81、四股(しこ)②
「何だよ。その迫力の無え四股は。四股ってのは、大地の邪悪な霊を踏み鎮め、豊作を約束させるっていう宗教的儀式でもあるんだよ。お前みてえなガリガリ女の四股じゃあ、大地の邪悪な霊に舐められちまうんだよ。よしっ、今から見本を見してやるからよく見とけ! 大虎!」
大虎と呼ばれた男が、リーダーの背後の列から現れると、一岡と、私と対峙している二十人の男達との間ぐらいで立ち止まった。
「大虎は、身長百九十センチ、体重百五十キロの元、相撲取りだ。十両までいった本物の力士だ。その四股を拝ませてやるから、よーく見とけ!」
しばらくするとその大男は、皆の視線を一身に浴びる中、四股を始めた。片足に体重移動し、もう片方の足を高々と上げ、静止するところまで私を同じだったが、上げた足を振り下ろし、コンクリートの床を踏みしめた時、離れた位置の私からでも、ズシンという衝撃が伝わった。四度四股を踏み、その度に重量感のある衝撃が起こる。さすが元・相撲取りだ。
「分かったか? こう言う大地を踏み鳴らすぐらいの迫力がないと、本物の四股とは呼ばねえんだよ。このガリガリ女が!」
「……なるほど」
身長百六十五センチ、体重四十キロ台、同世代の女の子から羨ましがられるモデル体型のこのプロポーションを、そこまで否定される謂れはないが、こと四股に関してはこのドチンピラの言い分も分からないではなかった。私は再び四股をはじめる。今度は白龍の力を体内に受け入れながら(普段の生活では白龍の力を借りない事も多い。だって学校の体育の授業で百パーセント借りたら、世界記録を大幅に更新しちゃうでしょ? だから五段階評価の四ぐらいになるようにセーブしている。私は日本女性の美徳とされている、奥ゆかしさを兼ね備えた美少女なのだ)。白龍の全長は十五メートルは優に越す。体型は違うが、最強の恐竜と言われるティラノサウルスで全長十三メートル、推定体重は六トンだからその巨大さが分かると言うものだ。白龍は世界最強なのだ。そのエネルギーを満たしながら四股を踏む。一岡にバカにされた体重四十キロ台の四股は、すぐに体重百五十キロの元・相撲取りと同じぐらいの衝撃を床に与えはじめる。そして体重数百キロ台、五百キロ台、七百キロ台と、私の両足は踏みしめる度に床のほこりを舞い上げ、砂をはね上げはじめ、ついに千キロを越しトンの領域に突入し、床に叩きつけた両足がコンクリートの中に数センチ沈んだところで四股を終えた。普通の人間がこんな力を体内に加えられたら耐えられず、足の骨が砕かれ、折れ、皮膚を突き破って無惨な姿を晒すだろう。しかし白龍とつながっている全身を覆う透明な膜は、その衝撃を吸収して、私の肉体に何の負担もかけることは無かった。五十人はいる半グレたちは、床にのめり込むほどの四股の衝撃を全身に受け、言葉を失っているし、ソファにふんぞり返っていたリーダーから、私を舐めきっていた態度は消え失せた。前のめりになって眼光鋭く睨みつける。




