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21、ヒロイン、覚醒②

「てめえ!」

犬塚がやられたことでより逆上した二番手の牛島が掴みかかってくるが、ファイティングポーズのまま右によけ、すかさず左上段回し蹴りを牛島の顔面に叩き込むと、気を失ってその場に倒れ込んだ。……何だこれは? 私の身に何が起こっているのだ? 鍛えていない拳や脛は、攻撃した時の衝撃に耐えられず痛くなるはずなのに、全然痛くない。何より格闘家、軍人ばりの戦闘能力を手にしている私。

驚いて両手を見ると、透明な膜に覆われている。よく見ると両手だけでなく全身を極薄の膜が覆(おお)っていて、それが白龍とへその緒(お)のようなもので繋がっている。この膜が皮膚を守っているから痛くないのだ。この膜から力をもらっているから私は強いのだ。私に強さを授けてくれた白龍に目をやると、あの赤い目がこちらを見て笑っていた。

「牧野てめえ! ふざけんじゃねえぞお!!」

 目を見開いて大股で歩いてきた猫藤は激怒している。子分二人が目の前で倒されて復讐心に燃え盛(さか)っていた。怒りに身をまかせて殴りかかってくるパンチを、なんて遅い攻撃で、まるでスローモーションだと思いながら、軽くよけていく私。時折繰り出してくるキックも空振りにさせながら、猫藤を背後に橋脚のある位置まで誘導した。左前蹴りを猫藤の腹部にめり込ませて動きを止めると、右アッパーがアゴをとらえて背後まで吹っ飛ばした。橋脚に猫藤の両腕を押さえつけながら、左膝蹴りをみぞおちに何発も喰らわす。手を離すとひざまずいたままゲエと吐き出した。消化しきれていないインスタントラーメンを何度か吐いた猫藤は、立ち上がることも出来ない。バトルが終了した高架下で、不良娘三人が倒れている。鈴ちゃんは驚いて立ち尽くしていた。しばらくすると、先に倒された子分の二人がふらつきながらも立ち上がる。そしてダメージが一番残っている猫藤を二人で抱きかかえると、私を睨みつけた。

「牧野! 一度勝ったぐらいで調子に乗んなよ!」

「明日会ったら地獄見せてやんからな!」

 そう捨て台詞(ぜりふ)を残して去っていく。私はその後ろ姿に、あっかんべーをしていた。不良らが立ち去った後、途方もない力が体中から漲(みなぎ)っている私は三、四秒軽く走ってみた。風のような速さで走り、立ち止まった私が振り返ると驚いた。元いた位置から五十メートルは離れている。神がかり的な速さだ。楽しくなってきた私は、元いた場所に向かって五十メートルを軽く走る。鈴ちゃんのそばの橋脚まで走ると、勢いそのままコンクリートの壁に向かってジャンプして左足を乗せ、次に右足で壁を蹴り上げると、その反動で後方宙返り三回転を決めて着地した。

「キャ~~~~♡!!」

 両手を握りしめて思わず叫んだ。鈴ちゃんに近寄り、両肩を掴む。

「見た鈴ちゃん? 私、無敵じゃん! 凄いよ、この力!!」

 私は白龍を見つめる。白龍はしばらく私と目が合うが、何の反応もなく宙を泳いでいる。鈴ちゃんは私の視線の先を追うが、オーラが見えないので、白龍のいない高架下の光景しか目には映らない。私の運動能力の高さに、目を丸くしている鈴ちゃんに言った。

「明日一緒に学校に行こうよ鈴ちゃん。不良共から、指一本鈴ちゃんに触れさせないで守るから。それだけじゃない、アイツら全員ぶちのめしてやるよ。不登校で苦しんでいる生活からおさらばしようよ。鈴ちゃん、どう、明日来る?」

 私の熱意に押される形で、鈴ちゃんは小さく頷いた。


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