彼らは現れた
不意にアイデアを思いついたので書き起こしてみました。
ちょっと狂気にやられてみた結果
これをハーレムと言い切る勇気
文字数の都合でタグに入れられなかった二つです。お察しください。
「レッド・サーモン!」
呼び鈴を鳴らされて応対に出た僕を前に赤い全身スーツを着た人が叫んでポーズをとった。
「ブルー・シャーク!」
「イエロー・キャンサー!」
左右を固める二人がこれに続き。
「ブラック・タイガー!」
「ホワイト・スクイット!」
視界の両端に居る二人もやはりポーズをとる。
「「鮮魚戦隊、シーフーダーッ!!」」
ああ、これ見たことあるやと半ば現実逃避しつつ見ていれば、全員で名乗りを上げた直後に五人の背後が爆発した。
「特撮モノかぁ、僕も小さいころよく見て……って、ちょっと待って!? ここ、うちの玄関先なんだけど?!」
爆発があった辺りには父の乗用車が停まっていたはずだし、脇にはプランターに植えられた花もあったはずなのだ。母の手入れが雑で雑草とか結構生えていた気がするけど。
「こうやって来客もあるからもうちょっとこまめに世話を……じゃねーよ! 何、おたくら?!」
「「鮮魚戦隊、シーフーダーッ!!」」
「それは解かったつーの! そうじゃねーよ! その格好自体はこう、特撮ヒーローのお宅訪問とかで説明付くかもしんないけど、玄関先で何爆発させてんの? そもそもそこ父さんのクルマがあったはずなんだけど?!」
ドッキリか、新手のドッキリなのか、とりあえず、薄れてきたカラフルな爆煙の向こうには何もなく、爆発したのがうちの自動車だったという嫌なオチだけはないことが解かったものの、それでよかったとは思えない。反射的にせざる終えなかった僕のツッコミを前にポーズをとったままの戦隊ヒーローと言うか不審者五人組の絵面はひたすらにシュールで。
「安心してほしい、充君、君の家の自動車とプランターの花は無事だ!」
「や、無事だも何も何かあったら普通に訴えていたというか、今も警察呼ぼうか考えてるとこなんですけど」
一人だけポーズを解いて近寄ってきた赤いのが腕を組んで頷きつつ言うが、僕の目は半眼に固定されて変わらない。
「そもそも、サラッと僕の名前呼びましたが、なぜ僕の名前を知ってるんです?」
家の表札は苗字だけのシンプルなものなのだ。しかもこの不審者五人組、ポーズ取って名乗りはしたものの、まだ一言たりとも要件を切り出していない。最初は小さな子向けのサプライズで特撮ヒーローの格好をした人がお宅訪問するパターンの番組か何かかとも思ったが、うちには戦隊ヒーローに夢中になるような年頃の兄弟もいないし、大きなお友達も存在しない。仮に訪問するお宅を間違えたとしても、僕の名前を知っているのが変だ。
「そう、だな……落ち着いて聞いてほしい」
きっと、いぶかしむ僕の態度ももっともだと思ったのだろう。左右の仲間を見てからこちらを向いた赤はぐっと右こぶしを胸の前で握るとぱっと開く。
「えっ」
まるで手品を見ているようだった。手の中に一本の鮮やかな赤い花が現れ、いや手品か。
「これを君に」
胸中でツッコミつつも立ち尽くす僕に赤い不審者は花を差し出し。
「好きだ、我々と付き合ってくれ!」
「お願いします」
「まずはお友達から」
なんか、告白された。
「はっ? え? え?」
なんなんだ、これは。
「つきあって、くれ?」
きっと、混乱していたのだと思う。
「めのまえ の ごにんぐみ、さんにん は どうみて も だんせい だと おもう の ですが?」
「ああ」
「そうだぜ!」
「ボ、ボクはスーツ着ててわかんないかもしれませんけど、男の娘なので、その」
思ったことがそのまま口に出てしまい、きっちり聞いていた三人が口々に答え。
「帰れーっ!」
叫んだ僕はきっと悪くないと思う。それが、その五人との最初の出会いだった。
と、言う訳で戦隊ヒーローっぽい五人組が現れていきなり告白してきたことから始まる恋愛もの、の予定です。
五人組の恋はかなうのか。
たぶん、続きます。