76、出席停止⑤
「いつから私がリーダーなのよ」
と肩をすくめると、
「誰がどう見ても、リカコちゃんがリーダーだよ」
と背中を叩かれた。歩きながら、
「私、生徒会長と今まで一言も喋ったことないわ」
「リカコちゃんは人気者だから」
「なんなのよ、それ」
二人で笑っていると、
「姫〜」
と呼びかける男の声あり。顔を向けると派手なアメ車に乗った男が、徐行運転しながら私に声をかけていた。私の非公認ファンクラブの、三人いる自称会長の一人、前田だ。三大暴走族『総爆』の相談役でもある。
「乗っていきません? お家までお送りしますヨ」
「いいよ、別に」
「つれないなあ」
車二台がなんとか通れる幅の通学路。私たちの歩く速度に合わせて、ノロノロ運転のアメ車が横についてくる。主要道路から外れているので、車はめったに通らない。そのはずなのに十字路に差し掛かって異変に気づいた。前方から車が一台停止をして前を塞いだ。右側からきた車も、左側からきた車も、振り返って後方の車も、それぞれ一台ずつ停止をして道を塞いだのだ。十字路の中心部に、アメ車に乗った相談役一人と、可憐な女子中学生二人が四台の車に挟まれて身動きが出来ない。前田がアメ車から飛び出すと、
「何やってんだ、クソ野郎共、顔を見せやがれ!」
と怒号を四方に浴びせる。数秒間、何の反応もなかったが、はかったかのようにほぼ同時に、四台のフォードアセダンのドアが開くと、運転席と助手席から一人ずつ、合計八人のゴツイ男達が姿を現した。一見して、喧嘩上等の世界で生きてきた者特有の迫力があった。背後の鬼オーラも強そうだ。
「お前ら、『廃墟ホテルの主』の人間じゃねえか、なんの用だよ!」
八人の手の甲には、『蛇崩』のメンバーであることを意味している鏖の一文字が彫られていた。前田の質問には答えず、二メートル近い金髪の大男が一人で近づいてくると、隣にいた鈴ちゃんを抱きかかえて、あっという間に走り去った。私から十メートルは離れた場所で立ち止まると、立たせた鈴ちゃんの背後に回り、右腕を後ろから捩じ上げて、身動き出来なくしている。鈴ちゃんを捕まえている金髪の大男の隣に、坊主頭の黒Tシャツの男がいて、タトゥーだらけの腕の先には、業務用のゴツイカッターナイフを掴んでいて、その刃を鈴ちゃんの頬に当てている。




