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あの、パン落としましたよ  作者: 中州乙乙
14/21

第14話 「うち来ない?」

 我に返ると目の前に無数の死体があった。


「これ、私がやったの‥‥?」


 強さを求めた結果、殺人鬼になった。なぜあんな簡単にサイボーグ手術など受けてしまったのだろう。


「私は人を殺す力なんて欲しくなかった‥‥!」



 茜は家に帰らなかった。親に会わす顔がない。しばらくは公園や河原などで野宿することにした。


「あの、そんなとこで寝てたら体に悪いですよ?」


 ある日の夜、公園のベンチで寝ていると声をかけられた。


(警官かな?いろいろ聞かれるだろうなぁ。めんどくさいなぁ‥‥。)


 そう思いながら体を起こすと、そこには一人の青年が立っていた。姿からして警察官ではないようだ。


「あの、もしかして家出‥‥?」


「うーん、まぁそんなところです。」


 眠い。こんな奴無視してさっさと寝よう。そう思ったその時、彼は衝撃の一言を放った。


「ねぇ、うち来ない?」


 え?今なんて言った?うちに来ないって言った?


「そんなところで寝てたら、体に悪いよ。それに、せっかく綺麗で可愛いのに肌とかダメになっちゃうよ。うちへ来なよ。」


 綺麗で可愛い?デヘヘ。でも、なんか恐いな。もしかしてこの男はイヤらしいことしようとしてるんじゃないだろうか。普通、公園で寝てる女を家に連れ込まないよな。


「そんな、悪いです。」


「いやいや、遠慮しなくて良いよ。さあ!」


 結局、その男について行くことにした。


「どう?結構良い部屋でしょ?」


 結構どころじゃない。むちゃくちゃ良い部屋じゃないか。


「こんな素晴らしい部屋‥‥。いいんですか?」


「ああ、もちろん。いや、実は実家が結構近くてね。この部屋、借りたはいいもののあまり使ってなかったんだ。」


 なんだ。そういうことか。2人で暮らすとかじゃないのね。ちょっと残念。


「ありがとうございます。こんな素敵な部屋を貸してもらって‥‥。」


「いや、いいよいいよ。キミみたいな美人さんが住んでくれるならこの部屋も喜んでくれるよ。」


 部屋が喜ぶ?なんか面白い人だな。そういえば名前聞いてなかったな。


「あの、そういえばお互いまだ名前言ってませんでしたよね?」


「ああ、そういえばそうだね。じゃあ僕から。僕の名前は佐々木俊介。学生です。」


 俊介はニッコリと微笑んだ。素敵な笑顔だ。


「えっと、私は‥‥、山崎麦子と言います‥‥。」


 あれ?なんで妹の名前なんか名乗ってしまったんだろう。


「へぇ、麦子さんか。良い名前だね。」


 まあいいか。良い名前って言ってもらえたし。

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