7話 俗物天使ラシエル様
「シリエル、行くわよ」
翌日、私はラシエルと下界に行くことになった。
少しワクワクするな、ラシエルにも焼き鳥を勧めてみようかな。
「あれ?シリエル様とラシエル様。お二人で何処へ?」
「ああ、少し用事でな。すまぬが出かけてくるぞ」
「ああ、はい。まさかお二人で出かける日が来るとは」
周りの天使たちは興味津々で私たちを見ている。
まあ、天界には話題が少ないしな。注目を浴びる事は仕方がない事だ。
今まで犬猿の仲だった私たちが一緒に行動するのはそれだけ珍しい事なんだろうと思う。
「シリエル、その格好しか無いの?」
「すまぬ、これしか無い」
「まあいいわ、ならまずは服から買いましょうね」
そういうとラシエルは翼を広げて地上に向かって行った。
私もその後を追わねば。ってラシエル、少し速度が速いぞ。ちょっと待ってくれ。
……。
よし、いつもの下界だ。
「まずは、この国の名前が日本よ」
「なるほど、ここが日本か」
「ええ、世界には色んな国があるけど、私は一番ここが好きね」
「お主、結構遊んでおったんだな」
「……遊びじゃ無くて調査よ。それより、早く行くわよ」
ラシエルは、翼を透明化した後に魔法で服装も変えて歩き始めた。
なんか、凄く慣れておるな。まあ、20年もここに来ていたのならそうなるか。
私も習って透明化の魔術をかけた後に続いた。
「ここよ、ここなら地上でも目立たない服が買えるわ、後、下界では無く地上と言いなさい」
「下界ではまずいのか?」
「ここにいる人は誰も下界という言葉を使わないわよ」
「なるほどなあ」
「じゃ、店に入るわよ」
私たちは店に入った。ふむ、色々な服が置かれているのだな。
これほど沢山の服があると、何を買えば良いのか分からんぞ。
「シリエル、貴方選べる?」
「いや、これだけの服があるとどれを選んで良いか分からない」
「なら、店員のおまかせでいいかな。すみません!」
「お客様、どうしましたか?」
「この子のコーデを選んで貰えませんか?無難な奴で」
「かしこまりました」
「シリエル、店員任せたけど良いよね?」
「ああ、ありがとう。助かるよ」
よく分からないから店員にどの服にするかを選んでもらう事にした。
何が良いのか分からない私にとっては助かる選択だ。
少し待っていると、店員が服を持って来てくれた。
「お待たせしました、こちらは如何でしょうか?」
「良いんじゃ無い?悪い選択とは思わないよ、シリエルはこれで良いかしら?」
「うむ、街でよく見かける服装だな。これにしよう、いくらだろうか?」
「あ、シリエル。今日は私が出すわ、気にしないで良いわよ」
「えっ?そんなの悪いだろう?」
「良いって、私が誘ったのだから。お会計お願いします。カードで」
「ありがとうございました!」
えっ?コヤツ、カードで払ったぞ?
一体なぜ…私も欲しいぞ!!
「なあ、ラシエル。なぜお主カードを持っているのだ?」
「ああ、私この国に戸籍あるからね」
「戸籍とは何ぞや?」
「この国に住んでも良いという許可証。免許証も持っているわよ」
「詳しくは分からないが、お主が地上に馴染んでいるという事は分かったぞ」
「まあ昔から色々あったからね、用意して貰ったのよ」
コヤツ、地上に馴染みすぎたろう。流石にコレと同列扱いはされたくないぞ…。
明らかに私とレベルが違うのは分かる。これは何かあればラシエルの指示に従うべきだな。
あ、そうだ。言い忘れていたな、大事な事を。
「ラシエル、服ありがとうな!大切にするよ!!」
「……ふふ。気にしないで、取り敢えず買ったものに着替えましょうか」
「ああ、着替えて来る。ここで良いのか?」
「ええ、試着室で着替えて良いと思う。ここで待ってるね」
私はこの部屋に入った後、買ったものを身につけた。
……目の前の鏡を見ると、確かに街の住民が身につけていた感じだ!
これなら目立たないはずだ。あ、そうだ。脱いだ服は魔術で仕舞っておこう。
「へえ、これならこの街に居ても不自然じゃ無いわね」
「似合っているか?ラシエル。私は割と気に入ったのだが」
「悪くな…似合っているよ。シリエル」
「ふふふ、そうかそうか!!これで私もこの国の住民だな!」
今の私の格好は青のズボンを履いていて、肌着は白、その上に薄茶色の羽織を着ている。
街の住民でも見かけた事がある格好だ。
この服は大事にしよう。ラシエルからの大切なプレゼントだからな。
「じゃあ、服も買ったし、帰りましょうか」
「いや、ラシエル。食べに行かないか?」
「食べに行くって何処に行くつもりなの?」
「私がこの地上に降りて、初めて食べたものだ。凄く美味くて今でも忘れられない」
「へえ、それは楽しみね、じゃ行きましょうか」
「ああ、お主に食べてほしいのだ。私の一番好きなものを」
「……えっ?」
「夢だったのだよ、ラシエルと仲直りして、昔のように遊べる事をな」
「……恥ずかしい事言わないでよ。まあ楽しみにしてるわ」
「ああ!あの焼き鳥の屋台は美味いぞ!じゃ行こうか!!」
……その後。
確かに美味しいわね、これは。
だろう!ここはよく食べに来るんだ。
それにしても、やっぱり白い翼は羨ましいわね。
なら、相談があるんだけど……。
……やってみましょうか。
◇ ◇ ◇
「ふむ、この、紅茶は美味しいな」
「でしょう?地上から仕入れたのよ」
その日、天界に激震が走った。
今までいがみあっていたラシエルとシリエルが、
テーブルを並べてティータイムを楽しんでいたからだ。
「えっ、何故シリエル様とラシエル様が」
「あんなに喧嘩していたのに一体何故!」
「でも、御二方とも並ぶとあの白い翼が綺麗でとても素晴らしいですわ」
「ああ、とても素晴らしい光景だな!」
周りの天使たちは騒然として、今日一日はその話題が絶えなかった。
「何やら周りが騒がしいですわね」
「まあ、お主と私が一緒にティータイムなんか今までした事が無かったからな」
「これからはそれも増えるだろうから何れは落ち着くかしらね、それにしても……」
ラシエルは小さくため息をついた。
「………」
「全然バレませんわね、コレ」
「そうだろう!ペンキの白は凄いんだ!!」
続きは何か思いついたら書きますが、とりあえずここで一旦区切りとさせていただきます。
シリエルとラシエルの物語を読んでくださり、ありがとうございました!




