1 プロローグ
天保の大飢饉の最中、貧しい農村に私は産まれた。
「おぎゃーおぎゃー」
「ちっ、なんだ女じゃねえか!」
父は産まれたばかりの私を躊躇なく盥の水に沈めた。
「おぎゃーごぼごぼ……」
「あ、あんたあ~、やめとくれ!死んじまうよ~」
母は泣きながら父を止めようとしたが、産後の弱った身体では止められなかった。
「いいか?次も女だったら、またぶっ殺すからな!」
薄れる意識の中、その言葉は呪詛として私の魂に深く刻まれた…。
○○○
「はっ!!」
苦しさで飛び起き、周りを見回すとピンクのカーテンが目に入った。
ベッドの上、足下には愛猫のタマが丸くなって眠っている。
どうやら自室らしい。
「ゆ、夢か……」
夢と言っても私にとってただの夢ではない、これは本当にあったことなのだ。
私、長谷川凛花は前世の記憶を持つ転生者だ。しかも6度目の人生ってヤバくね?
それに加え、転生のだびに毎回親に殺されるという…笑えない話だ。
今回の夢は、初めての人生の記憶だ。ま、一瞬で死んだんだけど…。
「今日は高校の卒業式だよ?めでたい日なのに縁起悪いなぁ」
思わず呟いてしまったが、その時の私はこれから起こる大事件を想像もしていなかったのだ。
カーテンを開けると、庭の片隅には満開の桜が咲き誇っていた……




