61、介護する不良②
翌日の昼休みには、藤堂も含めた男子五人が、昼休みの私のクラスに現れた。全員不良グループに属している三年生で、背後のミイラは、全員が小学四年生以下だった。
「そっちの言い分ももっともだと思う。でも、とりあえずコレやってみて」
私は用意していたものを五人それぞれに渡した。
「何だコレ?」
「運転免許の学科教本」
「運転免許?」
「アンタ達、十八才になったら車の免許取りに行くんでしょ?」
「そりゃあ速攻で行くぜ」
藤堂が答えると他の四人も笑って頷いている。だと思った。車ギライの不良なんて聞いたこともないからだ。
「じゃあ、とりあえずその学科教本を勉強してきてよ。合格できるだけの点数取れるんなら、プリント学習しなくていいから」
こうして運転免許の勉強をしてもらうことになり、一週間ほどたった時、学科試験の問題を解いてもらった。昼休みに私のクラスに来てもらい、適当に空いている席に坐ってもらって、三十分の間に五十問の問題を解く。解き終わった回答用紙を受け取ると、私が赤ペンで答え合わせをして、一問二点の配分で点数をつけて渡した。五人それぞれが自分の答案用紙を眺めている。
「コレ九十点以上取らないと合格じゃないのよ」
五人の名誉のため点数の公表は控えさせてもらうが、九十点にはほど遠い低い点数で、五人全員凍りついている。それがどういうことだか理解したからだ。
「そう、アンタ達全員が今、想像したことが十八才になったら現実になる。つまり、その時の不良仲間が次々と車の免許を取得して、嬉しそうに自分の車を乗り回して自慢している時、アンタ達は免許すら取得できないってこと」
黙り込む五人は、大げさでなく絶望という暗黒の中にいるかのようだった。面子を重んじる不良少年が、自分一人だけ車に乗れない未来を見つめているのだ。それが仲間内でどんなに恥ずかしく笑われることなのか、五人のうちの二人までも答案用紙を持っている指先が震えていることでも分かる。
「……ウソだ」
「ウソじゃないよ」
「そんなの認めねえ」
よっぽど悔しいのだろう。藤堂が答案用紙を睨みつけている。
「車の免許をとるのに学歴は必要ない。だから中卒でも取得できる。ただそのためにはこの学科試験で九十点以上取らないといけない。取れない限り、車の免許は一生取得できない」
私の言った言葉で五人とも静まり返っている。可哀想になったので次の言葉を付け足した。
「でもプリント学習をすれば、五人とも免許は取れる」




