#18
時は進み、放課後。
「なぁ、芦苅」
「伏美君。どしたの?」
三尋が掃除当番に行ってる間、なづなと伏美は教室で待っていた。
「いや、今日さ……お前教室にいなかったから知らないと思うけど、丹波の奴が変なこと言ってたんだよ。五組のターゲットが、お前か三尋になればいい、みたいなこと」
「えっ……そうなの?」
「あぁ。だから気をつけろよ。あいつ、キレたら何するか分かんないタイプだから」
「ううん……多分、怖いんだろうね。三尋に何かしたら困るけど、気持ちは分かるよ」
「いやいや、お前もダメだろ」
伏美は呆れ顔でなづなの頬をつついた。
もう、教室に二人以外いない。とうとうこのクラスに順番が回ってきてから、皆挨拶を済ましたら逃げるように帰って行くようになった。
「伏美君も、早く帰った方がいいよ。もう、何が起きるか分かんないからさ」
「おぉ。……でも、お前は?」
「俺は三尋を待ってる。一緒に帰る約束しちゃったし、先に帰ったら怒るだろうから」
それまで危なくないか? と伏美は腕を組む。しかしなづなは首を振って、力強く答えた。
「大丈夫、放課後は皆危険だもん。それに転校してきたばっかの三尋には、もう怖い想いをさせないって約束したんだ」
「お前、決意だけは男前だよなぁ。じゃ、気をつけろよ」
「ありがと。伏美君もね!」
伏美が教室を出て行ってから、なづなは独り窓の外を眺めていた。夕焼けは綺麗なのにどこか物悲しい。暗くなるのが嫌なのか……それとも、この色自体が心を不安定にさせるのか。
不安……やはり、自分は不安なのだ。
大層なことを言っても、いざという時に何もできない。昔からそうだった。いつも誰かの後ろに隠れて、守ってもらっていた。高校生になって少し変わったと思ったけど、それは大きな勘違いかもしれない。
気付いたら誰かに守ってもらっている。
それは、もう嫌だ……。
締めてるネクタイがやたら苦しく感じて、外してしまった。どうせもう帰るし、構わないだろう。
それにしても……三尋、遅いなぁ。
掃除はとっくに終わってる時間だ。時計を確認し、ようやく心配になる。迎えに行こうか考えていたとき、教室のドアが開いた。
戻って来たのかな……。
すぐに顔を向けたものの、そこにいたのは、
「よお、芦苅」
「丹波君……」
三尋ではなく、クラスメイトの丹波だった。
「一人ならちょうど良かった。ちょっとついてこいよ」




