?」


 体の捻りも加えた盾打撃(シールドバッシュ)で目の前の相手を真横に吹っ飛ばす。どこかの誰か巻き込まれたような音も聞こえてきたけど、今はそんなことどうでもいい。驚きに目を見開くイルバスまでに立ちはだかる障害はもうなにもない!


「やっほー!!」


 一応知り合いだから挨拶しながら振りかぶったスノウティアを真っ正面からたたきつけた。対するイルバスは瞬時に真剣な表情になると、両手剣(ツーハンドソード)を盾のように掲げ刃の平に片手を添えて受け止める体勢に。ふっふーん、ボクの一撃がただの人間に耐えられるかな?

 なんて思った瞬間、イルバスは両手剣(ツーハンドソード)の柄を持つ右手をくいっと体に引き寄せると同時、素早く右足を引いた。その結果、左手で支えられている場所を中心に大きく動いた両手剣(ツーハンドソード)は激突の瞬間に急角度を取り、対応する間もなかったスノウティアはあっけなくその平を滑ってついさっきまでイルバスがいたはずの空間をむなしく通り過ぎた。

 勢いを殺す余裕のなかったせいでたたらを踏むボクの『探査』に、剣に添えた左手に力を込めて押し潰すかのように、ボクのがら空きの背中めがけて振り下ろそうとするイルバスの反応が映った。まずい、このまま何もせずに受けたらクリティカルヒット――つまりはボクの負けになる!?

 咄嗟に体を捻って無理矢理前後を入れ替え、両手剣(ツーハンドソード)の平打ちが直撃する寸前になんとかサンラストを割り込ませる。けれど前傾姿勢から強引に裏表をひっくり返したような体勢だ。当然踏ん張りが効くわけもなく、そのまま為す術なく地面へとたたきつけられた。

 ズンッ――と芯に響く音と共に衝撃が身体を伝ってくる。もろに頭からいったよ。もしボクが生身なら後頭部強打で気絶するか、よくても衝撃で息が詰まったことだろう。けどまあ致命傷とは言えないからセーフ!

 そんなボクの視界に飛んでくる拳が! 頭狙いのそれはまごうことなきイルバスの右手! どうやらいったん両手剣(ツーハンドソード)を手放しての追撃らしいけど容赦ないな!?

 慌てて全力で首を傾けた直後に側頭部をかすめて地面を叩くイルバスの右拳。今ので仕留めきれなかったからか、イルバスから舌打ちが聞こえた。あっぶな!? ここまでの動きは予想しなかったなめらかさだ。事前情報じゃ腕は飛び抜けていてもリクスたちと同じカッパーランクだと思って油断してた。

 けど、今のイルバスは左手で両手剣(ツーハンドソード)ごとボクを地面に押さえつけている中途半端な姿勢で、唯一自由に動かせる右手も空振った直後だ。すぐに次の攻撃には移れまい。

 ならば反撃とスノウティアで肩を狙って突こうとした瞬間、まるでそれを察知したかのように倒れたボクの足の方へと素早く転がり距離を取るイルバス。そっちに逃げられたら、仰向けに倒れてる現状じゃ右手に握っているスノウティアで追撃はほぼ不可能だ。加えてその時に巻き込むようにして両手剣(ツーハンドソード)をきっちり回収していっている。むむむ、上手いこと動くな、こいつ。

 とにかく圧力はなくなったから素早く立ち上がれば、ほぼ同時にイルバスも体勢を整えて両手剣(ツーハンドソード)を構え直していた。あいにく相手の隙がわかるほど武芸を理解してるわけじゃないけど、少なくとも何も考えず斬りかかるのはまずいってことくらいは今の動きで理解した。マキナ族じゃなかったら三回は戦闘不能になってたね、確実に。


「思ったよりも器用に動くんだね」

「……なぜ平然としていられる?」


 なんとはなしに呟けば、イルバスは薄気味悪いものでも見るような目でそう聞いてくる。やっぱりこいつ失礼なヤツだな! マキナ族が規格外な性能してるのは認めるけどさ!


「とりあえず一発――できれば気の済むまで殴らせてくれない?」

「断る」


 試しに可愛く小首を傾げて聞いてみたけど、キッパリと即答された。ちっ、おとなしくしてくれれば穏便に済ませてあげようって思ったのに……。



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