神殿への道
誠二と美琴、ライナンも戸惑ったように演技をやめて起き上がる。
コンラートは、イライアスを見上げて言った。
「…教えて欲しい?君の術なんかいくらでも跳ね返せるさ。オレはあっちでいろんな術を習ったんだよ?コリンが言うには、オレって結構な力があるんだってさ。オレ達に自白の術を使うのは、最初から分かってた。だから、それを阻む術を教えてくれたのさ。それにしても、これを気取れるのは力のある術士だけって聞いてたのに、イライアスは分かったんだね。」
イライアスは、シエラが少し見ない間に何やら小生意気な風になったのに眉を寄せたが、それでも頷いた。
「自分の術に乗って、他の力が流れて行ったら分かる。ま、あの基明には分からなかったみたいだがな。ところで、今言った事は本当か?龍雅王が、弱って来ているのは本当の事だ。それを気取ってるって事は、本当にコリンはあの位置からこっちが見えてるって事だろう。」
コンラートは、シエラの見た目で言った。
「さあね。答えるつもりはない。こんな術を、廃人になるのが分かってて掛けたようなヤツに教えてやることなんてないよ。オレがこれを跳ね返せなかったら、今頃全員生ける屍だったんだよ?君に殺され掛けたのに、なんだってオレが話すなんて思うのさ。」
誠二は、ハラハラしながらそれを聞いていた。シエラは、そんな強気に言わないのに。
だが、イライアスはまだそんなに深くシエラを知らなかったからか、目の前のシエラがシエラではないとは夢にも思わないらしい。
少しむっとしたような顔をしながら、言った。
「…ちょっと会わない間に、偉そうになったじゃないか、シエラ。オレだって、従いたくて栄進王に従ってるわけじゃない。万が一の時、オレが何か出来るかもしれないと思って、こうして傍に居るんだ。栄進王のやり方には納得できない。ミマサカの民だって、こんなことになって困ってるってのに。さっさと龍雅王を出して、栄進一人を差し出して何とかなるなら、そうしたい気持ちだよ。お前達に術を掛けたのは、まだその時ではないと思って、栄進に従っていなければと思ったからだ。ミマサカの国民全員と比べたら、お前達四人の命が何だって言うんだ。お前達が余計な事をしなければ、龍雅王が行き来することもなくてこんなことにならなかったんじゃないかって、最近は思って疎ましく思ってたしな。責められる謂れはない。」
コンラート以外の、三人が下を向いた。確かに、勝手に出て行ってあちらへ向かったのはまずかったのかもしれない。だが、あのままではデクスと会う事もなく、本当に世の中で起こっていることを知らずに生きていた事になる。デクスが復活していたのだから、遅かれ早かれこうなっていたはずだ。
コンラートは、言った。
「デクスの封印が解けた時点で、どっちにしろこうなる運命だったんだよ。デクスだって力のある術士だからね。それで、君はどうしたいの?このままエイシンの犬のままで一生を終えるつもり?そのうち、戦は始まるよ。コリンは、龍雅が殺されたらこっちへ攻め入って来るっていうのは本当のことだ。君の選択は?エイシンの命令を待つ?」
イライアスは、キッとコンラートを睨んだ。だが、しばらくそうやってにらみ合っていたが、がっくりと肩を落とした。
「…お前の言う通りだ。どこまであいつに使われて従うのかってな。戦は起こしたくない。何の罪もない民ばかり多く死ぬ事になるからだ。どうせ栄進はどこかへ逃げるだろう。兵士と術士が前に出て、庇う事になるだろうしな。そんな王に、仕えても碌な事は無い。」と、コンラートを見つめた。「お前は、どうしようと思ってこっちへ戻って来たんだ。龍雅王を殺すのか?」
コンラートは、首を振った。
「違うよ。リュウガを助けるんだ。とりあえず、弱っている原因だけでも調べてそれを取り除かないと。君は何か知ってる?」
イライアスは、息をついて扉の方を見た。
「…長くここには居られない。とにかく、一旦地下牢へ行こう。地下からは、地下道があるからいつでも神殿の方へ移動できる。どうせお前には、地下牢だって意味がないんだろう?」
コンラートは、すぐに頷いた。
「牢の格子なんか一瞬で溶かせるからね。いいよ、行こう。」と、美琴、ライナン、誠二を振り返った。「じゃ、またバカのふりして。イライアスについて、地下牢へ行こう。」
バカのふりって。
そうは思ったが、確かにもう、廃人になったという事になっているから、そうしなければならないだろう。
そうして四人は、イライアスを先頭に、また呆けた顔をしたままその部屋から出て、歩いたのだった。




