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倶利伽羅怪談 ㇰリヵㇻ ヵィダン 〜社畜バディと奔放JKの怪異対応処理〜  作者: 路明(ロア)
【第碌話】鬼ਟੋᖾこƽʖˋ ォニサン ⊐チㇻ

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211/266

鬼रჁこƽʖˋ 三


 土屋(つちや)が、お椀を持ったままでじっとこちらを見る。


 テーブルの上には、湯気を立てている鍋。そこに突っこまれたお玉。

 見えないのをいいことに変なものを食わされたわけじゃないんだなと、あらためてありがたく思う。


「見える。なんかいきなりだいじょうぶ」


 涼一(りょういち)は指先で目元を軽くおさえた。

 自分で食べようと、土屋に(はし)よこせとジェスチャーする。

「この紫龍の見えぬ目には見える的なやつじゃなく?」

「……おまえの観てるアニメとか知らんから」

 箸とお椀よこせと再度ジェスチャーする。

 土屋がふたつとも手渡してきた。


「さっきいきなり見えるようになったときと、何か共通点あるかな」


 土屋が宙を見上げる。

「さあ。思いつかねえけど」

 涼一は答えた。

 お玉を手にとりお椀につゆをいれつつ、土屋にも「食べれば?」というふうに目で示す。

「あーそか。鏡谷(かがみや)くん見えてるうちに食っといたほうがいいか」

「ひとまずそれだろ」

 涼一はそう返した。

 他人ごとみたいに言って申し訳ないが、いま土屋にアドバイスできることといったらこれくらいしかない。

 

「つか、肉、肉」


 涼一は鍋を箸で指してせかした。

「あ、そだ、肉」

 土屋が立ち上がり、台所のほうに行く。

 しばらくして豚肉と鶏肉のパックを持ってきた。

「いっしょにすると風味ごっちゃになんね?」

「そういうもん?」

 土屋が二つのパックを見くらべる。

「知らんけど」

 涼一は答えた。


「肉ごっちゃにして味を楽しみたいのかと思ってた」

「おま、闇鍋(やみなべ)みたいな言いかたすんな」


 涼一は眉をひそめた。

「むかし怪奇スペシャルとかで見たことあるんだけどさ、ある大学サークルで闇鍋やって」

「いらねえって。何で怪異に遭ってる真っ最中に他人の怪奇体験聞かなきゃなんねえの」

 涼一は豚肉のパックをうけとりビニールを外した。

 赤身の肉がきれいにならんでいる。

 一枚つまんで鍋に入れた。

「あ、切ったほうがよかった?」

 箸でつまんだ豚肉を、鍋の中で洗うようにゆらゆらゆらす。

「鏡谷くん、それしゃぶしゃぶ」

 土屋がツッコむ。


「いま思ったけど、どう違う」

「……いわれてみれば」


 土屋が複雑な表情でそう返した。

「ちゃんと熱通しゃ、まあいいか」

 言いながら土屋が鶏肉のパックを持ってふたたび台所のほうに行く。

「これあした、からあげにする?」

 土屋が問う。

「するする。したいからからあげのもと買ってきた」

「会計のときに入れたっけ? と思ったけどやっぱ鏡谷くんか」

 冷蔵庫を開け閉めする音がする。

 鶏肉を入れたのだろう。

 揚げてる最中にまた目が見えなくなったら大ごとなので、からあげも土屋に作らせることになるんだろうが。


 台所から戻った土屋がテーブルに着き、箸を持つ。豚肉を一枚つまんだ。


「鏡谷くんのせいで正しい鍋が分かんなくなってきた」

 言いながら、涼一と同じように豚肉を鍋のつゆで洗うようにゆらす。

「ミディアムレア好きだったらしゃぶしゃぶやって、ウェルダン好きならグツグツ煮こんだらよくね?」

 涼一はぎりぎりウェルダンになりかけの豚肉を口にした。

「豚肉のミディアムレアってだいじょぶ?」

 土屋が鍋のつゆから肉を引き上げる。

 口にした。

「うま」

「ていうか、おまえそれ一口めじゃん。しゃべってねえでガツガツ食えば?」

 涼一はテーブルのはしに置かれたままの(から)のお椀を手にした。

 お椀で鍋のつゆを入れて土屋に手渡す。


「ども」

「おう」


 あらためて箸を持つ。

 「あぶくたった煮えたった」という遊び歌をなぜか思いだした。




 

 二人で鍋をたいらげて、ひと息つく。


 さいわい食べているあいだ、ふたたび見えなくなることはなかった。

「見えてるうちと思ってガツガツいったから、満腹感すげえー」

 涼一は後ろ手に手をついて天井をあおいだ。

「俺も。営業回り詰まってるときより急いで食べたかも」

 土屋が、ふうと息をつく。

 

「怪異に対応すんのってサバイバルなのな」

「まあ命がけのときあるね、たしかに」


 土屋がそう答えて、同じように後ろ手にたたみに手をつく。

「ひとやすみしてる場合じゃない。鏡谷くん、見えるうちお風呂すませて」

 土屋が指示する。

「そか」

 それもそうだ。ふぅ、ともういちど息をつく。

「過酷だな」

「いやもうちょっと食休みしてからでもいいけどさ。鏡谷くんのあそこまで洗うの何だからさ」

「なにそこの話題いきなりふってんの、おまえ」

 涼一は顔をしかめた。

「現実に考えたらそれじゃん」

「いやそこは手さぐりでも自分で洗う」

「あ、そか」

 土屋があぐらをかきながら返す。

「……できるか」

 そうつぶやく。


「んじゃ、そこはそういうことで」

「おう」


 涼一はそう答えた。

 風呂場のほうから、湯沸かし完了の音楽が聞こえてくる。

「ちょっと食休みしたら入ってくる」

 涼一は、もういちど天井を見上げた。

「タオルとバスタオルそこ。あと入浴中にいきなり見えなくなったら呼んで」

 土屋がクローゼットを指さした。





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