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親ガチャ転生~毎回親に殺されるので転生を拒否したら、異世界の女神様から産まれました~  作者: 里見みさと
第4章 渡り鳥編

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38 ネコと和解せよ

 冒険者ギルドを出て暫くすると、町長の屋敷が見えてきた。

 近づくにつれ蠅や鼠が増えてきている。聖結界を張っているから平気だが、たぶん辺りは酷い臭いだろう…。


 屋敷の門前には看板が立ててあった。


 ――――――――――――――――――――

  現在流行している病気の原因は猫である

   ネコを駆逐せよ!

   死体を持ち込めば一匹あたり

   五千レアで買い取る

      これは命令である

 

       町長 サチウス  

 ――――――――――――――――――――


 うわー、マジだった!

 猫一匹で五千レア貰えるなら喜んで狩る人が出るだろうし、命令だからと仕方なく従う人もいるよね。

 これは、町長に直談判しないといけない案件だ。


 ○○○


「私が町長のサチウスだ。何の用だね?猫の買い取りならこちらのかごに…」


 町長宅に突撃すると、現れたのはネカラアクを若くしたような、二十代半ばの幸薄そうな顔立ちの男だった。


「冒険者のリンカと申します。買い取りではなく、流行病のことで…」

「む?リンカだと?もしや、十年前の事件で父を捕らえたという…?」

「は、はい…。そのリンカですっ!あわわわ…」

(ヤバい、バレてる!恨まれていたらどうしようっ)


 思わず身構えていると、「ぶっ!」と町長が噴出したではないか!


「いや、そんなに警戒しないでくれ。父(あいつ)は外面がいいだけのクズだったからね…。まあ、立ち話もなんだし応接室に案内するよ」


 急にフレンドリーになったような?まあ、あのネカラアクのことだ、妾の子を虐待とか容易に想像できるわ。彼にも思うところあったんだろうね…。

 

 応接室に通されソファーに座ると、町長自ら茶をいれてくれた。香り高いハーブティーだ。もし毒を仕込むなら強い香りがある方が誤魔化しが効く。私はこっそりと鑑定をかけてみた。


 …毒は入っていなかった。

 鑑定によると熱帯地方の茶葉や花を使った、リラックス効果のあるお茶らしい。この辺りは大陸の北部なので、熱帯地方の茶は珍しいはずだが…?


「美味しいですね。この辺りには無いお茶ですか?」

「うん、美味いだろう?最近まで南部の熱帯地方に住んでいたんだが、この味が気に入ってしまってね。引き上げる際に大量に持ってきたんだよ」

「え?町長さんはずっとこの土地に住んで居たんじゃないんですか?」

「いや、十年前に南部の僻地に流刑されたんだよ。事件に関与してなくても一応父(あいつ)の子だからね。こちらに戻って来たのはたしか…七か月前だな」


 最悪の想像が頭を過ぎった。


「もしや、引っ越しのとき積み荷から鼠が出たとか、聞いてません?」

「ん?ああ。屋敷に着いた時、娘とメイドが衣装箱から鼠が出たと騒いでいたな。外が肌寒くて上着を取り出した際に飛び出してきたらしいが」


 最悪の想像が当たってしまったようだ…。



「翌日、鼠を怖れた娘が野良猫を捕まえてきたんだ。ボロボロになりながらね。怒られると思ったのかメ(・)イ(・)ド(・)も(・)連(・)れ(・)ず(・)一(・)人(・)で(・)だ。『パパ、猫飼っていい?』なんて言って笑っていた。そのせいで!猫のせいで娘は死んだのだ!」


 穏やかだった町長の顔が、怒りと悲しみに歪んだ。


「辛いことを聞いてすみませんでした。それで…その衣装箱は今どこに?屋敷内ですか?」

「い、いや、搬入前に鼠に気付いたんだ。鼠が触れたかもしれんからな、敷地外に出しておいたらいつの間にかなくなっていたよ」


 たった一匹の熱帯産の鼠がペスト菌の宿主だったとして。持ち去られた衣装にも、その血を吸ったノミが多数付着していたはずだ。それらは新しい宿主を探し他の鼠や人に飛びつき血を吸い、ペスト菌の保菌者は増えて行く。それだけで何千、何万匹のノミが町に放たれただろうか。

 そして、最悪なことに町から鼠の天敵の猫は排除され、鼠だけ増え続けた…。


「町長さん、この流行病は猫のせいではありません」

「なん…だと……?現に娘は猫の咬み痕が腫れたあとに苦しんで死んだんだぞ!世話をしていたメイドにも移ったのだ!」


「いいえ。猫が原因の病気【パスツレラ菌感染症】は、確かに患部の腫れや発熱などの症状が出ますが、死ぬほどの病気じゃありません。伝染もしません。猫に咬まれていないメイドさんまで亡くなるのはおかしいことなのです。町中に広がることもあり得ない。ならば、それは別の感染症ということです!」


「そ、それが事実なら何が原因だと…?…はっ!ま、まさか……」

「そう、鼠です!衣装箱から逃げた熱帯産の鼠が【ペスト菌】の宿主だったんです。ペスト菌は鼠の血を吸ったノミを媒介にして爆発的に増える、致死性の高い感染症。そして鼠の天敵である猫を、あなたは駆逐してしまった。十年前、猫からの傷で苦しんだネカラアクを見ていたあなただったから……」

「ああ…なんてことだ!私は…ただ猫が諸悪の根源だと信じて……」


「嘆いている暇はありません!すぐに猫の買い取りの撤回と、鼠に近寄らないことの徹底を!あとは、ノミに喰われて痒みがある人、すでに感染症の症状が出ている人を集めてください。私が【浄化】します!」


「だから、感染症は嫌いでも、猫は嫌いにならないでくださいっ!」


 これ、いちばん大事!猫は可愛い。可愛いは正義だ!


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